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デザイン・クリエイティブ目線で語るソーシャルアプリ制作の裏側 第1回「大召喚!!マジゲート」(1/2)

2024.4.20 SAT

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デザイン・クリエイティブ目線で語る

ソーシャルアプリ制作の裏側

第1回 株式会社gloops「大召喚!!マジゲート」(1/2)


テレビCMの「マジゲーやったらマジ友だ!」も記憶に新しい「大召喚!!マジゲート」は、制作期間わずか約2カ月で2012年2月にリリースされたカードバトルゲーム。このソーシャルゲームの制作の裏側では、どのような企画が立てられ、デザインの苦労はどこにあったのだろうか。株式会社gloops(以下、グループス)のコンテンツ運営部リーディングプランナーの金子翔氏とデザイン制作部シニアアートディレクターの岸田拓氏に話をうかがった。

大召喚!!マジゲート 「大召喚!!マジゲート」とは

「mobage」で2012年2月17日からサービスを開始しているカードバトルゲーム。モンスターを「召喚」して「封印」することでカード化し、集めたモンスターをデッキで編成することで、さまざまなスキルを発揮してバトルさせることができる。デッキには13枚のカードを置くことができ、組み合わせ次第で強化することが可能。プレイヤーはいろいろなエリアでモンスターを召喚したり、バトルでカードを手に入れたりして、強いカードを入手し、デッキを強化していく。
URL http://sp.pf.mbga.jp/12008923


 Interview 1/2 

トランプのように13のポジションをつくり
デッキ作成とカード集めのおもしろさを引き出す


Webサイトのデザインなどからクールな会社と思われがちだが、社内はユニークかつ熱い思いをもったクリエイターが集まっているグループス
Webサイトのデザインなどからクールな会社と思われがちだが、社内はユニークかつ熱い思いをもったクリエイターが集まっているグループス
ソーシャルアプリの中でも高い人気を持つカードバトルゲーム。新たなカードバトルゲームとして「mobage」に登場した「大召喚!!マジゲート」(以下、マジゲート)は、デッキ作成のおもしろさが魅力のひとつとなっている。マジゲートでディレクターを務めている金子氏は、企画が生まれたきっかけを「大熱狂!!プロ野球カード(以下、プロ野球カード)というゲームがヒットして、ヒットの分析を行った結果」と話す。強いチームをつくるために、自分の好きな選手や有名な選手、求めるスキルをもった選手を集めたいという気持ちが生まれ、ゲームをおもしろくしたのではないかと分析した金子氏は、「同じ仕組みで王道のファンタジーゲームを作ったらどうなるのか」とアイデアを構築していった。

プロ野球カードでは17枚のカードをデッキで編成していく複雑なゲームだったが、野球という認知度の高いスポーツを題材にしているため、ポジションの概念やゲームの世界観にユーザーがすんなり入れたという背景があった。通常、カードバトルゲームのデッキは5枚程度のカードを使うが、それではありきたりな前衛や後衛といったポジションしか編成できない。より多くのポジションをデッキに編成できれば、プロ野球カードのようにゲームのおもしろみを高められると考えた金子氏。そのうえで、ユーザーが理解しやすいシステムを考えたときに出たアイデアが「トランプ」だった。「トランプには、AからKまで13枚のカードがあり、複数の種類があります。この概念を使えば、ユーザーにも理解しやすいのではないかと考えました」


ユーザーの声をつねに聞きながら
よりよいゲームづくりに生かす


岸田 拓氏
株式会社gloops
ソーシャルゲーム事業本部 デザイン制作部
デザイン推進グループ
シニアアートディレクター
岸田 拓氏

グループスでは、新たなプロジェクトの企画は部署を問わず提案が受け付けられるという。同様にプロジェクトメンバーも、社内でデザイナーやプログラマー、プランナーなどが公募され、立候補した人のプレゼンを見て人選が行われる。シニアアートディレクターの岸田氏が「完全に実力本位で選んでいるため、入社してすぐに大きなプロジェクトを任される場合もあります」と話すように、最初からテレビCMなどのプロモーションを仕掛けて、年齢層を広く設定して多くのユーザーを集め、幅広い年齢層の方々が楽しめるように計画されたマジゲートのようなプロジェクトに参加できれば、クリエイターのスキルアップにもつながる。

しかし、マジゲートは2011年末にプロジェクトを立ち上げ、約2カ月の短期間で制作が行われている。「スマートフォンが登場し、新機種や新機能がどんどん出てくる中では、なにもしなければ短期間でコンテンツが古くなってしまいます。開発に数カ月かけてしまうと、リリースする頃にはアプリが古くなってしまうことにもなりかねません。他社も含めてアプリの開発は2~3カ月が一般的で、非常に短いですね。頭をフルに使うことになるのですが、短期間でBtoCのデザイン経験とスキルを驚くほど積むことができます。たった数カ月で数年いる雰囲気になる人もいますよ」(岸田氏)

マジゲートはリリース後も更新が頻繁に行われ、つねに新たな機能が追加されている。「更新が多すぎて、ユーザーからエンジニアが倒れるんじゃないかと心配されたこともあります」と笑う金子氏は、昼夜を問わず現在でも数時間おきに更新を行う理由を「ソーシャルゲームはリリースしてからが本当の勝負」と話す。「どんなにキレイでかっこいいゲームをつくっても、更新が遅ければユーザーは離れていきます。ユーザーの声を拾い上げて、よいところは伸ばし、悪いところは修正しなければなりません」


マジゲートの操作画面。ユーザーの要望に合わせて更新が頻繁に行われている
マジゲートの操作画面。ユーザーの要望に合わせて更新が頻繁に行われている(クリックで拡大)
13枚のカードを使うデッキを使うことで、ゲームのおもしろさがさらに引き出されている
13枚のカードを使うデッキを使うことで、ゲームのおもしろさがさらに引き出されている(クリックで拡大)

グループスでは、毎日数百から数千届くメールにすべて目を通すために専門の部署を立ち上げている。また、ソーシャルメディア上などの反応も随時見ており、日々の改善に役立てているという。「機能追加や改善はすべて現場の判断で行われ、上に稟議を通す必要はありません。ユーザーの声を聞いてすぐに動ける瞬発力がなければ、ソーシャルアプリ業界では取り残されていきます」(金子氏)

Webサイトのデザインなどからクールな会社と思われがちだが、社内はユニークかつ熱い思いをもったクリエイターが集まっているグループス
株式会社gloops
ソーシャルゲーム事業本部 コンテンツ運営部
コンテンツ運営グループ
リーディングプランナー
金子 翔氏






また、「おもしろい企画を一生懸命考えていると開発側のエゴになり、内輪だけの盛り上がりになってユーザー目線を忘れてしまい、リリースして反応が悪いということになりかねない」ということも金子氏は明かしてくれた。「たとえば、アイテムを購入することに対しても、その価値は人によって異なります。いろんなユーザーのことを考えながらつくっていくことを心がけていますね」

マジゲートでは、月間で31億PVが集まっているという。ヒットしたプロ野球カードは最高で72億PVが出たこともあったと話す金子氏は、「PVは増やすことを考えるよりも、減らすことのほうが重要だと考えている」と力説する。「偏移を複雑にすれば、すぐにPV数は増えます。たとえば、トレードでほしいものを検索したときに検索精度を下げれば、何度も検索してPV数は上がることになります。しかし、それでは意味がないし、ユーザーのためにはならないし、ゲームをおもしろくすることにはつながりません」

(取材・文・撮影:野本幹彦)

>>> 後編に続く


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