「iPad対応のGmailを出したGoogleの思惑──後編」
「iPad対応のGmailを出したGoogleの思惑──後編」
2010年4月20日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
iPadはAppleの予想を超えて好調らしい。米国外での発売がおよそ1ヶ月延期されたのはそのためだという。
日本でも米国版のiPadを既に入手して利用しているユーザーも多いと聞くが、筆者は国内版の正式発売、しかも3G対応バージョンを待つつもりだ。iPadが、少なくともビジネス用としての真骨頂を発揮するには3Gでなければ意味がないと考えるからだ。インターネットに常に接続できるのでなければiPadの魅力は半減する。
一足早く発売された米国のiPadサイト
さて、本題に入る。
前編にて、Googleが「iPad」の画面サイズに最適化されたGmailを発表したと伝えた。
Googleは[HTML]と[JavaScript]という、基本的なWebのフォーマットにこだわり、インストール型のアプリではなく、あくまでWebアプリによるコンピューティングを理想としている。そのためのプラットフォームとしてiPadは最適なのである。
現在、Googleとアップルは冷戦状態にあるといっていい。Googleは、ソフトウェアとしては「Android」や「Chrome OS」といった自社製OSを発表しており、しかもオープンソース戦略をとっている。
反対にAppleはiPhone OSを他社に公開することなく、プロプライエタリ(開発者・開発企業などが製品やシステムの仕様や規格、構造、技術を独占的に保持し、情報を公開しないこと)な環境を固辞している。
そしてハードウェアにおいてもGoogleは明らかにiPhone対抗となる「Nexus One」を発売し、スティーブ・ジョブズの逆鱗に触れることを知りつつ敢えてモバイルガジェットビジネスに参入している。
しかしながら、Googleは先述の通り、HTMLとJavaScriptという、基本的なWebのフォーマットにこだわる企業であり、この本質的な姿勢はAppleのプラットフォームの上での展開に何の支障もないのである。Gmail、そしてそれに続くGoogleのWebアプリケーション群がiPadやiPhoneに最適化していくことで、最も悪い影響を受けるのはやはりMicrosoftだ。
Googleとアップルは、見た目には険悪になりつつも、テーブルの下では握手を続ける。Microsoftと、その開発者の生態系にダメージを与えることにおいては、この両者の思惑は常に一致したままなのである。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。