Googleが手に入れたい“GrouponにあってGoogleにないもの”(前編)

Googleが手に入れたい“GrouponにあってGoogleにないもの”(前編)
2010年12月6日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Googleプレイス」とは、店舗などの場所に関する情報をまとめたページであると同時に、その情報を掲載したい企業や商業者側に与えられる情報アップロードサービスでもある。Googleプレイスに掲載されていれば、ネットのユーザーが検索したときに、その情報が検索結果に連動して表示されることになる。

たとえば地名で検索すれば、その地図のエリアにひもづけられた店舗情報が同時に掲載されるし、「鰻屋」のような具体的なジャンルで検索すれば、自分の位置にもっとも近い鰻屋のリストが掲載される(場所の特定は、Google Appsのアカウントをもっていることで自らロケーション情報をグーグル(株)に提供している。

米Google社のビジネスは、検索するという行為を使ってWebのトラフィックを生むことだ。そのトラフィックに広告を出してもらうことで対価を得ている。逆に言えば、最近の米Google社は、自身の巨大な時価総額と収益を維持するために、検索起点のトラフィックを減らすことができない。検索エンジンは、“イコールトラフィックエンジン”であり、このエンジンを失速させることは許されないのである。

しかし、すでにインターネット上のトラフィックエンジンとしての地位がFacebookに抜かれ、ソーシャルメディアの台頭の前に検索エンジンの重要性が相対的に下がっていることを彼らは熟知している。米Microsoft社のOSであるWindowsが、Webとブラウザに対して相対的に価値を減じたり、米Apple社がiPhoneを投じてPCインターネットがモバイルインターネットに対する相対的な重要性を下げたことと似ている。その結果米Microsoft社に代ってITの王者になったのがほかならぬ米Google社だからだ。

だからこそ米Google社は、YouTubeやBloggers.com、FeedBurnerなど、検索以外のトラフィックエンジン企業の買収を試みてきたのだ。

そして、今回彼らが目を付けたのがGrouponだった。

米Groupon社は破格の安売りクーポン情報を地域別に提供し、Web上でのトラフィックではなく、実際の店舗への送客というリアルなトラフィックを生むことで対価を得る。米Google社に、特にGoogleプレイスに足りないのはこれだ。彼らは60億ドルとも言われる巨大な金額を提示し、米Groupon社に決断を迫ったのである。(後編に続く


Googleプレイス



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。




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