実践! WEBビジュアルデザイン 第9回「ビジネスを理解したデザインとは(前編)」

web creators/MdN Design Interactive共同企画 デザイン現場の目線で“リアルに語る”

実践! WEBビジュアルデザイン 第9回「ビジネスを理解したデザインとは(前編)」


2011年2月18日
TEXT:文=田口 亮((株)フォーデジット)

Webデザインに必要な知識や考え方は、普遍的なものもあれば、案件やクライアントによって変化する部分もある。PCやネットの技術やトレンドの変化によっても変わっていく。そのような知識や考え方、取り組み方を学び、考えるうえで大事なことは、現場で役に立つ、実践的でリアルな知識を得ることだ。

そこで本連載では、Webデザインの現場で役に立つ、実践的なWebビジュアルデザインのトピックや考え方、取り組み方について考えていく。





実際のプロジェクトでは、設計する人間(ディレクター)と視覚化する人間(デザイナー)が違うことがほとんど。両者の情報に差があると、かなりの割合でプロジェクトはうまく行かなくなる。情報の差は理解の差につながり、理解の差が開いたときにコミュニケーションが破綻する。デザインプロセスの中で、こういった理解の差が起こらないようにするために、あいまいなことを細分化し明確化していく。

今回は、現状ではあまり体系化されていないデザインプロセスの前段階の情報をどう理解するかについてまとめてみたい。




■クライアントはどんな企業なのだろうか
サイトの制作に入る前にディレクターやデザイナーはさまざまな情報を共有するが、前提となる企業情報や内部の組織・企業風土などについては言及されることはそれほど多くない。クライアントがどういう事業を展開しているのか、顧客に対してどういうコミュニケーションを築いて来たのか、その経緯やマーケットポジション、経営理念、組織などだ。これらを理解するには非常に時間のかかる作業だが、コーポレートサイトや採用サイトなどを手がける場合は特に、このプロセスが重要になってくる。デザインだけでなく仕事のプロセスや商品なども含めて、クライアントの意思決定がこれらに依存することが多いからだ。


また、制作者としてもどんな意思が存在するのかを理解することで、目指すべきゴールが明確になることも多い。クライアントとデザインが同じ方向を向くためにも、重要な情報だ。ディレクションやデザインのよりどころになることも多い。




【1】クライアントを理解しよう



ただし、それと同時に難しい側面もある。クライアントが遠く、直接の話ができなかったり、関係性が築けなかったりするケースだ。Webサイトは企業にとって重要な役割を果たすことが多いが、プロモーション全体の中での費用としては小額になることも多い。そういった位置づけの中で、クライアントと密なコミュニケーションや組織や意思を感じるのが難しい状況も多い。




■企業を理解すること
いくらコーポレートサイトの依頼であっても、Webサイトがまったくないという企業は少ないので、Webサイトの企業情報からクライアントの情報を見ることが可能だ。会社規模・所在地・沿革・組織図などのほか、代表のメッセージや理念も掲載していることが多い。上場企業であればIR資料などを見ることで情報が得られる。また、未上場であっても業界地図などで最低限の情報は入手しよう。



■企業のポジション
競合他社がどういった会社なのか、またはマーケット内でどんなポジションにいるのかを把握することもできる。業界何位なのか、シェアはどのぐらいなのかなど、公表されていない場合もできる限り情報を集めればそれなりに見えてくるものもある。



■事業内容
企業がビジネスを行っていくうえでの事業内容がどういうものなのか、というのは商品やサービスの内容から把握する。BtoBなのかBtoCなのか、クライアントの事業の顧客はどういった人たちなのか、その事業によってどういう価値を提供するのかを理解しよう。また、それに対する強みや機会、逆に弱みや脅威を把握することで、よりよいコミュニケーションを構築できる可能性がある。また、事業の内容はサイトのターゲットに直結してくるために、戦略策定フェーズで明文化されることもある。



■企業文化・風土
現状のサイト各種やパンフレット、CIなどの書類も集めて目を通すだけで、どういった意思が存在するのかを想定することができる。社員によるブログなどがある場合は雰囲気も感じ取りやすい。保守派なのか革新派なのか、クールなのかパッションなのか、落ち着きなのか躍動なのか、このようなことをとらえるだけでもデザインの方向性が絞り込める。また、企業文化の現状をデザインに落とすのではなく、今後変えていくためにWebサイトをリニューアルすることもある。



■評判・ブランド
今までクライアントが事業で培ってきた顧客とのコミュニケーションで、企業や事業の評判が決まる。どのように顧客に見られているのか、ブランドの価値をどうとらえられているのかということを把握する。ここから課題が抽出されることも多いし、これを武器に展開することも多いので、この質感を理解することは、デザインを開発・構築していくうえで非常に重要になる。このあたりからは、サイトのデザインプロセスの戦略策定フェーズに組み込まれていく。



ディレクターは、クライアントと直接話をすることもあるし、事前の資料づくりなどで、上記の項目を調査することも少なくない。多かれ少なかれプロセスの中でクライアントを理解する必要があるからだ。ただ、それがデザイナーまで共有されるか、というところは、今のところそれほど多くない。弊社内でも要件としてとらえているものは共有されるが、「クライアントのビジネス」という明確な項目で共有されることは少ない。



今後、新しいデバイスや検索に頼らないSNSのトラフィックなど、プロモーション戦略の中でのWebサイトという位置づけも変化していく。その中で最適なWebデザインを考えるには、クライアントのビジネスを理解したうえで選択していくための情報の共有が大事なのではないだろうか。

次回(2月25日更新)の第10回となる後編では、これらの情報をデザインにつなげていく方法を考察する。




■デザイン現場の目線で“リアルに語る”実践! WEBビジュアルデザイン バックナンバー
>>> まとめページはこちらから!

第1回「デザインプロセスの落とし穴(前編)」
第2回「デザインプロセスの落とし穴(後編)」
第3回「戦略からビジュアルに落とし込む(前編)」
第4回「戦略からビジュアルに落とし込む(後編)」
第5回「デザインはなぜひっくり返るのか(前編)」
第6回「デザインはなぜひっくり返るのか(後編)」
第7回「優れたデザインに最適化していくワザ(前編)」
第8回「優れたデザインに最適化していくワザ(後編)」


FOURDIGIT Inc.

期待以上の結果を継続的にご提供することが FOURDIGIT Inc. のミッションです。数多くのプロジェクトで培った戦略への理解力、デザイン、技術力は多数の企業様に評価をいただいております。

URL:http://4digit.jp/


【MdN Design Interactiveからのお知らせ】

MdN Design Interactiveが運営するデザイナーやWebデザイナーなど、クリエイティブ業界に特化した求人サービス【MdNの求人情報】では、2011年3月31日まで「クリエイター向け人材派遣・紹介会社登録者募集キャンペーン」を開催中です。人材派遣・紹介会社限定で、掲載料金が“最大60%OFF”になる、たいへんお得なキャンペーンです。ぜひご利用ください。

→【MdNの求人情報】はこちら!

MdN DIのトップぺージ