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デザイン・クリエイティブ目線で語るソーシャルアプリ制作の裏側 第4回「青春姫」(1/2)

2024.4.20 SAT

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デザイン・クリエイティブ目線で語る

ソーシャルアプリ制作の裏側

第4回 株式会社gumi「青春姫」(1/2)


教師になって、女生徒たちとの親密度を上げて青春を謳歌するというコンセプトの「青春姫」。2012年8月28日にGREEから提供されて人気を博し、1カ月強の10月4日には20万ユーザーを突破した「青春姫」はどのようなコンセプトで制作されたのだろうか。青春を再現するコンセプトづくりとキャラクターづくりのこだわりを、プロデューサーの今泉潤氏とイラストレーターの林蔵氏(ペンネーム)にうかがった。

青春姫 「青春姫」とは

個性あふれる女生徒の担任教師となって、最高の学園生活を謳歌するという新しいコンセプトの「青春を追体験するSLG」として、スマートフォン版およびフィーチャーフォン版GREEで遊べる。エリート/スポーツ/ミッション系など7つのさまざまな校風をもつ学園都市が舞台で、すごろくクエストやクラス・学校別の対抗戦などを行い、女性との新密度を高めながら最高のクラスを作ることを目指す。
URL http://mpf.gree.jp/57227


 Interview 1/2 

福岡オフィスで新シリーズをつくり
東京と対抗させることで社内を活性化


女の子のイラストのかわいさもウリとなっている「青春姫」は、プロデューサーの今泉氏(右)がイラストレーターの林蔵氏(左)にほれ込み、入社までさせて完成させたゲームだ
女の子のイラストのかわいさもウリとなっている「青春姫」は、プロデューサーの今泉氏(右)がイラストレーターの林蔵氏(左)にほれ込み、入社までさせて完成させたゲームだ


gumiは、共同開発のゲーム以外にもオリジナルゲームに力を入れており、2011年02月にリリースした「任侠道」の大ヒット以降、数々のオリジナルゲームをGREEに提供し続け、多くのヒットタイトルを生んでいる会社だ。今回の「青春姫」および前作の「幻獣姫」(2012年6月6日リリース)の姫シリーズが生まれたキッカケのひとつは、gumiが2011年9月に福岡オフィスを開設したことだと今泉氏は話す。「福岡に展開したのは、福岡市がゲーム産業やRubyの振興をサポートしていることや技術系の大学が多いこと、人材確保が東京よりも容易なことなどを理由としていますが、実際は海外展開する前にまず国内で支社を展開できるようにしなければならないと考えたことがはじまりだったと思います。最初、自分は福岡に支社をもつことは大反対だったのですが、やはり2011年9月から2012年3月までは既存アプリの運営で精一杯で、人も増えず、売上も落ちている状態でした」

2012年3月に福岡オフィスの立て直しのため、福岡担当となり、週3日は福岡に行っているという今泉氏は、まずゲームを1本立ち上げることからはじめなければならないと考えた。「任侠道」「海賊道」「騎士道」とヒットを出している東京に対抗して、福岡で新たなシリーズを出して福岡オフィスを立て直すことで、社内の活性化を狙ったという。「流行しているゲームは大きく4つにわかれています。いわゆる本格美麗派、版権を使ったIP(Intellectual Property)系、任侠や海賊などの企画物に加え、女の子がたくさん出てくるゲームが流行していると感じていて、これまでの道シリーズに続いて、姫シリーズをつくりたいと以前から社長(國光宏尚氏)と話していました」(今泉氏)

今泉 潤氏
株式会社gumi
執行役員
Senior Vice President
今泉 潤氏
最初から青春姫のコンセプトはもっていた今泉氏だが、最初は王道のカードバトルゲームに姫の要素を加えた「幻獣姫」をリリースしている。「1作目は奇をてらわずに制作しましたが、いわゆるバトルではない見せ方もあるのではないかと考えていましたね。そこで、2本目はほかではリリースされていないハイスクール系のゲームにしようと決めました」と今泉氏は話す。

「青春姫」を制作するにあたっては、現在はgumiでイラストレーターを務めている林蔵氏の存在が不可欠だと今泉氏は考えていた。2年前のゲーム制作でイラストコミュニケーションサービス「pixiv」にてイラストレーターを探していたときに知り合い、それ以降すべてのゲームで外部のイラストレーターとして林蔵氏を起用してきた今泉氏は、「顔も年齢も性別もわからない状態でやり取りしていましたが、林蔵さん(pixivでのハンドルネーム)が描く絵はすごくよくて、とにかく女の子がかわいいと社内でも評判で、PCの壁紙にしている人もいました。青春姫は、すべてのキャラクターを林蔵さんでつくりたいと思い、大阪まで会いに行きました」と話す。

