iPadはなぜ革命的なハードウエアなのか
2010年5月31日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
iPhone以前の“ケータイ”や携帯端末(BlackberryやWindows Mobileなどのスマートフォンも含む)は、固定電話をワイヤレスにしたことで電話を再定義したことはイノベーションだった。しかし、物理的なハードウエア(キーボードやテンキー)で制御されたハードウエアであり、その意味ではイノベーションは中途半端であった。
しかし、iPhoneは仮想的なキーボードのようなソフトウエアで制御されることで、それまでのケータイを時代遅れにした、まさに革新的なハードウエアだといえる。
iPadはまさしくiPhoneと同じだ。ノートPCが「持ち運びできるパソコン」として再定義されたコンピュータであっても、同じく物理的なハードウエアが制御するハードウエアであったのに対し、iPadはソフトウエアで制御されることで、それまでのPCを時代遅れにしてしまった。
ノートPC市場はここ数年、携帯性と低価格(5万円程度)を売り物にしたネットブックと、それ以外の高機能機(10万円以上の機種)に分化し、ネットブックは台湾勢とそれ以外の群雄割拠、高級機はほぼMacが独占するという状態だった。しかし、今後iPadは、ネットブックの市場を確実に浸食していくだろう。
米Apple社のスティーブ・ジョブズ氏がまちがいなくiPadを低価格PC市場のキラーマシンと考えている証拠は、シンプルなオフィススイートソフトである「iWorks」を最初から投入していることからもわかる。事実、筆者はいまiPadを使って原稿を書いている。
ジョブズは安いMacをつくるのではなく、5~7万円で買える新しいカテゴリのコンピュータをつくることで、ネットブック市場を完全に無力化しようとしているのである。
「iPad」
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。