フライヤーのレイアウトほか3冊
周りを驚かせるようなカッコいいアイデアやデザインは、一朝一夕で生まれるものではありません。情報や技術を取り入れつつ、日々感性を磨きながら、実践(現場)で鍛えていく。インプットとアウトプットのサイクルが大切。多忙なデザイナーのインプットを助けるべく、MdN Interactive編集部がオススメ本を紹介していくコーナーです。
目を奪い、手に取られる“チラシ”ができるまで
『フライヤーのレイアウト』
オブスキュアインク/ビー・エヌ・エヌ新社2,500円+税
副題は「映画・展覧会・演劇……目立つチラシのデザインテクニック」。2007年7月に刊行された名著『文字組みとレイアウト』の続編となる本書は、国内における1枚モノの宣伝アイテムを集積し、詳細な解説を施すことによってフライヤー文化の豊潤さを物語る一冊だ。フライヤーというと90年代以降、クラブ・カルチャーの流れから語られることが多い“メディア”だったが、現在、様々なジャンルにおいてグラフィックデザイナーが腕を競い合う舞台ともなった。大量印刷、不特定多数の受け手への頒布(=チラシ)から、ターゲットを決め込んだ「集中的かつ効果的」なアピールの手段へと変わっていったのと同時に、デザインのこだわりや用紙/印刷技術の差異化が進み、そこにコレクティブな要素も加わった。本書はそうした事例、およそ50を俎上に、表面のレイアウトポイントや裏面の設計を分析。いかに目を奪い、手に取られるフライヤーが作られるかを論じる。同趣旨のフライヤー本も複数存在するが、その多くが単なるカタログとして機能しているのに比べ、微に入り細をうがつ編集も好感。
マンガ技法でデザインを彩ろう
『マンガライン』
SLOW inc./ワークスコーポレーション3,500円+税
海外における日本のマンガ・カルチャー浸透が華やかに伝えられる昨今、国内においても広告や文芸書籍の装幀などに“マンガ技法”が使われているケースは多い。手塚治虫に始まり、石ノ森章太郎や藤子不二雄らが育んだマンガ独自の“文法”は、やがて少女マンガの世界で心象描写に厚い層を築き、今年逝去した赤塚不二夫に至ってはキャラクターとフキダシを逆転させるなどアバンギャルドな表現も生み出した。本書はそうした礎のもとにフキダシ/背景/擬音文字といった“マンガライク”なデザインやオリジナルフォントなど、全461点のロイヤリティフリー素材を集めた一冊だ。原画素材を制作したのは本書の企画制作にあたったSLOW inc.と漫画家の藤井みどり。ゲスト・クリエイターにenamel./Shu-Thang Grafix/白根ゆたんぽ/鈴木麻子/大日本タイポ組合/田中圭一/針谷健二郎/Maniackers Design/桃吐マキル/師岡とおるが参加。様々なデザインワークにすぐ使えるツール集と同時に“マンガ技法”の先人たちへのリスペクトも感じられよう。
書き下ろし小説+撮り下ろし写真による奇才コラボ
『GOTH モリノヨル』
乙一×新津保建秀/角川書店1,600円+税
作家・乙一の名を世に広めた『GOTH リストカット事件』刊行から6年。現在公開中の映画版の試写を観てインスピレーションを受けた著者というが、急遽“後日談”となる新作小説を書き下ろした。主人公は「ありえない確率で殺人者に出会い、100%の確率で愛されてしまう」特異な才能を持つ森野夜──。彼が足を踏み入れる妖しくも甘美な幻想世界を、今回共著の形でビジュアル表現するのが写真家の新津保建秀だ。ファッションや広告の分野において透明感あふれる清廉な気配を放ってきた彼が、近年密かにこだわってきたテーマと乙一の新作が合致。映画版でヒロインを演じた高梨臨をモデルに、これまでになく深淵なフェチズムあふれる写真を披露している。また、本書のアートディレクションはGRAPHの北川一成。シンプルかつスタンダードなデザインが二人の奇才を繋ぐ。また今回のコラボレーションをモチーフに、新津保と北川のユニット「ヒント日」による展覧会『見えない視線』も目黒クラスカ内のギャラリー「Gallery & Shop DO」にて開催中(2009年2月7日まで)。詳細はコチラをご覧ください。
カオスの根っこはストリートにあり!
『渋谷系グラフィック素材集』
オイルショックデザインズ/エムディエヌコーポレーション2,500円+税
なにをもって“渋谷系”と位置づけるのか……世代やライフスタイルによって解釈が異なる時代となった。80年代末から90年代初頭の“第一期”は、フリッパーズ・ギターやオリジナル・ラヴといったアーティストを核にした音楽ベースの流行だった。同時にセンター街にたむろするチーマーの存在もあったが、総じてコンサバなファッションや50〜60年代への回帰(&憧憬)が感じられる“リ・コンストラクトな時代”であったように思う。その後、渋谷はヤマンバやらギャル男やらワケわかめな人種が存在感を放つ“第二期”へと進化していくのだが、そのコンフュージョンっぷりが「マルキュー」に集約。サーフありヒッピーあり、アフロコンシャスありグラマラスあり……といったカオスな展開に“第一期”を過ごしたオジサン&オバサン(失礼!)は目もくらむ。しかし、時代は移れど“渋谷系”の根っこは「ストリートにあり!」という前提を、本書はデザイン素材集という形で突きつける。ギャル系からカワイイ系、スケーター・ライクなグラフィティからハードコア、そしてヒップホップなクラブ系まで、リアリティあふれるグラフィックスを400点以上収録。あなたのデザインに、いつでもどこでも“渋谷系”が躍ってくれるだろう。
(文・増渕俊之)
(文・増渕俊之)
(更新日:2008年12月26日)