林蔵氏
Visual Art Creation
林蔵氏
実際に会ってみると、好青年で責任感があり、絵に対するモチベーションが高く、勉強熱心だと感じた今泉氏は、林蔵氏に入社するよう勧め、一気に青春姫の制作体制を整えていった。林蔵氏は数カ月前のことを振り返りながら、次のように話してくれた。「5月に初めて会って、6月には上京して住む場所を決めて、アートディレクターなどとすり合わせしながら、7月には入社して、8月に青春姫をリリースしました。生活や環境が一変し、規模感やスピード感もまったく違うので、最初はとまどいましたね」


オリジナルゲームにこだわって
タイトルやシステムをつくる


女生徒の担任となって理想のクラスをつくる「青春姫」は、カードバトルゲームでありながらシミュレーション要素が強いゲームとなっている
女生徒の担任となって理想のクラスをつくる「青春姫」は、カードバトルゲームでありながらシミュレーション要素が強いゲームとなっている(クリックで拡大)
「青春姫」は、ユーザー層のターゲットなどは決めず、「あえて言えば、自分向けにつくったゲームです」と今泉氏は話す。「企画書などをつくっても狙った層にうけるとは限らず、ターゲットは結果論になってしまいます。女性向けに、と言われても、自分は女ではないので、なにを狙っていいのかわからない。自分が好きでなければ、絶対におもしろいものはつくれません。自分向けにモチーフをつくり、自分が好きなイラストレーターの絵を使って、こんな青春を送ってみたかったな、という自分の欲望を実現させようとするからユーザーにうけているのだと思いますね。その意味では、やはり20~30代の男性がターゲットになっているのではないでしょうか」

カードバトルゲームでありながら、世界観はシミュレーションゲームのようなつくりにしているという「青春姫」のゲームシステムについては、試行錯誤を繰り返しながら、より楽しめるような仕掛けを考えているという。「幻獣はバハムートと言えばだいたいのイメージはつきますが、雫ちゃんという生徒のイメージはつきにくいので、キャラクターをつけていくことにはこだわって取り組んでいます。また、バトルゲームではレイド戦などで戦っていけばいいですが、青春姫では、文化祭がうまくいかなくて悩んでいる生徒の悩みを解決するといったイベントを仕掛けています。これをもう少し直感的に演出できるようにしたいと思いますね。対抗戦など、競い合う要素はまだまだ必要だと思っています」

すごろくクエストや対抗戦などのイベントで競い合い、生徒の信頼を勝ち取っていく
すごろくクエストや対抗戦などのイベントで競い合い、生徒の信頼を勝ち取っていく(クリックで拡大)
さらに、女子高生と教師という設定の中では、守らなければならない制約も多い。露出や過激なシチュエーションなしにユーザーの想像力を刺激して萌えさせることにも、タイトルとしてのこだわりを感じる点だ。「教師という設定なので、シチュエーションは登校から下校までしか描かないようにしています。休みの日に一緒に映画館に行ったら、教師としては一線を越えてしまいますよね。あくまで健全な青春のひとコマとしてゲームを展開させ、しっかりと枠をつくって意識しておかないとなんでもありのゲームになってしまいます。ユーザーに想像させることもひとつの演出だと思いますし、行き過ぎたものを提供しても楽しくない。gumiがつくるオリジナルゲームは、どのゲームもモチーフに対してどのような要素を出していくかを非常に意識してつくっています」(今泉氏)

前職はテレビや映像の業界で働いていたという今泉氏は、オリジナルのゲームでシリーズ化することや、タイトルのつけ方にもこだわりをもっていると話してくれた。「テレビ番組や映画がヒットして2作目を出そうとしても、1作目のファンにリーチさせる手段がなく、CMなどで宣伝する必要があります。ソーシャルゲームでは、ユーザーの反応がKPIなどの数字で見えてくるし、ユーザーの情報を得ることができます。そういったファンに向けて新たなものをつくるには、タイトル間の親和性が重要で、コンセプトを共通させる必要がありました。任侠道の次は、海賊道、騎士道と続けていきましたね」

道シリーズに続き、姫シリーズも漢字三文字のタイトルとなっていることを伺うと、「今のソーシャルゲームは、横文字の複雑なタイトルが多いけど、ピンとこないじゃないですか。横文字を使うとタイトルに重みがなくなるし、モバイルに向けて出しているゲームならひと言でなんのゲームかがわからないといけないと思っています」と話す今泉氏。これらのタイトル付けは、同じ会社が出しているゲームとしての認知やブランディングのためにも役立っているようだ。

(取材・文・撮影:野本幹彦)

>>> 後編に続く


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