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デザイン・クリエイティブ目線で語るソーシャルアプリ制作の裏側 第2回「天空のクリスタリア」(2/2)

2024.4.19 FRI

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デザイン・クリエイティブ目線で語る

ソーシャルアプリ制作の裏側

第2回 株式会社サイバーエージェント「天空のクリスタリア」(2/2)


 Interview 2/2 

ストーリー性や世界観にこだわり
イラストにこだわってクォリティを高める


神谷 尚志氏
「ストーリー性や世界観を大事にして、王道ファンタジーを楽しめるクオリティの高いゲームを目指しています」(神谷氏)

スマートフォン専用のブラウザベースのゲームを制作するにあたって、デザイン面で注意したことを神谷氏にうかがうと、「スマートフォンに適したデザインとなることを重視しましたが、アプリではなくブラウザベースのゲームでつねに通信が発生するため、グラフィックが重くならないことも注意しています」と答えてくれた。また、「フィーチャーフォンからの移行ユーザーが多いことが予想されたため、ボタンをグラフィック重視で制作するとユーザーがとまどうのではないか、ということも考えましたね。要所要所でグラフィックを使ったり、テキストリンクを残したりと、バランスを取りながらデザインしていきました」とUIへのこだわりも説明する神谷氏。「グラフィックのボタンでも、そのボタンが使えるか使えないかが視覚的にハッキリとわかるように色を変えるようにしています。また、スマートフォンの操作は、人によって右手、左手、両手とさまざまですが、今回は右手で操作することを想定して右側にボタンを集中させるなどの設計をしています」(神谷氏)

また、当初は20代後半から30代の男性を想定していたため、「これまで関わったゲームでは可愛いグラフィックを選んでいましたが、今回は男性に受けるようなグラフィックになるように気をつけています」と話す鈴木氏だが、男性向けとはいえ、もともと女性ユーザーの多いAmebaでは、グラフィックにもこだわって選ぶ必要があったと、神谷氏は次のように説明する。「Amebaに多い女性会員も考慮して、世界観をしっかりと打ち出しながらも女性に敬遠されるアニメっぽいものは避けて、昔の王道ファンタジーを意識してキャラクターづくりをしていきました。たとえば、肌の露出が多いキャラクターもいたずらに下品な印象にならないように全体的なバランスにも気をつけていますね」

イラストは社外で制作をしているが、その品質にもかなりこだわりをもっているという。「ストーリー性や世界観を大事にしているカードゲームはまだ少ないと感じていたので、それを担保するカードのキャラクターや背景のイラストにはこだわりましたね。ストーリーも世界観もイラストもすべてのクオリティを高めなければならないため制作は厳しくなりますが、1回で飽きて遊ばなくなるようなゲームではなく、ファイナルファンタジーやドラゴンクエストなどの王道のファンタジーゲームに匹敵するようなクオリティ目指しています」(神谷氏)

実際リリース時には約100点のイラストを集め、20~30点を没にしたという。「他のカードゲームに比べるとリリース時のカード数は少ない」とう神谷氏は、そのぶんクオリティを高めることを優先していることを明かしてくれた。「現在では、毎月約20点ずつカードを増やしており、イベントなどに合わせても増やしていく予定です」と神谷氏は話す。


世界観を演出するために、イラストのクオリティを高めることも必要だと考えられている 世界観を演出するために、イラストのクオリティを高めることも必要だと考えられている 世界観を演出するために、イラストのクオリティを高めることも必要だと考えられている 世界観を演出するために、イラストのクオリティを高めることも必要だと考えられている 世界観を演出するために、イラストのクオリティを高めることも必要だと考えられている
世界観を演出するために、イラストのクオリティを高めることも必要だと考えられている(クリックで拡大)


スキルアップの場を無料で提供し
学べるチャンスを与えていく


社内の4名のデザインスタッフがそれぞれの得意な分野でビジュアルをつくり、総合的なコントロールを行っているという神谷氏。では、「天空のクリスタリア」ではどのようなデザイナー・人材を求めているのだろうか。「今回はスマートフォンでの初めての本格的なゲームづくりだったので、もともとゲームが好きで詳しい人やゼロからのプロジェクトの立ち上げ経験がある人を中心にチームを組みました。また、新しい挑戦が必要な場面も多いので、チャレンジ意欲の高い人やコミュニケーション能力の高い人に参加してもらっています」(神谷氏)

「天空のクリスタリア」では、HTML、CSS、JavaScript、FTL(FreeMarker Template Language)が使われているが、「FTLはそれほどハードルの高いものではなく、HTMLがわかれば理解できるはずです」と神谷氏は説明する。また、「JavaScriptは書けなくても、CSSアニメーションが得意というのであればそれに合わせた仕事ができると思います。CSSアニメーションは比較的容量が軽いので、スマートフォン向けのコンテンツとしてこれからも実用性が高く、需要の高いスキルとなるでしょうね」とも話してくれた。

