デザイン・クリエイティブ目線で語る
ソーシャルアプリ制作の裏側
第5回 株式会社コナミデジタルエンタテインメント「DRAGON COLLECTION(海外版)」(1/2)
累計登録者数700万人(2012年10月発表)を超えるソーシャルコンテンツ「ドラゴンコレクション」など、数々のヒットタイトルを運営するKONAMIのソーシャルコンテンツ制作部門「ドラコレスタジオ」は、2012年8月に同ゲームの海外版「DRAGON COLLECTION」をリリースしている。制作の現場ではどのような試みが行われたのだろうか。「DRAGON COLLECTION」の制作にたずさわる4名のクリエイターに話をうかがった。
「DRAGON COLLECTION」とは
2010年に日本で配信を開始し、今なお高い人気を博している「ドラゴンコレクション」の海外版(英語版)。GREE Internationalのプラットフォーム上で海外展開されており、日本版の世界観やおもしろさをそのままに、海外向けにさまざまな工夫や企画が行われている。
URL http://itunes.apple.com/app/dragon-collection/id534269856
©Konami Digital Entertainment
Interview 1/2
数カ月にわたるテストを繰り返し
現地のニーズに合わせたゲームを制作
ドラコレスタジオの「DRAGON COLLECTION」制作スタッフ。左からアシスタントディレクターのHIFUMI氏、企画担当のヤンダガ氏、グラフィック担当の優氏、UI担当のちか氏 |
現地の制作スタッフが実際に遊ぶのを後ろから見ながら、制作チームはグラフィックやUI、ゲームに対する考え方にさまざまな違いを見出していった。プランナーのヤンダガ氏は「実際にコンテンツを触ってみてもらって、王道ファンタジーテイストや基本的なモンスターのデザインは受け入れられるということがわかりました。しかし、欧米ではよりストーリー性を重視し、壮大な何かの目的のためにプレイするというスタイルを重視するお客様が多いということがわかったので、演出や見た目も工夫し、企画を立てていきました」と振り返る。また、グラフィック担当の優氏も「海外で受けるデザインは、日本のものと若干異なるため、すり合わせしながら模索していく時間を多く取りました。新たなグラフィック素材をつくる場合には、現地にもクリエイターがいるので、彼らのアイデアを優先的に採用しつつ、ドラゴンコレクションの世界観に合わせるように注意していきましたね」と、ゲームの根本は変更せずに、実際に遊んでいただく現地のお客様を意識して企画・制作を進めていったことを明かしてくれた。
アシスタントディレクター HIFUMI氏 |
ヤンダガ氏 |
優氏 |
ちか氏 |
ローカライズではなく
カルチャライズを行っていく
国内版のおもしろさを海外向けにカルチャライズされた「DRAGON COLLECTION」(クリックで拡大) ©Konami Digital Entertainment |
たとえば、欧米のお客様は長い文章をあまり好まず、小さい文字や補足説明にまで気づいてもらうことは難しい。そのため、的確な英語の言葉選びやグラフィックと一体化してひと目でわかりやすいデザインにする必要があった。ヤンダカ氏は「日本語では漢字が使えますが、英語にすると文字数が増え、幅も広がってしまいます。それをスマートフォンの小さな画面に合わせてお客様の目にとまるようにすることに試行錯誤を繰り返しました」とテキストでの苦労を話してくれた。それらのわかりやすい表現に苦労した結果、海外版で培ったノウハウが日本版に逆輸入されるという現象も生まれた。「わかりやすさというのは万国共通です。我々の制作チームが行ったUIやテキストの工夫が、ドラゴンコレクションの日本版アプリにも反映されていたりします。」(HIFUMI氏)
長いテキストを使わずにわかりやすいUIにするなど、ゲームの見方や環境、モラルなどのさまざまな配慮が行われている(クリックで拡大) ©Konami Digital Entertainment |
各国の通信環境もデザインに影響している。「国によっては、移動中に十分な通信速度が出ない場合もあり、お客様にストレスを与えないようにしつつ、ストーリーを重視することでリッチになるように模索していきました。今でも、チームで感覚的に重く感じたらすぐに軽量化するようにしています」と優氏は話す。
(取材・文・撮影:野本幹彦)
>>> 後編に続く