「スマートフォン市場のこれから注目するべき点──後編」

「スマートフォン市場のこれから注目するべき点──後編」
2008年11月10日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
『レッドクリフ』さながらの覇権争い
日本では苦戦を報じられることが多いiPhone 3Gだが、2008年第3四半期において、Appleを世界第2位のスマートフォンメーカーへと押し上げた。
市場調査会社のCanalysが、米国時間11月6日に発表したスマートフォン市場に関する調査報告によると、スマートフォン市場は順調に拡大を続けており、2008年第3四半期の総出荷台数は前年度の第3四半期の28%増となった。出荷台数は実に3990万台に達している。
前回、iPhoneは、Blackberryに代表される従来のスマートフォンが犠牲にしてきた「使い勝手」と「エンターテインメント性」を備えたニューウェーブであると書いた。さらにいうならば、iPhoneの第二世代機であるiPhone 3Gは、MS Exchange対応やVPNサポートなどの法人ニーズに応えた、Blackberryキラーだった。そしてiPhone 3GはAppleの期待に正しく応え、Blackberryを擁するResearch In Motion(RIM)から市場2位の座を奪うことに成功したのである。iPhoneは出荷台数690万台で17.3%の市場シェアを得た。もちろんRIMとAppleの戦いはまだ始まったばかりであるし、市場の40%近くを押さえている圧倒的な王者は依然としてNokiaであり、その市場争いはあたかも今話題の映画『レッドクリフ』さながらの状態だ(説明するとNokiaが曹操率いる魏、Appleが劉備三兄弟の蜀、RIMが呉というところか)。

iPhone 3G
ケータイを凌駕するOSの存在感
ところで、スマートフォンが明らかに従来のケータイと異なるといえる特徴のひとつは、OSの存在感がケータイとは比べ物にならないという点だ。使っているケータイのOSがなんであるかを意識する人はほとんどいないが、スマートフォンはSymbian、Windows Mobile、iPhone OS(Mac OS X)、Android、Linuxなど、使っている機種によってOSの存在をいやでも意識する。つまり、スマートフォンはやはりコンピュータであり、ソフトウェアによってコントロールされるガジェットなのである。
このことは注目すべき重要なポイントだ。これまでスマートフォン市場において(いや、海外のケータイ市場において)最大のシェアを誇っていたSymbianが、新興勢力であるBlackBerry OSやiPhone OS、Android、そしてもちろんMSのWindows Mobileらにシェアを削られつつあり、群雄割拠の状況になりつつある。だからこそ、各社はスマートフォンという、サイズや省電力などのさまざまな制約のある枠の中でOSの進化にしのぎを削り始めている。
コンピューティング市場の勢力図を大きく変える可能性
ところが、前回ネットBookとスマートフォンはユーザーを奪い合う可能性が高いと書いたが、そのネットBookに搭載されているOSはいまだにほとんどがWindows XP、もしくはLinuxだ。VistaはネットBookの脆弱な環境では動かないことが多く敬遠される。つまり、ネットBookというウルトラモバイルのローエンド市場ではOSの進化が滞っているのである。
この状況を重くみたMicrosoftは次期OSであるWindows 7をネットBook上でも動くことを保証したが、実際にはネットBookが5万円以下というマーケティング上の制約があるため、Windows 7のような“高価”なOSを搭載することは困難になるだろう。Appleがウルトラモバイルのハイエンド市場に絞り込んでいるのはまさしくこのためだし、GoogleのAndroidは近いうちにネットBook用のOSとしても配布されるようになるかもしれない。

GoogleのAndroid端末
(2008年6月横浜で行われた「Google Developer Day 2008」でのデモより)
スマートフォン市場が伸びれば伸びるほど、現時点ではMicrosoftが追いつめられていく可能性は高い。また、SymbianのようなPCをサポートしないモバイル専用OSもまた市場を奪われ続けると思われる。スマートフォン市場は、その意味でPCを含む全コンピューティングの市場の勢力図を大きく変える可能性をもった、最も重要な市場なのである。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



