Apple Musicを3週間使い込んで感じた魅力、そして問題点
Apple Musicを3週間使い込んで感じた魅力、そして問題点
2015年07月24日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)
Apple Musicがスタートして3週間あまりが経過した。思えば、The Beatlesの版権管理などを行うApple Corpsとの間で“Apple”の商標の適用範囲をめぐる係争が起こった1980~2000年代初頭とは隔世の感がある(当時のAppleは、商標権上、音楽関連の製品やサービスを提供することができなかったが、現実にはMIDI対応機器などを発売してApple Corpsから訴えられていた。故スティーブ・ジョブズは、この商標権をすべて買い取り、逆にApple Corpsにライセンスすることで、自社が音楽事業を自由に行える下地をつくったのだ)。
今回は、Apple Musicを使って感じた可能性と、問題点、要望などをまとめておくことにする。
今回は、Apple Musicを使って感じた可能性と、問題点、要望などをまとめておくことにする。
まずサービス自体の魅力に関していえば、これは大いにあることを実感している。もともと、音楽ダウンロードサービスに価格破壊をもたらしたiTunes Music Storeだったが、最近では1曲あたり150~250円、アルバムもふつうに1000~3000円、最低でも900円はする。もちろん、かなり気に入った楽曲であれば代金としてリーズナブルな範囲ではあるが、新しい音楽の発見という意味では手を出しにくくなってきてもいた。プレビューだけで判断するのがなかなか難しく、しばらく聴き込んでみないとわからない部分もあるからだ。
対して、Apple Musicであれば月額980円(じつは、アメリカ国内向けの9.99ドルよりも安い)。月に数曲購入する予算で、3000万曲以上の楽曲にフルアクセスでき、レコメンデーションや24時間放送のインターネットラジオであるBeats 1を通じて未知の楽曲に出会える機会もかなり増える印象をもった。
注意点としては、iTunes Music Storeの品揃えと完全に同一というわけではない点が挙げられる。端的な例として、Apple MusicではThe Beatlesの一般的なアルバムや楽曲は提供されていない。そして、たぶん日本の権利者の意向によるものと思われるが、原語版と日本語版がある場合は日本語版のみの提供となり、原語版は検索しても表示されないことがある。わかりやすい例が、K-POPの楽曲だ。日本デビューして日本語のアルバムをリリースしたグループは、それしか提供されないケースが多い(この点は、iTunes Music Storeも同様だ)。映画でいえば吹き替え版しかないような状況といえるが、もちろん原語版を好むリスナーも少なからず存在すると思われるので、該当する楽曲はぜひ現地版と日本版の両方を用意してほしいものだ。
Apple Musicの価格設定は、ほかのストリーミングサービスのプレミアムプラン(AWAやLINE MUSICの場合、1080円)よりもわずかに安い程度で、同じくライトもしくはベーシックプラン(それぞれ360円と500円)よりは割高になる。しかし、オフライン視聴やプレイリストの作成が不可だったり(AWAライトプラン)、30日あたりの利用時間が20時間に制限される(LINE MUSICのベーシックプラン)ので、筆者のニーズにはそぐわない。
さらに、楽曲数がAWAやLINE MUSICは年内に約500万曲を目指すとしているが、現状ではApple Musicの1/10にも満たないため、差は歴然だ。一方で、邦楽のラインアップは国産勢に軍配があがるので、そこを重視するリスナーにはApple Musicのアピール度は低くなるだろう。
アプリには、いくつかの問題点がある。たとえば、ストリーム再生中にアプリの切り替えを行ったり、通知が入るとノイズが発生する症状は、結構気になるところだ。デバイスはiPhone 6 Plusで、処理能力的にも問題ないと思われるので、メモリ管理面でなにか不具合が発生しているのかもしれない。
また、プレイリストモードで使っているときに、いくつか別アプリを利用してからミュージックアプリに戻ると、ライブラリ表示に切り替わることが結構ある。これもワークメモリの関係で発生するようだが、つねに以前のモードを覚えておくか、起動時の画面をユーザー設定できるようにするべきだろう。
そして、旧バージョンのミュージックアプリでは、iPhoneを横向きにするとアルバムカバーが並ぶ表示に切り替わったが、新バージョンではポートレート表示のみで固定されている。これでは、自動車のダッシュボードなどに取り付けて地図アプリと併用するような場合に使いにくい(停車中にしか操作しないとしてもだ)。
実際のところ、以前のバージョンでも横向き時のアルバムカバー画面は表示のみで自由に操作できるわけではなく、プレイリストはSiriでも呼び出せるため、Appleも割り切ってそのようにした可能性もある。それでも、iPhone 6以降はスクリーンサイズ自体が大きくなり、純正アプリも横画面への対応が進んだので、Apple Musicにもフル機能で使えるランドスケープレイアウトが用意されてもよいと感じた。
