オフィス潜入リポート「こんなオフィスで働きたい!」
第14回 NHN Japan株式会社(NHN Japan Corp.)後編
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無料通話、無料メール、グループでのコミュニケーション、スタンプ機能──。わずか1年半で、1億人のユーザーを獲得したスマートフォンのアプリ「LINE」を語るキーワードだ。現在グローバルに広がりを見せる、このコミュニケーションツールが生みだされたのは渋谷ヒカリエにオフィスを構えるNHN Japan。同社のオフィスに潜入するとともに、ウェブサービス本部の矢嶋聡さんにLINEの生い立ちについて聞いた。
●NHN Japan株式会社
韓国最大のインターネットサービス企業、NHNの日本法人。オンラインゲーム事業と、ウェブサービス事業を二本の柱とする。オンラインゲーム事業には「ハンゲーム」、ウェブサービス事業には無料通話・無料メールの「LINE」、検索サービスの「NAVER」、ニュース・ブログサービスの「livedoor」がある。今後オンラインゲーム事業を主とする「Hangame株式会社(仮称)」と、ウェブサービス事業を主とする「LINE株式会社(仮称)」に分社する予定。
テレビ会議室。国内外のオフィスと渋谷のオフィスとを結んで、モニタ越しにミーティングを
行うことができる
LINEが生んだ人気キャラクターのヌイグルミ。右から、ブラウン、ムーン、コニー。
これだけ大きいとインパクトがある
現在急ピッチで準備が進められている社内ライブラリー。床を彩る白いラインは本。と見せかけて、
よく見ると「NHN」「LINE」の文字!?
50名ほどを収容できる社内のセミナールーム。社内外の勉強会や、大勢のメンバーを擁するプロジェクトのミーティングに活用される。このスペースには、通訳ブースも併設。社内に英語、韓国語、中国語の通訳が常駐しているのも、多国籍企業のNHNならでは
一見したところなんの変哲もないミーティングルーム。と見せかけて、ここはユーザーリサーチルーム。自社のサービスに対してフィードバックを得るために、ユーザーをこの部屋に招き、サービスについて自由に意見を述べてもらう
ユーザーリサーチルームと、壁をはさんで併設されるオブザベーションルーム。ズラリと並んだモニタには、ユーザーの表情や、画面上の動きが映し出され、サービスに対する反応がつぶさに観察できる。ここで得られた反応は、すぐさまサービスの改善に生かされる。
ビルの27階と28階をつなぐ階段。工事中のフェンスを模したインテリアがユニーク
28階のミーティングスペースは、主に社員だけのもの。円形のソファ、対面式のイス、そしてクツを脱いで上がる掘りごたつのミーティングスペースまであり、バラエティに富んでいる。こんな場所で気分をリフレッシュしながらブレストに臨めば、ユニークなアイデアも生まれやすいというもの
壁前面がホワイトボードのミーティングスペース。思いついたアイデアを、逃さず記していくのに最適な空間だ
マネタイズは、まだまだ先。まずはデファクトスタンダードをめざす。
──昨年には、1億人のユーザーを獲得したそうですね。
●実のところ最初にヒットしたのは中東でした。それもプロモーションなし、クチコミだけで毎日数万件ダウンロードされたのです。それが2011年の8月の話です。続いて2011年10月には、LINEに無料通話機能とスタンプ機能が追加され、その段階で香港や台湾、シンガポールなどで、一日に60万件くらいダウンロードされることに。ここでわれわれも本格的に「いける」と感じて、日本でテレビCMを打ったのです。それが同年11月のことです。
2011年末の時点で、目標だった100万ユーザーの10倍、1000万ユーザーに達したのも驚きでしたが、2012年には日本、東アジアでブレイクし、スペインなどでも盛り上がり出したことから、2013年1月には一億ユーザーに達しました。
──1億人のユーザーがいるスマホのアプリは、まだまだ珍しいのでは?
●マルチナショナル、かつスマホネイティブだと、恐らくLINEだけだと思います。ある国で、ティッピングポイントを超えるとユーザーは加速度的に増していきます。たとえばスペイン言語圏で流行ると、国をまたいで南米のスペイン語圏で盛り上がっていきますし、香港や台湾で流行ると、言語は違ってもその周辺国に飛び火する。そういった国をどれだけ増やせるかが、われわれにとっては重要です。
──次なるターゲットとなるエリアは?
●まずは現在伸びているスペイン語圏。同時に、中国と北米でしょうか。北米は英語圏ですので、そこでブレイクすれば飛び火するエリアも広い。ただし、アメリカは多国籍民族の国ですし、エリアによって大きく文化が異なりますので、LINEが本当に受け入れられるのか、大規模なマーケティングを実施する前に、現地のニーズを吸い上げながら慎重にローカライズしていくつもりです。今後、アメリカをはじめ、台湾、タイ、インドネシアなどに現地法人を設ける予定です。
──ユーザーを増やすだけでは収益には結びつかないはずですが、今後いかにマネタイズしていく予定ですか?
●現状のところ、企業に公式アカウントを発行したり、企業向けにスポンサードスタンプを提供したり、有料でスタンプを販売したり、ゲーム内で有料のアイテムを提供したりと、それなりの収益はあるのですが、LINE事業以外でも安定的な収益があるため、LINEでの収益は北米や中国などでのマーケティング費用に充てて、まずはユーザーを広げることに注力しています。マネタイズに主軸を移すのは、まだまだ先です。
いろんなところに人的リソースを割いて、ユーザー拡大のペースを鈍らせるのではなく、まずはLINEをデファクトスタンダードにする。そういった意味では、ここからが正念場だと考えています。
(取材・文:立古和智 写真:飯田昌之)
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