2 ケータイサイト制作をスマートに進めるために - 今“ 知っておくべき”ケータイサイト制作事情 第1回 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

2 ケータイサイト制作をスマートに進めるために - 今“ 知っておくべき”ケータイサイト制作事情 第1回

2024.4.29 MON

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今“ 知っておくべき”ケータイサイト制作事情

第1回

2 ケータイサイト制作をスマートに進めるために

専門知識を必要としないケータイサイト制作が始まっている

ケータイサイト制作には、PC向けWebサイトの制作にはないさまざまな配慮が必要になる【1】。もとをたどれば、小さな端末に機能を盛り込むための規格への対応やユーザーの利便性向上のためのケアなのだが、PC向けのWeb制作やサイト運用の現場感覚からすれば、めんどう以外のなにものでもない。それが嫌でケータイサイト制作を敬遠するWebクリエイターを著者は知っている。かけるコストと工数を抑えながら、これら「ケータイ専用の配慮」をどうやってクリアするかは開発・運用のひとつの焦点だ。

ひとつの回答がFlashによるWeb制作だ。事実、FlashはWebクリエイターとケータイサイト制作を結ぶ大きな懸け橋になっている。トップページのFlash制作からケータイサイト制作に参入したというWebクリエイターは多いのではないだろうか。ページデザインの自由度の高さに加え、キャリアの仕様違いを気にせずUI設計ができ、稼働後の動作確認工数を減らせるなど多くのメリットがある。最近筆者は一見HTMLページ風に見えるが、実はフルFlashというトリッキーなサイトに遭遇した。ユーザーにはなじみやすい(いかにもケータイ的な)UIを提供しながら、制作サイドの手間を軽減する一種のハックなのだろう。Flashの活用はまだまだ可能性があると感じる。

図1
【1】ケータイサイト制作に必要な「配慮」


制作の手間とコストを劇的に下げるASPツール

しかし、一方ですべてのページをFlashで構築するわけにいかないのもまた事実だ。ケータイサイトは情報の鮮度と更新頻度が命。一般的なFlashページではコンテンツ更新に手間がかかってしまう。そこでもう一つの回答が登場する。ケータイサイト制作専用のASPの活用だ【2】。ケータイサイトページ制作用のもの、特定のコンテンツ提供機能をサイトに追加するもの、Flashのコンテンツ更新を自動化するもの、さまざまな機能がセットになったものなど、多数のサービスが、さまざまな企業からリリースされている。多くはSaaS型のサービスとなっており、サイトを通じて申し込み、月ぎめの料金を支払い(従量課金の場合もある)、PC向けWebブラウザを通じて利用するというスタイルだ。SaaS(Software as a Service)型のサービスが多いのは、次々と発売される携帯端末に柔軟に対応するためだ。

これらASP型ツールを使えば、ケータイサイト制作の知識なしで簡単にキャリア横断のケータイサイトをはじめられる。キャリアの仕様の差を埋める仕事はシステムが自動的に対応してくれるため、制作者は本来のクリエイティブな仕事だけすればよい。かなり凝ったデザインのページをつくることのできるASPも出てきた。アンケート収集や動画配信など、開発するとなれば途方もないコストと時間のかかる機能を、さっと実装できるという機動性も見逃せない。さらに、ケータイサイト制作専用ASPは現在サービス間の顧客争奪競争が激しく、安くて高機能なサービスが次と登場している。複数のASPを組み合わせて利用すれば、高機能ケータイサイトを驚くほどの安さで構築できる。

もちろんASPならではといった制約もある。SaaS型サービスは独自URLでの運用が難しい(サブドメイン対応になる)し、カスタマイズや仕様変更は基本的に受け付けてもらえない。しかしトータルで考えると、ASPを活用することで広がる大きな可能性とコストダウンのメリットははかり知れない。ツールの進化が続くしばらくの間、ASPの情報収集はケータイサイト制作に携わるクリエイターにとって重要な仕事になるだろう。

