デザイン・クリエイティブ目線で語る
ソーシャルアプリ制作の裏側
第3回 グリー株式会社「探検ドリランド」(1/2)
2011年7月31日から大幅なリニューアルを行い、多くのユーザーを獲得している「探検ドリランド」。カードゲームの先駆けともいえる「探検ドリランド」は、スマートフォン化が進む中でどのように企画・運営されているのだろうか。グリーでのゲーム開発・制作の裏側をシニアマネージャーの千田朋晴氏、アートディレクターのタナカウサギ氏、デザイナーの高泰俊氏に、ソーシャルゲームづくりのやりがいやデザインへのこだわりをうかがった。
「探検ドリランド」とは
ハンターカードを使って、財宝を発掘したり、モンスターとバトルしながら探検を行い、キングモンスターを倒して次のステージを目指すカードゲーム。ゲームを原作としたテレビアニメ(テレビ東京系列6局ネット 毎週土曜日夜11時30分より)やコミック(ジャンプスクエアおよびジャンプSQ.19)など、メディアミックスで展開されていることにも注目が集まっている。また、ゲームは日本語版だけでなく、米国や欧州向けの英語版も提供されている。
URL http://product.gree.net/jp/ja/apps/98/
Interview 1/2
ゲーム内の1イベントから
新しく生まれ変わった探検ドリランド
「探検ドリランド」の制作チーム。デザイナーの高氏(左)、アートディレクターのタナカ氏(中)、シニアマネージャーの千田氏(右) |
「イベントを行う場合は、しっかりとKPI(Key Performance Indicators)を設定し、そのイベントの効果を判断しています。悪いところがあれば改善し、よい部分はKPIを上げ切って集中投下することがグリーのやり方です」と千田氏は説明する。さまざまなイベントを仕掛けながら、どのようなイベントがユーザーに喜ばれるかを判断し、試行錯誤していく中でカードモデルのゲームに注力してきたというのだ。「当時は、現在ほどカードモデルのゲームは多くありませんでしたが、ミニゲームのひとつとしてトレジャーハンターのイベントを期間限定で行い、それを改善していくことで、現在の探検ドリランドができあがっていきました」(千田氏)
千田氏は、「探検ドリランド」以外の他のゲームや、新規プロダクトの立ち上げなど、いくつかのカードモデルのゲームを担当しているという。その中で、特に注意している点をうかがうと「カードの価値のコントロールをしっかりと行うこと」という答えが返ってきた。「カードのレアリティ設定やクリエイティブのつくり方には、こだわっています。上級でレアなカードがそれだとハッキリとわかるように、キャラクターのクリエイテイブだけでなく、カード枠やデザイン、背景にいたるまで、ノーマルカードとレアカードにはっきり違いを付けています。また、ゲーム内での使われ方やパラメーターの設定などもきちんと行って、お客様に良いものは良いものとして伝わるようにしていますね」(千田氏)
グリー株式会社 メディア事業本部 Japan第1スタジオ 第3企画グループ シニアマネージャー 千田 朋晴氏 |
「探検ドリランド」では、定期的に「キング祭り」というイベントが開催されている。過去に出てきたキングモンスターがオールスターで出てくるイベントで、ユーザーの反応が非常によいイベントのひとつだ。このようなイベント施策も、チームで企画し、KPIを定めて実行し、数値を分析していくことで改善や改修を行うというような、PDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)をスピードを上げて回していく体制が整っていることで、よりよいイベントとなっているといってもよいだろう。
GREE Platformで
米国や欧州にも配信
毎月1日0時に「新ハンター」9体がガチャに登場。目玉となる最高レアリティのSSレア3体は特に人気が高い(クリックで拡大) |
「英語版の探検ドリランドを制作するにあたっては、単純に英語にするだけでなく、ネイティブの社員がチェックし、表現やニュアンスを伝えるようにすることに苦労しましたね」と千田氏は話す。一方で、デザイン面に関しては大幅な変更を行っていないという。「デフォルメされた日本的なキャラクターなので、海外での反応は気になっていました。E3(Electronic Entertainment Expo)などのイベントで意見を聞くと、かわいいと好評で、世界に対しても価値を伝えられるクリエイティブであると感じたため、細かな調整は行っても大幅なデザイン変更は行っていません」と話す千田氏。
チーム全体で施策を考え、数値をベースに分析することでよりよいゲームを目指すことがグリーのゲーム作りの基本 |
(取材・文・撮影:野本幹彦)
>>> 後編に続く