月刊MdN特別付録「クリエイターズカレンダー 2012」連動企画 アーティスト アートディレクター / グラフィックデザイナー BLACK BELT JONES DCの作品世界を具現化するIntuos4
月刊MdN2012年1月号の特別付録「クリエイターズカレンダー 2012」に登場するクリエイターのひとり、BLACK BELT JONES DCの近藤幸二郎さんは、CDジャケットやアパレル、ライブペイントなど幅広いデザインワークを展開している。その作品制作の際に、常に手元に置いて使用しているのがペンタブレット「Intuos4」だ。切り抜き写真を多用した複雑なコラージュが持ち味のひとつになっている近藤さんに、制作工程でIntuos4をどのように活用しているか伺った。
- CDジャケット、アパレルブランドとのコラボレート、店舗壁面画制作(ウォールペイント)、ライブペイントなど、グラフィックを中心としたデザインワークを多岐に展開。2006年、デザイン事務所「BLACK BELT JONES DC」設立。アパレルブランド「reversal.dogi.design.works(rvddw)」の立ち上げから参加し、以降同ブランドにおけるすべての企画/デザイン、アートディレクションを手掛けている。
CDジャケットやアパレルブランドとのコラボレート作品を中心として、多岐にわたるデザインワークを展開しているBLACK BELT JONES DC代表の近藤幸二郎さん。音楽や格闘技をテーマにしたソウルフルな作品や、幾重にもモチーフを重ねた複雑なコラージュ作品などで、若い世代から大きな注目を集めている。
- 【図1】
さまざまな要素を組み合わせていくコラージュ作品では、レイヤーの数も多くなりがち。しかしIntuos4を使えばレイヤーの切り替えも簡単に行える。手順は、タッチホイールの真ん中にある切り替えボタンで「レイヤー切り替え」を選び、ホイールをくるくるなぞるだけでOKだ - 【図2】
Photoshopの“レベル補正...”で画像の明るさを一時的に上げ、モチーフのエッジ部分を見やすくしたところ。画像は荒れるが、暗い部分が見やすいため作業しやすくなる。近藤さんは、この状態にした上でペンツールを使いパスを描いていくとのこと - 【図3】
近藤さんがIntuos 4を使って制作した作品のひとつ。rvddwでは作品にも格闘技をモチーフとして取り入れたデザインも多く、このオーバーヘッドバンド式ヘッドフォンもそのひとつで、バンド部分に道着の生地を使用しているとのこと
そんな近藤さんがPhotoshopで作品を制作する際に多用する
ツールが、ペンツールと自動選択ツール、スタンプツールだという。
「コラージュの場合、どうしてもレイヤーが増えてしまいますから、できるだけ単純な方法を使ってデータを軽くするようにしています。たとえば、レイヤーマスクを使うと切り抜き後の画像でもあとから修正できるというメリットがありますが、元画像をマスクして隠しているだけなのでデータが重くなりがち。だから私の場合、レイヤーマスクはほとんど使いません。ペンツールや自動選択ツールで切り抜いたものをコピー&ペーストしたり、スタンプツールで複製したりして仕上げていきます。その際、レイヤーの切り替えも多用しますが、Intuos4の場合はタッチホイールを操作するだけで手早く目的のレイヤーを選べるのがいいですね【図1】」
レイヤーマスクのような機能を使わない代わり、後から修正する必要がないように切り抜き時には細心の注意を払うそうだ。
「複雑な形状のモチーフはペンツールで切り抜くことが多いんですが、エッジ部分を見やすくするために“レベル補正...”などを使って一時的に画像の明るさを上げたあと【図2】、モチーフのエッジに沿ってパスを描いていくようにしています。その際活躍するのがIntuos4です。アンカーポイントやハンドルをドラッグしてパスの形を整えていくのは結構骨の折れる作業ですが、Intuos4ならペンで直感的にサクサクッとパスを描いていけます【図3】」
また、長時間の作業の連続による手首の負担軽減は近藤さんにとって重要課題のひとつだったという。
「マウスの場合、手首から先だけを動かすようにして操作するので、大量の切り抜き作業ではとくに負担がかかりやすいんですね。私は特にこの作業の比率が多いので、少しでも手首に負担のかからない方法がないかと考えていたんです。Intuos4は、友人の事務所に遊びに行ったときに作品制作で使っているのを見て『この動きなら楽そう』だと思って購入しました。実際、マウスと違って手首をつけて指先で操作できるので、切り抜き作業時に溜まりがちな手首の疲労はかなり軽減されましたよ」
- ■「クリエイターズカレンダー 2012」に掲載されたBLACK BELT JONES DCの作品
近藤さんが「クリエイターズカレンダー 2012」に提供したのは、スピーカーなどの音楽に関連するモチーフが合成されたコラージュ作品だ。楽器や音楽機材以外にも手や青空、樹木などさまざまな要素が複雑に絡み合って重層感を醸し出している。
「音が聞こえてくるようなグラフィックをつくりたいというのが出発点でした。そこでスピーカーなどのモチーフを使って音を視覚化し、人の手などの要素を加えて音が前面に出てくるような躍動感を表現したんです。ただビジュアル要素が機械中心だと冷たい印象になってしまいがちなので、空や樹木などをプラスして作品に温かみを持たせると同時に奥行き感をつけています」
今回のカレンダー作品制作の際に、もうひとつポイントとなったのが「幾何学的な形」だという。
「アナログレコードをイメージさせる丸とか、三角形や四角形などの幾何学的な形を機材の写真などで表現していったんです。これは、今回の作品だけでなく、他の作品でもキーポイントになることが多いですね」
近藤さんが、さまざまなモチーフでビジュアルを組み立てていくコラージュのような作品をつくるようになったのは、ライブペイントがひとつのきっかけだったそうだ。
「ライブペイントをやるようになってからステンシルで文字や記号を複写していくような手法を好んで使うようになったんです。それが現在の作風につながっているといえますね」
作品を制作する上で近藤さんが大切にしているもののひとつに「着地点」があるという。多彩な要素を組み合わせていくコラージュ作品では、とくに重要になるとのこと。
「最初のテーマがぼやけないよう、常に気をつけています。作品によっては勢いでいけるところまでいってしまうこともあるんですが、ある程度までつくったあとで寝かせたり、数パターンつくったりして、バランスを見ながら仕上げるようにしています。もっとも、テーマにうまくはまれば、最初考えていた方向性とは異なる形に着地することもありますけどね」
- (1)「複雑なモチーフをきれいに切り抜ける、なめらかで高精度なペンストロークが魅力的」
- (2)「手首に負担がかかりにくく、切り抜き作業時の疲労軽減に役立つ点」
Intuos4に標準で付属するペンには、サイドスイッチがふたつ装備されている。このサイドスイッチは設定画面で割り当てる機能を自由にカスタマイズすることが可能。またペンスタンドにはペン先の替え芯が内蔵されており、好みや用途に合わせて自由に交換することができる。標準で付属される替え芯は、なめらかな書き味が特徴の標準ポリアセタール芯、抵抗感のある硬筆の書き味を再現したハードフェルト芯、粘りのある書き味のエラストマー芯、バネによってブラシのような感触を実現したストローク芯の計4種類。このほか製品には、ペンに標準で取り付けられている標準径ラバーグリップと交換して使える太径ラバーグリップが同梱されており、用途や好みに応じて使い分けが可能だ。
- メーカー名
- ワコム
- 機種
- Intuos4
- 対応OS
- Small 22,800円 Medium 32,800円 Large 42,800円(ワコムストア価格)
- URL
- https://intuos.jp/