Baidu×MdN スペシャルトーク
SimejiのUIデザイン開発に見る
これからのWebデザイナー像
取材・文:久保靖資 / 写真:佐藤弘樹
山口: 先ほど、ログを取ってユーザーのアクションを解析していると聞きましたが、Web解析でも同様ですが、やはりそういった数字は重要?
矢野: 数字だけに振り回されるのはどうかと思うけど、指標としては重要ですね。もちろん数字以外にユーザーの声を聞くことも。IMEって使いやすいのは当たり前じゃないですか。できれば意識せず使えるくらいがいいわけで。今使っているIMEの方式を身体が覚えるというか、慣れてしまう。ですから、今回のようにUIを大きく変えてしまうと……、まずはユーザーから怒られるわけですよ。
山口: 確かに厳しいよね(笑)
矢野: でも、そういう声ってやはり重要で、文章を入力する行為ってすごくセンシティブなんだって思うんですよ。それゆえにそういった声が上がる。せっかく使いやすかったのにっていう気持ちが伝わってくるんです。
山口: 僕は前のバージョンを知らないから、6.0が初めてなんだけれど、なかなかいいと思うよ。スライドするパネルじゃなくて、入力自体が。特に、長文入力したときに長文全体の変換候補が出るのはすごく楽。
矢野: ありがとうございます(笑)。NLP(自然言語処理)は別のチームで開発してますが、IMEではUIデザインと同様にすごく重要な要素ですよね。
山口: デザインと開発、それぞれ違うチームでやっているという話ですが、フリーランスだった矢野さんがバイドゥという企業に入ってチームでやるようになって何か変わりましたか?
矢野: 最近チームっていいなぁ…って思います。いろいろな価値観・意見があって、特にデザインチームは議論が激しい。ただ、何人もで議論を重ねていくと、次第に抽象化していく。個別の価値観は具体的で違いを感じるけど、極めて抽象化していったときの感覚って互いに共感できるように思うんですよね。
山口: 具体的なものって、経験などによっても違うし。アップルのジョナサン・アイブが古いメタファは止めようって言っているけれど、確かに経験の違いで理解が及ばないことも多い。電話のアイコンが「黒電話」だったりね(笑)
矢野: そうそう。いまだに保存アイコンが「フロッピー」だったり(笑)。若い人たちは見たこともないから、何のメタファなのか伝わらないですよね。
山口: ところで、バイドゥといえばグローバル企業。中国の人たちとの仕事ってどうなの?
矢野: すでにグローバル企業ですから、それこそ多様な価値観が入り混じっている感じですね。
山口: デザインに対する考え方にも違いがありますか?
矢野: 隙間があると落ち着かないみたい(笑)。日本人って割とホワイトスペースが好きじゃないですか。というか、シンプルなデザインが好まれたりする。でも、中国人の感覚だと、隙間があると埋めてくるんですよ。だから、逆に隙間を空けている理由をロジカルに説明しなくてはならなかったり。それと、そもそもアジャイルですね。“手間隙かけたほうがいいものができる”と日本人が考える一方で、とにかく早く出すのがヘッドクオーターのやり方。荒々しいけれど、決断も早い。もちろん、合理的なんですよ。早く出せばこれだけ数字が取れるという計算がありますから。
[記事リンク]
>>> 第1話 大胆にUIを変更したSimejiの開発とは
>>> 第2話 数字に振り回されない分析とユーザーの声
>>> 第3話 これからのWebデザインとWebデザイナー
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[プロフィール]
SimejiのUIデザイン開発に見る
これからのWebデザイナー像
Android向けの日本語IMEとして人気のSimejiがスライドUIを実装するなど、バージョン6.0では大幅なUI改良が行われた。そのSimejiのUIデザインを担当するのが、バイドゥでモバイルプロダクト事業部マネージャーの矢野りんさん。Webをはじめとした数々のデザインワークやデザイン関連書籍の執筆でも著名な矢野さんと月刊MdNなどの編集長を歴任した弊社山口がWebデザインについて語り合った。
