「グルーポンおせち問題」で露呈したGrouponの“焦り”

「グルーポンおせち問題」で露呈したGrouponの“焦り”
2011年1月11日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

米Groupon社は米国のベンチャー企業であり、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアのクチコミを活用して急成長したECサイト「Groupon」を運営する。特定地域の店舗などのお得商品を紹介し、ほしいと手を挙げた人数が一定数に達したら安く購入できるクーポンを手に入れられるというもの。つまり共同購入サービスであり、一日一品の紹介で非常に大人数の顧客にリーチすることから、「フラッシュマーケティング」と呼ばれている。米Groupon社は創業わずか2年で300億円とも言われる売上をあげており、ご存知の通り、日本にも進出している。

米Groupon社の日本法人であるグルーポン・ジャパン(株)はリクルート(とリクルートのフラッシュマーケティングサイトであるポンパレ)との激しい競合状態にあり、ここ数カ月、ヘビーローテーションでテレビCMをうっている。その甲斐あって、すでに相当の知名度を国内でも得ているし、毎月数十人とされるほど求人に力を入れつつ、全国的に営業活動を強化している。

ところが、2011年の新年早々、それが裏目に出た。
同社が販売した正月用のおせち料理セットが、「サンプルよりも極端に量が少ない」「臭いがする」など、購入者からの激しい苦情を受けて、消費者庁が調査に乗り出したのだ。もちろん同社が販売したのはクーポンであり、商品を提供したのは(株)外食文化研究所が運営するバードカフェという飲食店だ。だから商品の内容や衛生面についての調査を受けるのはあくまで出品者(グルーポン・ジャパン(株))である飲食店((株)外食文化研究所)側だ。

しかし、グルーポン・ジャパン(株)側も羊頭狗肉的な表示で消費者の購買を煽ったという意味で、責任は逃れられない。実際、グルーポン・ジャパン(株)は全額を購入者に返金する旨を発表している。実際彼らがこのような大きなミスを犯したのは、日本国内での市場争いのイニシアティブを一刻も早く奪おうと焦ったためだ。この分野でのリクルートとのマッチレースでの勝利を得るために、あまり出品者の品質や与信調査をしないままに商品の提供をしてしまったことによる。

Grouponのビジネスモデルは、リクルートのクーポンビジネスと真っ向から競合する。Grouponの強みは米国でつくり上げた強大な財務基盤であり、フラッシュマーケティングのパイオニアとしてのブランドだ。対するリクルートの強みは国内の強力な営業基盤であり、Grouponはこれに一刻も早く追いつこうと焦ったことによるミスが、今回の問題につながっている。

Grouponが今回の問題によってリクルートに大きく遅れを取るとは思えない。彼らのブランドはそれだけ強く、ミスを取り返せるだけの力を持っている。とはいえ、単純に商品をかき集めてくればいいだろうという安易な考えを捨て、慎重な態度を取らざるを得ないことはまちがいない。




グルーポンに掲載されたバードカフェおせち料理セットのページ



>>> 参照記事「グルーポン、バードカフェおせち問題の報告と今後の対応を公開」(2011/01/05)

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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