「新たなインターネット広告手法の是非を問う─2」 by. 小川 浩



「新たなインターネット広告手法の是非を問う─2」
2009年11月16日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)


サイト、ページへの広告からコンテキストへの広告

インターネット広告はYahoo!に代表されるポータルへのバナー広告掲載から始まったと言っていい。インターネット広告は、最初はページあるいはサイトという、静的なメタファに対する広告として始まった。これは、人通りの多い交差点に置かれたビルボードに広告を掲載するのと同じ感覚だ。つまり、サイトやページはビルボードであり、トラフィックという交通量の多寡で人気が決まり、ビルボードへの広告金額が上下する。

現在のインターネット広告業界の頂点にいるのがGoogleであることは言うまでもなく、そのGoogleの高収益を支えているのが彼らの検索エンジンであることに異論を挟むものはいないと思うが、彼らの広告はWebサイトや個々のページに対するものではないことに考えを及ぼすことができる者は少ない。

Google(またはオーバチュアも同じだ)の提供する広告サービスは、サイトやページに対するものではなく、あくまで検索キーワードに対する広告であり、あるいはサイトやページに書かれたテキストのコンテキスト(内容)そのものとのマッチングによる広告だ。




GoogleのGmailでは、メール文中のキーワードに応じたテキスト広告が表示される



ネットユーザーの反感を買い続けたネット広告の歴史

Yahoo!が初めてサイトにバナーを掲載したとき、多くのインターネットユーザーからバッシングを受けたという。インターネットは公共のサービスであり、そこに広告を出すとは何事か、というわけだ。

Googleがページランクを導入し、検索結果をページランクを軸としたアルゴリズムで整理し始めたとき、多くのWebマスターから苦情が来たという。自分たちのWebサイトの検索結果順位に不満がある、というわけである。

そして、GoogleがGmailを広告付きで開始したときは、多くのメディアやユーザーがGoogleを邪悪扱いした。Gmailではメールの内容にマッチした広告を表示するが、これがGoogleがメールの中身を盗み見しているように感じたらしいのだ。

同じように、オーバチュアが初めてリスティング広告を発表したときも世界中が彼らをバッシングした。しかし、今では彼らとGoogleのおかげでお金を稼いでいるネットユーザーは多い。

このように、革新的なネット広告は常に、開始当初は多大なバッシングを受ける運命にあるようである。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



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