図2
【2】ケータイサイト制作の判断チャート


ASP活用を前提にした新しいサイト構築検討方法

ASPを活用したケータイサイト制作はコストを劇的に低下させる一方で、ASPの機能の限界が企画の限界をつくってしまうことがある。「せっかくクライアントと盛り上がった企画ができたのに、想定していたASPではどうしても実現できないことがわかった」というようなケースだ。そのようなときには、「(1)ASPを深堀りして探す」、「(2)一部だけを独自開発する」、「(3)企画の内容を変える」という3通りの対応策がある。いずれの場合でも予算と想定される効果を検討しなくてはならないが、ASPを複数組み合わせたり、一部の機能だけを独自開発することで解決できれば満足度とコストパフォーマンスを両立できる。企画変更は最後の手段ではあるが、逆に利用できるツールの機能をベースに企画を考え直すという手もある。こういうケースで代替策をすぐに提案できるためにも、ツールの情報には敏感になっておきたい。


効果的なケータイサイトを構築するプロセス

今回、話をしてきたことを整理すると【3】のチャートになる。ケータイに求める目的がケータイでのコミュニケーションの得意分野なのかを検討して、適正な目的設定をすることで期待値は確実にアップする。また、調整が必要になることもあるが、ASPを活用することによって制作コストは確実に下がる。このふたつの効用によってケータイWebプロジェクトの確実性はアップするはずだ。サイト運用しながらPDCAサイクルを回し、つねにリノベーションしてゆくのはPC用のWebサイトと同じだ。しかし、先にある程度コストに余裕を持つことができれば、次善策も打ちやすい。結果的にASPを使ったサイトを放棄してフルスクラッチでサイト開発しようという結論に至ったとしても、無駄を最小限にとどめられる。

図3
【3】ケータイサイト制作を支援するASPにはこれだけの種類のものがある。ケータイ企画や構築したいケータイサイトに応じて、その特質や利便性も異なる


活用が期待されるケータイWebというステージ

高機能で低価格のASPの登場はWeb制作者たちの可能性を拡げただけでなく、一気に素人にまでサイト制作の可能性を与えた。もう「キャリア共通のケータイサイトをつくれます」というだけでは大したビジネスにならないだろう。企業担当者が直接サイトを立ち上げ、運用することもできるからだ。しかし、PCでWebサイト制作が一般化したあとのように、ここからがクリエイターたちの腕の見せどころではないかと思う。Webを通じてユーザーとコミュニケーションし、ユーザーになにかしら強烈な影響を与えることがWebクリエイターのコアだとするならば、ほぼ国民全員がアクセス可能で24時間365日、30cm以内にあるケータイサイトは、可能性に満ち満ちたプラットフォームだ。しかも企業がこの新しいコミュニケーションツールに真剣に取り組みはじめ、より影響力のある活用方法を模索している。Web制作の技術的な制約がほぼ無視できるようになった今だからこそ、単にケータイ上にWebページをつくる以上の「何か」が期待されてるように感じる。

道具はそろった。で、どのようなおもしろいことができるか? 企業だけでなく、ユーザーも心待ちにしている。もちろん、筆者もその中のひとりだ。


Column ケータイWebの最新情報はどこで手に入れる?
ケータイサイト制作に役立つ情報は実はWebサイトで見つけにくい。ケータイ開発に携わる技術者やデザイナーの絶対数がそれほど多くないからとも、情報をオープンにしてディスカッションする習慣のない業界だからとも言われているが、本当の理由は筆者もよくわからない。しかし、少しずつではあるが増えていることは確かだ。以下に筆者がふだんよく参考にしている情報サイトを紹介しておく。また、最近はTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを通じてもおもしろい情報が手に入る。

モバイルデザインアーカイブ

モバイルデザインアーカイブ
mobiledesignarchive.jp/
すぐれたデザインの企業ケータイサイトが一覧できるサイト。アイデアに詰まったときにも利用できそうだ


ASP・SaaS ナビ
www.asp-navi.jp/
ASPやSaaSの情報が集まったサイト。ケータイサイト制作の情報は「携帯サービス」というカテゴリから検索可能


ke-tai.org
ke-tai.org/
デザインというよりはケータイサイト制作の技術的な情報が整理されているサイト



[INDEX]
>>>  1 ケータイサイト制作の効率化は「同意」がカギ
>>>  2 サイト制作効率化に欠かせない「ツール選び」


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