ちなみに、細かいことだが、Spotlightでミュージックアプリを検索する場合、英語つづりの“Music”では結果に表示されない。実際には、写真アプリやマップアプリも“Photo”や“Map”では検索できないので、仕様といえばそれまでだ。しかし、高機能検索を標榜するSpotlightなのだから、この程度の言語の違いは吸収してしかるべきではないだろうか。
いずれにしても、利用開始から3カ月は無料の試用期間となるので、とりあえず使ってみて自分の嗜好や利用形態に合うかどうかを確かめてみることをオススメしたい。
対して、Apple Musicであれば月額980円(じつは、アメリカ国内向けの9.99ドルよりも安い)。月に数曲購入する予算で、3000万曲以上の楽曲にフルアクセスでき、レコメンデーションや24時間放送のインターネットラジオであるBeats 1を通じて未知の楽曲に出会える機会もかなり増える印象をもった。
注意点としては、iTunes Music Storeの品揃えと完全に同一というわけではない点が挙げられる。端的な例として、Apple MusicではThe Beatlesの一般的なアルバムや楽曲は提供されていない。そして、たぶん日本の権利者の意向によるものと思われるが、原語版と日本語版がある場合は日本語版のみの提供となり、原語版は検索しても表示されないことがある。わかりやすい例が、K-POPの楽曲だ。日本デビューして日本語のアルバムをリリースしたグループは、それしか提供されないケースが多い(この点は、iTunes Music Storeも同様だ)。映画でいえば吹き替え版しかないような状況といえるが、もちろん原語版を好むリスナーも少なからず存在すると思われるので、該当する楽曲はぜひ現地版と日本版の両方を用意してほしいものだ。
Apple Musicの価格設定は、ほかのストリーミングサービスのプレミアムプラン(AWAやLINE MUSICの場合、1080円)よりもわずかに安い程度で、同じくライトもしくはベーシックプラン(それぞれ360円と500円)よりは割高になる。しかし、オフライン視聴やプレイリストの作成が不可だったり(AWAライトプラン)、30日あたりの利用時間が20時間に制限される(LINE MUSICのベーシックプラン)ので、筆者のニーズにはそぐわない。
さらに、楽曲数がAWAやLINE MUSICは年内に約500万曲を目指すとしているが、現状ではApple Musicの1/10にも満たないため、差は歴然だ。一方で、邦楽のラインアップは国産勢に軍配があがるので、そこを重視するリスナーにはApple Musicのアピール度は低くなるだろう。
アプリには、いくつかの問題点がある。たとえば、ストリーム再生中にアプリの切り替えを行ったり、通知が入るとノイズが発生する症状は、結構気になるところだ。デバイスはiPhone 6 Plusで、処理能力的にも問題ないと思われるので、メモリ管理面でなにか不具合が発生しているのかもしれない。
また、プレイリストモードで使っているときに、いくつか別アプリを利用してからミュージックアプリに戻ると、ライブラリ表示に切り替わることが結構ある。これもワークメモリの関係で発生するようだが、つねに以前のモードを覚えておくか、起動時の画面をユーザー設定できるようにするべきだろう。
そして、旧バージョンのミュージックアプリでは、iPhoneを横向きにするとアルバムカバーが並ぶ表示に切り替わったが、新バージョンではポートレート表示のみで固定されている。これでは、自動車のダッシュボードなどに取り付けて地図アプリと併用するような場合に使いにくい(停車中にしか操作しないとしてもだ)。
実際のところ、以前のバージョンでも横向き時のアルバムカバー画面は表示のみで自由に操作できるわけではなく、プレイリストはSiriでも呼び出せるため、Appleも割り切ってそのようにした可能性もある。それでも、iPhone 6以降はスクリーンサイズ自体が大きくなり、純正アプリも横画面への対応が進んだので、Apple Musicにもフル機能で使えるランドスケープレイアウトが用意されてもよいと感じた。
ちなみに、細かいことだが、Spotlightでミュージックアプリを検索する場合、英語つづりの“Music”では結果に表示されない。実際には、写真アプリやマップアプリも“Photo”や“Map”では検索できないので、仕様といえばそれまでだ。しかし、高機能検索を標榜するSpotlightなのだから、この程度の言語の違いは吸収してしかるべきではないだろうか。
いずれにしても、利用開始から3カ月は無料の試用期間となるので、とりあえず使ってみて自分の嗜好や利用形態に合うかどうかを確かめてみることをオススメしたい。
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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。