Googleが手に入れたい“GrouponにあってGoogleにないもの”(後編)

Googleが手に入れたい“GrouponにあってGoogleにないもの”(後編)
2010年12月13日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

※本記事は「Googleが手に入れたい“GrouponにあってGoogleにないもの”(前編)」の続きになります。前編をお読みでない方は前編からお読みください。

Googleプレイス」とは、店舗などの場所に関する情報をまとめたページであると同時に、その情報を掲載したい企業や商業者側に与えられる情報アップロードサービスだ。

このサービスにおける米Google社のビジネスモデルは、これまでのビジネスモデルとは大きく異なる点がある。従来の彼らの広告がクライアントのWebサイトへのトラフィックを生むことであり、あくまでWebからWebのオンライン送客トラフィックであった。しかしGoogleプレイスにおいては、実際の店舗に消費者の足を運ばせるリアルなトラフィックの発生が不可欠になっていく。つまり、Webからリアル店舗への、オンラインからオフライン(最近これを“O2O”(=Online to Offline)と呼ぶようだ)の送客トラフィックでなければならない、ということだ。

このO2Oトラフィックの発生源として現在世界中で台風の目となったのが「Groupon」なのだ。だから米Google社は米Groupon社を欲しがり、買収交渉を行ってきた、というわけだ。

しかし、Grouponは、少なくとも2010年中は自力での更なる成長を目指すことを選択した。IPO(新規株式公開:Initial Public Offering)を望んでいるとも言われている。米Groupon社は、地域別に一日一品のフラッシュマーケティングを仕掛けるビジネスモデルで成長した。地域ごとの地場産業の集客エンジンとして活用されることで急成長を遂げたベンチャーだ。

米Google社とすれば、実のところ「Googleマップ」という非常に強力な地図データベースを有しており、Grouponが例えばサンフランシスコ、サンタマルタ、サンタクララ、というように比較的おおざっぱなエリアセグメントを行っているのに対して、より緻密(ちみつ)な位置情報にひもづく店舗情報を消費者に与えることができる。Googleプレイスとはそういう代物なのだ。


筆者はオガワカズヒロ名義の著書『ソーシャルメディア維新』(マイコミ新書)において、第三章をまるまるこのGroupon型ビジネスの解説に割いているが、本書の中で位置情報ビジネスにおける米Google社の優位性を指摘している。その確信は揺るがないが、位置情報ビジネスをフラッシュマーケティングに結び付け、O2Oのトラフィックのマネタイズをはかることに関しては、当の米Google社が若干自信がなかったようだ(苦笑)。彼らは位置情報による緻密なオンライン送客トラフィックを生むことまでには絶対の実績を持っているが、それをO2Oの送客トラフィックに変えることについては自力では不十分と考えたらしい。だから米Groupon社に目を付けたのだ。

地図情報にさまざまなソーシャル型の情報を埋め込むことについては米Foursquare社や米Gowalla社などの位置情報ゲームベンチャーが先行し、その後米Facebook社らも参入したが、この分野では米Google社は絶対に強い。同社にとってのラストワンマイルは実際の店舗に消費者の足を向けさせる何か、だ。今後も自力でそれを作るか、米Groupon社あるいは類似企業へのアプローチを続けるか、Googleの迷いは続くだろう。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。




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