Facebookのビジネスでもっとも重要な「ファンページ」の秘密(後編)

Facebookのビジネスでもっとも重要な「ファンページ」の秘密(後編)
2010年12月27日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

※本記事は「Facebookのビジネスでもっとも重要な「ファンページ」の秘密(前編)」のつづきになります。前編をお読みでない方は、前編からお読みください。

Facebookの「ファンページ」とは、ひとことで言えばTwitterのようなWebページをFacebook上につくることができるサービスだ。Twitterのような、といってもわかりづらいだろうが、以下のような特徴をもつサイトだといえる。


Facebook会員全員が無条件に見られる Facebook会員でなくても閲覧可能で、Googleなどの検索エンジンでも探し出せる Facebookの会員は、「いいね!ボタン(英語ではLikeボタン)」と呼ばれるボタンをクリックするだけでファン(購読者)になれる 企業であっても利用は無料 「facebook.com/ファンページ名」のように、Facebook上に独自のドメインをもてる

Twitterで企業がページを持つ場合、ほかのユーザーがその企業のページをフォローするには、フォローボタンをクリックすればいい。相手の承認を待つ必要がない。

Facebookのファンページはこれと同じで、いいね!ボタンをクリックしてファンになるのに相手の承認は必要ない。Facebookは基本的に会員同士が友達関係になるために相互の合意が必要であり、友達になりたければ相手の承認が要る。ファンページはこのプロセスを省いている。さらに、Facebookの会員でなくてもページの内容を閲覧できるように、インターネット上にコンテンツを公開することができる。公開されている以上、検索の対象にもなるから、GoogleやBingなどの検索エンジンで検索することができる。またTwitter同様に自社のブランド名に合わせたドメインをつくることも可能だ。

だからTwitterにアカウントを取得するのと同じくらいの気軽さで、企業はFacebookのファンページ設置に踏み切ることができるわけだ。たとえば、2010年12月25日時点で、世界最大の清涼飲料水メーカーの米Coca-Cola社が設置したファンページは21,275,874名のファンを得ている。同じくコーヒーチェーン最大手の米Starbucks社のファンが18,951,199人。下着販売のVictoria's Secret社のファン数が10,788,400人だ。2010年8月時点での米国企業のソーシャルメディア利用状況を見ると、以下のようになっている。


メディア 利用中 1年以内に利用検討 Twitter 85% 11% Facebook 68% 26% 出典:KingFishMedia

採用に踏み切っているのは海外の企業だけではない。日本の企業でもファンページを続々と採用している。テレビ局のTBS((株)東京放送)は、報道局のファンページを始めとする複数のファンページを作成しているし、国内最大のファストファッションであるユニクロ((株)ファーストリテイリング)も、国内向け、欧米やアジア諸国別にとファンページを立ち上げている。


ファンページはTwitterのような気軽さとオープン性を持っているので、企業としては参入しやすいが、同時にTwitterほど消費者との直接的かつ双方向的なコミュニケーションを期待されていないことも参入障壁を低くしている大事な要因だ。

Twitterのように、読者である消費者側が対等に近い対話を期待しがちなメディアでは、カジュアルなコミュニケーションが求められるので、親密な関係を構築できる可能性があるが、その反面、炎上リスクも低くない。しかし、ファンページは、どちらかというと企業側からの情報提供に応じて、ファン同士がコメントを残していくという形になるので、企業からすれば従来型のWebサイトの運営に近い印象となる。

米国では国民の75%(約1.5億人)がFacebook会員であり、その10分の1程度のファン数を集められた企業がたくさん存在している。日本国内では、全体のFacebook利用者数が200万人程度であることから、米国のような巨大なファンページはまだまだ生まれようがないが、日本語だけでなく英語や中国語などでコンテンツを提供すれば、相当数のファンを獲得できる可能性はある。

つまり、Facebookのファンページを利用してのマーケティングは、グローバルなビジネス展開を考える企業にとっては現状では実効性の面で見ても今すぐ始めるべきサービスだが、日本語での日本国内向けの展開であれば、将来の布石として今から始めておいたほうがいいサービスである、と言えるだろう。







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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。




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