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デザイン・クリエイティブ目線で語るソーシャルアプリ制作の裏側 第5回「DRAGON COLLECTION/海外版」(1/2)

2024.4.23 TUE

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デザイン・クリエイティブ目線で語る

ソーシャルアプリ制作の裏側

第5回 株式会社コナミデジタルエンタテインメント「DRAGON COLLECTION(海外版)」(1/2)


累計登録者数700万人(2012年10月発表)を超えるソーシャルコンテンツ「ドラゴンコレクション」など、数々のヒットタイトルを運営するKONAMIのソーシャルコンテンツ制作部門「ドラコレスタジオ」は、2012年8月に同ゲームの海外版「DRAGON COLLECTION」をリリースしている。制作の現場ではどのような試みが行われたのだろうか。「DRAGON COLLECTION」の制作にたずさわる4名のクリエイターに話をうかがった。

DRAGON COLLECTION 「DRAGON COLLECTION」とは

2010年に日本で配信を開始し、今なお高い人気を博している「ドラゴンコレクション」の海外版(英語版)。GREE Internationalのプラットフォーム上で海外展開されており、日本版の世界観やおもしろさをそのままに、海外向けにさまざまな工夫や企画が行われている。
URL http://itunes.apple.com/app/dragon-collection/id534269856

©Konami Digital Entertainment


 Interview 1/2 

数カ月にわたるテストを繰り返し
現地のニーズに合わせたゲームを制作


ドラコレスタジオの「DRAGON COLLECTION」制作スタッフ。右からアシスタントディレクターのHIFUMI氏、UI担当のちか氏、企画担当のヤンダガ氏、グラフィック担当の優氏
ドラコレスタジオの「DRAGON COLLECTION」制作スタッフ。左からアシスタントディレクターのHIFUMI氏、企画担当のヤンダガ氏、グラフィック担当の優氏、UI担当のちか氏
2013年1月現在、北米や欧州などで配信されている海外版の「DRAGON COLLECTION」の企画段階でもっとも大きな課題となったのは、日本国内で多くの人に楽しんでもらうようなテイストとなっているコンテンツがグローバルで受け入れられるかどうかだった。そのため、「DRAGON COLLECTION」の制作チームは数カ月間アメリカに渡り、現地の制作スタッフと企画をつくり上げていったという。アシスタントディレクターのHIFUMI氏は、「まず最初に単純にローカライズしたものをアメリカへもっていき、フォーカステストに近い形で現地の制作スタッフの意見を聞きながら企画を練り上げていきました」と話す。

現地の制作スタッフが実際に遊ぶのを後ろから見ながら、制作チームはグラフィックやUI、ゲームに対する考え方にさまざまな違いを見出していった。プランナーのヤンダガ氏は「実際にコンテンツを触ってみてもらって、王道ファンタジーテイストや基本的なモンスターのデザインは受け入れられるということがわかりました。しかし、欧米ではよりストーリー性を重視し、壮大な何かの目的のためにプレイするというスタイルを重視するお客様が多いということがわかったので、演出や見た目も工夫し、企画を立てていきました」と振り返る。また、グラフィック担当の優氏も「海外で受けるデザインは、日本のものと若干異なるため、すり合わせしながら模索していく時間を多く取りました。新たなグラフィック素材をつくる場合には、現地にもクリエイターがいるので、彼らのアイデアを優先的に採用しつつ、ドラゴンコレクションの世界観に合わせるように注意していきましたね」と、ゲームの根本は変更せずに、実際に遊んでいただく現地のお客様を意識して企画・制作を進めていったことを明かしてくれた。

HIFUMI氏
アシスタントディレクター
HIFUMI氏
ヤンダガ氏
ヤンダガ氏
優氏
優氏
ちか氏
ちか氏


ローカライズではなく
カルチャライズを行っていく


国内版のおもしろさを海外向けにカルチャライズされた「DRAGON COLLECTION」
国内版のおもしろさを海外向けにカルチャライズされた「DRAGON COLLECTION」(クリックで拡大)
©Konami Digital Entertainment
HIFUMI氏は、数カ月の企画作成期間において最大の成果を「現地の方がドラゴンコレクションをプレイする姿を後ろからしっかり見ていくことで、UIやデザインをどうすればよいかがわかってきた」と話す。そのうえで重要なのは、「ローカライズだけではなく、カルチャライズを行うこと」と話を続けた。

たとえば、欧米のお客様は長い文章をあまり好まず、小さい文字や補足説明にまで気づいてもらうことは難しい。そのため、的確な英語の言葉選びやグラフィックと一体化してひと目でわかりやすいデザインにする必要があった。ヤンダカ氏は「日本語では漢字が使えますが、英語にすると文字数が増え、幅も広がってしまいます。それをスマートフォンの小さな画面に合わせてお客様の目にとまるようにすることに試行錯誤を繰り返しました」とテキストでの苦労を話してくれた。それらのわかりやすい表現に苦労した結果、海外版で培ったノウハウが日本版に逆輸入されるという現象も生まれた。「わかりやすさというのは万国共通です。我々の制作チームが行ったUIやテキストの工夫が、ドラゴンコレクションの日本版アプリにも反映されていたりします。」(HIFUMI氏)

長いテキストを使わずにわかりやすいUIにするなど、ゲームの見方や環境、モラルなどのさまざまな配慮が行われている
長いテキストを使わずにわかりやすいUIにするなど、ゲームの見方や環境、モラルなどのさまざまな配慮が行われている(クリックで拡大)
©Konami Digital Entertainment
また、UIやコーディング担当のちか氏は「海外はネイティブアプリが中心と聞いていたので、Webベースで見劣りしないようにCSS3を勉強して、CSS animationでアニメーションをつくっていきました」と話す。キャラクターデザインについても、前述のように基本的には変える必要はなかったが、「日本では丸印が海外ではチェックマークだったり、ポジティブを表す色が違っていたり。モンスターの色も日本ではきらびやかなものが受けるが、海外では少し落ち着いたもののほうが人気がある」(優氏)などといったさまざまな面に気を遣い、海外対応するために工夫した。

各国の通信環境もデザインに影響している。「国によっては、移動中に十分な通信速度が出ない場合もあり、お客様にストレスを与えないようにしつつ、ストーリーを重視することでリッチになるように模索していきました。今でも、チームで感覚的に重く感じたらすぐに軽量化するようにしています」と優氏は話す。

(取材・文・撮影:野本幹彦)




>>> 後編に続く


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