「覇権争いが始まったオンライン個人認証サービス──後編」

「覇権争いが始まったオンライン個人認証サービス──後編」
2008年12月16日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
優勢に立つFacebook
「オンラインの個人認証サービス」というフィールドで、現在Google、Facebook、MySpaceの三者が三つどもえでしのぎを削っていると前回述べたが、その中でもGoogleとFacebookの戦いの激しさには目を見張るものがある。
Googleのアプローチは、個人認証としてはオープンスタンダードといえるOpenID、OpenSocial、OAuthなどの既存の技術との互換性を担保しているものだ。ひとつのサービスのIDで他のソーシャルサイトにログインし、そこでの日記や行動履歴などの情報を持ち出して、別のサイトに掲示することを可能にする、非常にオープンなスタンスをとっている。
これに対してFacebookのアプローチは比較的クローズドであり、独自規格により、むしろFacebookへのユーザーの囲い込み戦略の一環といえなくもない。しかし、Googleに比べて既に非常に詳細なる個人情報を登録してくれている膨大なユーザー数をかかえるFacebookは、Googleに比べて遥かに優位なポジションにあることはいうまでもない。

個人情報登録の巧みな仕掛けをもつFacebook
2008年12月1日に東京・渋谷で開催されたGoogle自身の説明会によると、日本においてもGmailのアクティブユーザー数は前年度比で80%以上増加しており、世界的に見てもこの傾向は顕著になっている。世界の大手ネット企業はこぞって登録ユーザー数を増やすことにやっきになっており、現在のFacebookに対するビハインドを取り返すことにGoogle自身が必死になっているのは間違いがない。

Gmailもユーザー数が急増している
共通IDの提供者が社会インフラを制す
どのサイトでも使えるIDを発行し、ネットユーザーたちのプロフィールを常に把握することができれば、パーソナライズド広告や詳細なマーケティングを行ううえで、誰よりも優位に立てる。さらに、いまやデジタル家電や自動車・鉄道などの交通手段など、さまざまな社会インフラとインターネットとの融合が、そう遠くない未来に起こりえることは誰の目にも明らかだ。そのときの共通IDの提供者となることが、GoogleにしてもFacebookにしても、現在以上の成長を実現するためには必須の戦略になってきているのである。
この状況に対してあまりに日本国内のネット企業は無頓着であり、mixiがかろうじてFacebookに近い戦略をとりつつあるが、キャッチアップは絶望的だ。日本のIT業界は、エンタープライズ領域に閉じるか、あるいはハードウエア市場に特化するか、ともかくなんらかの明確な戦略を打ち立てないことには、行き場をなくしていくに違いない。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