取材・文:久保靖資 / 写真:佐藤弘樹
第2話 数字に振り回されない分析とユーザーの声
―― ユーザーの声を受け取ることの重要性
(写真をクリックすると拡大します) |
矢野: 数字だけに振り回されるのはどうかと思うけど、指標としては重要ですね。もちろん数字以外にユーザーの声を聞くことも。IMEって使いやすいのは当たり前じゃないですか。できれば意識せず使えるくらいがいいわけで。今使っているIMEの方式を身体が覚えるというか、慣れてしまう。ですから、今回のようにUIを大きく変えてしまうと……、まずはユーザーから怒られるわけですよ。
山口: 確かに厳しいよね(笑)
矢野: でも、そういう声ってやはり重要で、文章を入力する行為ってすごくセンシティブなんだって思うんですよ。それゆえにそういった声が上がる。せっかく使いやすかったのにっていう気持ちが伝わってくるんです。
山口: 僕は前のバージョンを知らないから、6.0が初めてなんだけれど、なかなかいいと思うよ。スライドするパネルじゃなくて、入力自体が。特に、長文入力したときに長文全体の変換候補が出るのはすごく楽。
矢野: ありがとうございます(笑)。NLP(自然言語処理)は別のチームで開発してますが、IMEではUIデザインと同様にすごく重要な要素ですよね。
―― グローバル企業ってそもそもアジャイル
(写真をクリックすると拡大します) |
矢野: 最近チームっていいなぁ…って思います。いろいろな価値観・意見があって、特にデザインチームは議論が激しい。ただ、何人もで議論を重ねていくと、次第に抽象化していく。個別の価値観は具体的で違いを感じるけど、極めて抽象化していったときの感覚って互いに共感できるように思うんですよね。
山口: 具体的なものって、経験などによっても違うし。アップルのジョナサン・アイブが古いメタファは止めようって言っているけれど、確かに経験の違いで理解が及ばないことも多い。電話のアイコンが「黒電話」だったりね(笑)
矢野: そうそう。いまだに保存アイコンが「フロッピー」だったり(笑)。若い人たちは見たこともないから、何のメタファなのか伝わらないですよね。
(写真をクリックすると拡大します) |
矢野: すでにグローバル企業ですから、それこそ多様な価値観が入り混じっている感じですね。
山口: デザインに対する考え方にも違いがありますか?
矢野: 隙間があると落ち着かないみたい(笑)。日本人って割とホワイトスペースが好きじゃないですか。というか、シンプルなデザインが好まれたりする。でも、中国人の感覚だと、隙間があると埋めてくるんですよ。だから、逆に隙間を空けている理由をロジカルに説明しなくてはならなかったり。それと、そもそもアジャイルですね。“手間隙かけたほうがいいものができる”と日本人が考える一方で、とにかく早く出すのがヘッドクオーターのやり方。荒々しいけれど、決断も早い。もちろん、合理的なんですよ。早く出せばこれだけ数字が取れるという計算がありますから。
[記事リンク]
>>> 第1話 大胆にUIを変更したSimejiの開発とは
>>> 第2話 数字に振り回されない分析とユーザーの声
>>> 第3話 これからのWebデザインとWebデザイナー
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[プロフィール]
バイドゥ株式会社 モバイルプロダクト事業部マネージャー 矢野りん ●デザイナーとして数々のWebサイト制作やデザイン関連書籍・記事執筆などで活躍するほか、Android女子部などIT周りのコミュニティなどでも積極的な活動を続ける。現在はバイドゥ(株)にてSimejiなどのUX/UIデザインを手掛けている。 ●Simeji url.http://simeji.me/ |
(株)エムディエヌコーポレーション 第二書籍編集部 編集長 山口康夫 ●グラフィックデザイナー向けの専門誌、月刊MdNの編集長に就任後、月刊web creatorsを創刊し編集長に。現在は、書籍部門の編集長として従事し、Webデザインをはじめとする数々のデザイン関連書籍を手掛ける。 |