好調なAppleの、不調な(?)iPad
好調なAppleの、不調な(?)iPad
2015年01月30日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)
Appleによる2015年第1四半期の決算報告は、すべてのアナリストの予想を上回る過去最高売上高(746億ドル、約8兆7800億円)と利益(180億ドル、約2兆1200億円)を記録した。
このご時世にあっても、昨年同期と比べて前者が約2兆円、後者が約5800億円増加していることは、長年Appleウォッチングを続けてきた自分としても驚くほかない。
もちろん、Googleも過去最高の四半期売上高となる181億ドル(約2兆1400億円)を記録し、ほかのプレーヤーたちも未来の情報環境をイメージした製品や技術デモの発表(たとえば、Hewlett PackardのホログラフィックイメージングディスプレイであるZvr Virtual Reality Displayや、Microsoftのホログラスなど)に忙しいわけだが、こと「今そこにある業績」に限っていえば、ティム・クックの舵取りは順風満帆のように思える。
ただ、すでにさまざまなメディアが指摘しているように、iPhoneやMacの好調の陰で、メディアタブレット市場を創出し、牽引してきたiPadの販売に陰りが感じられるのも事実だ。
このご時世にあっても、昨年同期と比べて前者が約2兆円、後者が約5800億円増加していることは、長年Appleウォッチングを続けてきた自分としても驚くほかない。
もちろん、Googleも過去最高の四半期売上高となる181億ドル(約2兆1400億円)を記録し、ほかのプレーヤーたちも未来の情報環境をイメージした製品や技術デモの発表(たとえば、Hewlett PackardのホログラフィックイメージングディスプレイであるZvr Virtual Reality Displayや、Microsoftのホログラスなど)に忙しいわけだが、こと「今そこにある業績」に限っていえば、ティム・クックの舵取りは順風満帆のように思える。
ただ、すでにさまざまなメディアが指摘しているように、iPhoneやMacの好調の陰で、メディアタブレット市場を創出し、牽引してきたiPadの販売に陰りが感じられるのも事実だ。
クックも、iPadの買い替えサイクルがiPhoneよりも長いことを認めており、新規ユーザーが売り上げを支えていることはまちがいない。個人的にも、iPhoneは6 Plusにしたものの、3Dプリンタなどの新分野製品の調達資金を捻出するため、iPadはiPad 3を最後に新規購入から遠ざかっている。それでも、旧来のDockコネクタと新しいLightningの混在状態に多少悩まされはしても、機能面での大きな不満はないというのが本音である。
一方で、3期連続販売数減とはいえ、iPadは今も四半期で2100万台を売り上げ、特に中国では7割が新規ユーザーを占めていて、まだしばらくは他国のように飽和状態にはならないものと思われる。ただし、低価格のライバルたちが台頭する中で、Apple製品はある種のステータスシンボル的な売れ方もしているので、同社としてはブランドイメージを高く保ち続けることに、これまで以上に力を入れるはずだ。
そして、Apple以外のタブレットメーカーに目を向けると、2015年後半にはカメラ機能を拡張した3Dスキャナの内蔵がひとつのトレンドになりそうだ。
実際に3Dプリンタで趣味的に色々と造形し、Structure Sensorというモバイル3DスキャナをiPhone 6 Plusで運用している経験からすると、3Dプリンタなどを活用して物理世界と電子世界の境界を取り除くリアリティコンピューティングの流れを一般化するには、手軽に使える3Dスキャナデバイスの普及が不可欠といえる。3Dスキャン機能は、立体物のデータ化だけでなく、拡張現実系のゲームや教育アプリなどさまざまな応用が考えられ、今後は、業務用途やプロのクリエイターたちの占有物ではなく、より一般化していく下地も十分にある。
そう考えると、ここしばらく機能面でのブレークスルーのなかったiPadにも、次世代機ではこうした機能が搭載されてくる可能性は決して少なくない。そして、もしそうした機能が実現されるのであれば、自分も含めてiPadの買い替え需要に火がつくのではないだろうか。
一方で、3期連続販売数減とはいえ、iPadは今も四半期で2100万台を売り上げ、特に中国では7割が新規ユーザーを占めていて、まだしばらくは他国のように飽和状態にはならないものと思われる。ただし、低価格のライバルたちが台頭する中で、Apple製品はある種のステータスシンボル的な売れ方もしているので、同社としてはブランドイメージを高く保ち続けることに、これまで以上に力を入れるはずだ。
そして、Apple以外のタブレットメーカーに目を向けると、2015年後半にはカメラ機能を拡張した3Dスキャナの内蔵がひとつのトレンドになりそうだ。
実際に3Dプリンタで趣味的に色々と造形し、Structure Sensorというモバイル3DスキャナをiPhone 6 Plusで運用している経験からすると、3Dプリンタなどを活用して物理世界と電子世界の境界を取り除くリアリティコンピューティングの流れを一般化するには、手軽に使える3Dスキャナデバイスの普及が不可欠といえる。3Dスキャン機能は、立体物のデータ化だけでなく、拡張現実系のゲームや教育アプリなどさまざまな応用が考えられ、今後は、業務用途やプロのクリエイターたちの占有物ではなく、より一般化していく下地も十分にある。
そう考えると、ここしばらく機能面でのブレークスルーのなかったiPadにも、次世代機ではこうした機能が搭載されてくる可能性は決して少なくない。そして、もしそうした機能が実現されるのであれば、自分も含めてiPadの買い替え需要に火がつくのではないだろうか。
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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。