エンジニアアカデミーとクリエイティブアカデミーは、無料でさまざまな学習が行え、スキルアップできるほか、サイバーエージェントへの門戸も開かれる
エンジニアアカデミーとクリエイティブアカデミーは、無料でさまざまな学習が行え、スキルアップできるほか、サイバーエージェントへの門戸も開かれる
サイバーエージェントでは、ユニークな人材獲得戦略としてエンジニアアカデミーとクリエイティブアカデミーを2011年から開講している。これは、仕事をしながら土日を利用して約10講座を無料で受講することができ、最後に課題をパスすれば、サイバーエージェントに入社することもできる講座だ。両アカデミー合わせて10回程の講座が開かれており、約100人の受講者のうち約50人がサイバーエージェントに入社。天空のクリスタリアのデザイナーのうち数名もクリエイティブアカデミー出身なのだという。準備金などで人材を引き抜く会社もあるなかで、スキルアップの場を無料で提供することで向上心と意欲のある人材を採用していくというサイバーエージェントならではの採用戦略だといえる。

また、スマートフォン向けのサービスアイディアをモックアップにより競い合うコンテスト「モックプランコンテスト」も行われており、優秀者には賞金と事業化の支援、サイバーエージェントへの採用パスが提供されている。社内でも、「アプリコンテスト」、社内版「モックプランコンテスト」のほか、年2回「ジギョつく」と呼ばれる社員が事業を提案してグランプリ形式で優れた提案を選ぶコンテストが行われており、挑戦したい人材に学ぶ場やチャンスを与える体制がそろっているのだ。

今回インタビューに応じてくれた神谷氏は、クリエイティブアカデミーの取り組みをサイバーエージェントが始める前に社内で試験的に行われたセミナーを受講したひとりだ。セミナーではActionScript3.0のスキルを身につけることができたという。「常々学びたいと考えていたことに挑戦でき、チャンスを与えてもらったことに感謝しています」(神谷氏)

一方、新卒で入社し、広告代理事業で営業をしていた鈴木氏は、入社後「サービスをつくりたい」という想いが強くなり、アメーバ事業本部に転属を願い出たという。「プロデューサーの勉強は仕事をしながらやっていきましたが、上長が近くにいて相談もしやすかったですし、プロデューサーの同期社員を始め多くの同僚に助けてもらいました。今のプロジェクトメンバーは意識も高く、自ら考えて動く、ということを実践できる人ばかりですのでみんなでコミュニケーションを密に取りながら、とにかくいいものをつくろう!という目標にむかって一丸となって仕事ができる環境ができていると思います」(鈴木氏)今回のプロジェクトを通じて、「初めてスマートフォン向けの本格的なカードゲームをつくるという挑戦のなかで、プロデューサーとしてやりたいことをメンバーにきちんと納得してもらって、それらの要素を詰め込んでいったことがうまくいったと感じています。やはり、自分たちで創り上げた世界観やアイディアがゲームに反映されていくのは、とてもやりがいがあります。また、ゲームが成長して、ゲームとして理想に近づくことができれば、それに対してユーザーが必ず反応してくれるところも仕事のおもしろみを感じるところです」と話す神谷氏。鈴木氏も「海外展開も視野に入れつつ、まずは天空のクリスタリアがAmebaを代表するゲームになることを目指したいですね」と話してくれた。

「入社後、広告営業の仕事をしていましたが、サービスをつくりたいという想いが強くなり、異動を希望。プロデューサーの仕事は、仕事の中で勉強してきました」(鈴木氏)
「入社後、広告営業の仕事をしていましたが、サービスをつくりたいという想いが強くなり、異動を希望。プロデューサーの仕事は、仕事の中で勉強してきました」(鈴木氏)
Amebaでは、女性向けサービスやコミュニティサービスなどもしっかりと継続していきながら、スマートフォン対応を推し進め、2012年7~9月には、数多くのスマートフォン向けサービスやゲームのリリースを予定しているという。また、外部のSAP(Social Application Provider)からのゲーム提供も受け入れ、スマートフォンに特化したプラットフォーマーとしての展開も予定されているサイバーエージェントが、次にどのようなこだわりを持ったゲームを出してくるのかに期待したい。

(取材・文・撮影:野本幹彦)





株式会社サイバーエージェント

1998年に設立されたサイバーエージェントは、「Ameba関連事業」「インターネットメディア事業」「インターネット広告事業」「投資育成事業」の4つの事業を展開。ブログを中心としたコミュニケーションサービス「Ameba」のほか、アバターコミュニティ「アメーバピグ」、ミニブログサービス「Amebaなう」、女性向けブログコミュニティ「AmebaGG」などを提供し、他社のプラットフォームに向けたソーシャルアプリやゲームも提供している。技術職への理解が高い会社としても定評があり、エンジニア・クリエイター職の社員を対象にしたシェアハウスの開設が2012年12月に予定されているほか、2012年6月時点で全社員に占める技術者の割合が4割を超えていることも特徴となっている。
URL http://www.cyberagent.co.jp/



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