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コラム

2016.5.6 FRI

アップルの減収減益は想定内かつ来期も続く

アップルの減収減益は想定内かつ来期も続く

2016年5月6日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)


4月26日に発表された2016年1-3月期の決算で、アップルは13年ぶりの減収減益を記録した。具体的には、506億ドルの売上高と39.4%の売上総利益率(=企業の最も基本となる利益の目安)を前年同期と比較すれば、それぞれ580億ドルと40.8%から下落している。

これを受けて、メディア報道には「神話崩壊」や「深刻」、「まさかの減益」といった文字が目立ち、同社の将来を憂う声もある。

もちろん数字は正直だ。筆者もアップルの成長が踊り場にさしかかったことは否定しない。だが、1つ指摘しておきたいのは、同社が前四半期(2015年10-12月期)の決算発表時に、2016年1-3月期の予測として、500億~530億ドルの売上高と39~39.5%の売上総利益率を挙げていた点である。

つまり、今回発表された実際の数字はどちらもアップルが3ヶ月前に予想した数値内に収まっており、その意味で、減収減益は不測の事態の結果ではない。これは、他社でときどき見られるような、経営陣も予想しえなかった販売不振とか、黒字のはずが赤字に転落した事例とは、まったく性質が異なっている。

蓋を開けてみたら減収減益だったのではなく、経営陣にとっては予想通りの業績なのだ。加えて、売り上げが落ちたとはいえ実際に1兆円以上もの利益を上げ、現金と有価証券を併せて2,330億ドル=約26兆円の資金が手元にあることにかわりはない。

クック体制下のアップルは冷静に財務状況を分析し、経営の見通しを立ててきた。今回の決算発表の中にも、次の四半期に関して410億~430億ドルの売上高と37.5~38%の売上総利益率と一層厳しい数字を挙げて、投資家やメディアが過剰な期待を持たぬよう留意している。

来期は、今回の決算には含まれなかったiPhone SEや9.7インチのiPad Proが売り上げに貢献するかもしれず、その結果、もし売り上げや利益率がアップル自身の予測を超えたとしても、再び減収減益にフォーカスしたセンセーショナルな記事で溢れかえるのだろう。

今回の減収・減益を、ティム・クックらアップルの経営陣が3ヶ月前に把握していたということは、それ以前から対策が練られていると考えるべきだ。だが、それでも来期の予測も控えめなのは、それらの対策が実効性を伴うまで時間がかかることがわかっているためと思われる。

対策の中には、当然、Apple Watch 2やiPhone 7も含まれるはずだが、もし仕様上の選択肢が複数存在するのであれば、安全策ではなく積極的にリスクをとる方向を選ぶべきだ。それこそが、アップルをアップルたらしめる行動であり、実際にそれを行うだけの資金的な余裕もあるのだから。



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大谷和利氏近影

[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。

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