[Interveiw]夜の踊り子/田中裕介(1) | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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サカナクション
ビジュアル・アーカイヴス 2008-2014
| INTERVIEW | 監督 田中裕介[CAVIAR]
PROFILE | 田中裕介[たなか・ゆうすけ]
CAVIAR所属。秀逸なデザインセンスと映像制作のスキルに遊び心を加味した独創性を武器に、広告映像界で活躍する映像クリエイター。


派手な和装とメイク、踊り子、そして富士山の麓というインパクトの強い画に加え、撮影方法にも工夫を凝らした映像で話題を呼んだ「夜の踊り子」のミュージックビデオ(以下、MV)。東京モード学園のCMタイアップ曲としてすでに世間には広く知られていた本楽曲を、CMとはまったく異なる、振り切った方法論で演出した意図とは。田中裕介監督にお話を伺った。
●取材・文 林 永子


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―― 初めて手掛けたサカナクションのMV「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」は、サカナクションの新機軸といえる内容だったと思いますが、「夜の踊り子」はまた違った角度で突き抜けた印象を受けました。
「『バッハ~』」が話題になったので、依頼を受けたときは怖かったですね。パワーダウンするわけにもいかないですし。また、全員の演奏シーンを撮りたいというオーダーが先にあって「アイデンティティ」以来、久しぶりにバンドメンバー全員の演奏シーンを撮ることになり、その責任も重大でした。あとは、長い期間に渡って放送されていた東京モード学園のCMタイアップ楽曲だったので、楽曲の使いどころ、サビの部分は既に多くの人に知られていて。CMのイメージも浸透していたので、その世界観とは離したいという要望もありました。 index
「演奏シーンは固定撮影にて、実際にカメラ本体を近づけて引きから寄りのカットまでを撮影。いわゆるバンドの演奏シーンとは異なる違和感を演出した」
―― CMはサカナクションらしさのあるスタイリッシュな表現でしたね。北澤“momo”寿志さん(スタイリスト/クリエイティブディレクター)も「同じ文脈と属性ではやらない、新しい方向性を模索した」とおっしゃっていました。
僕自身もCMの世界観だったり、純粋にあの曲に合うビジュアル表現ではなく、もっと遠いところを目指そうという意識があって。イメージは、タイトルの“夜の踊り子” から、「踊り子……、伊豆の踊り子……、一郎君が学ランを着ている……、そして旅芸人の女の子と……、恋に落ちたり……するの? あ、旅芸人! 富士山?」みたいな感じで連想していくうちに、和装をテーマに、鈴木清順監督作品のような、ちょっと変な和の世界を演出しようと。それに、曲を初めて聞いたときに感じた“昭和感”も反映されています。

■メンバーを際立たせる“かぶき”の発想

―― 衣装もメイクも印象的ですが、監督としてこだわったポイントは?
旅芸人の衣装については、北澤さんに「昔、女性ものの着物を着ていた男たちが、相当かぶいていたんだよ」と聞いて、「へえ、すごい! それがいい」と伝えて、その“かぶき者”の世界観でスタイリングをお任せしました。メイクは小西神士さんのディレクション。ちょっと白塗りで、所々剥がれていて、ジュリーみたいな感じのお化粧です。北澤さんは打ち合わせの時に、80年代に活躍したエアブラシを使ったイラストレーター、ペーター佐藤さんの絵を小西さんに見せていました。かなり振り切ったお化粧で、画作りの意味でも、違和感があるとまずいのでドキドキしましたが(笑)。メイクは相当こだわりましたね。

―― なぜメイクをしようと思ったのでしょうか?
女性ものの着物を着ていて、しかもこだわって着崩しているような“かぶき者”が、お化粧したいと思わないわけがないからです。リアリティーを追及すると、本当はもっと過激にお化粧しているかもしれませんね。お化粧しない方が、上辺だけになってしまうというか、ただ派手な着物を衣装で着ているだけになっちゃう。だったらもっとぐっと振り切って、本物の“かぶき者”に近づけた方がいいかなと。


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本記事は『MdN』2014年9月号(vol.245)の特集「サカナクション ビジュアル・アーカイヴス 2008-2014」からの転載です。

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