ネットベンチャー企業に浸透するイグジット戦略(前編)
ネットベンチャー企業に浸透するイグジット戦略(前編)
2011年5月9日TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
無料インターネット通話サービスを提供しているSkypeは2011年中にIPO(新規株式公開、つまり上場)を果たすというもっぱらの噂だったが、なかなか実現できず足踏み状態にある。
そこに目を付けたのが、GoogleとFacebookだ。GoogleはGoogleボイスというSkypeの競合サービスを持っており、FacebookはFacebookメッセージをマルチコミュニケーション型に進化させるというもくろみを表明しており、両者ともにSkypeを買収することに意欲を見せる理由がある。
仮にSkypeがIPOしたら10億ドル程度の調達額になると思われるが、GoogleとFacebookは2~3倍のプレミアムを提示しているとの噂があり、今後Skypeの経営陣がどういう決断をするかが見物だ。
さて本題なのだが、人間にも成長のステップがあり、社会生活を送るうえでの目標設定があるように(たとえば進学して大学に入る)、起業家およびベンチャー企業のステップにも同じようなステレオタイプが存在する。
最近の子どもであれば、小学校から中学校にかけて進学のための受験を経験し、経緯はどうあれ一流大学に入って安定した職業に就くというのが普通のステップだ。
起業家とベンチャー企業の場合は、まずは会社をつくり、人材を集め、投資家から出資を得るというステップを踏み、最終的にはIPOかM&A(企業売却)をゴールとするというのが通常のステップになる。このゴールをベンチャー用語ではイグジット(EXIT=出口)と呼び、どのようなイグジットを選ぶかをイグジット戦略という。
人生が進学し就職してからのほうが長く、次には出世や結婚、出産などのステップが待っているように、起業においてもIPOをすればそれで終わりではない(M&Aすれば、それは一旦は最終的なゴールになるとはいえるが)。
しかし、多くの子どもたちや若者が老後における幸福の形を想像できないように、多くの起業家にとってもIPOやM&Aのあとの状況を想像するのは、なかなかに難しいものだ。
青年が最難関校の受験に挑戦し、安定した就職を青春時代の目標にすることを非難する者は滅多にいない。多くの起業家とは、若く未熟で、浅はかな野心に突き動かされて起業するものだが、それを拝金主義であるとか、生意気だとこきおろすことなく、爽やかな青春の野望とみて応援することが、経済的にも停滞しつつある日本にはとても必要なことなのである。
(中編に続く)
SkypeのWebサイト
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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