実践! WEBビジュアルデザイン 第12回「デザインプロセスを知る(後編)」

web creators/MdN Design Interactive共同企画 デザイン現場の目線で“リアルに語る”

実践! WEBビジュアルデザイン 第12回「デザインプロセスを知る(後編)」


2011年3月11日
TEXT:文=田口 亮((株)フォーデジット)

Webデザインに必要な知識や考え方は、普遍的なものもあれば、案件やクライアントによって変化する部分もある。PCやネットの技術やトレンドの変化によっても変わっていく。そのような知識や考え方、取り組み方を学び、考えるうえで大事なことは、現場で役に立つ、実践的でリアルな知識を得ることだ。

そこで本連載では、Webデザインの現場で役に立つ、実践的なWebビジュアルデザインのトピックや考え方、取り組み方について考えていく。





前回の「第11回 デザインプロセスを知る(前編)」で取り上げたように、どのデザインファームでもWebデザインのプロセスは、「HCD」(Human Centered Design:人間中心設計)をベースとした考え方に帰結する。今回は「HCD」について、もう少し踏み込んで内容を理解するために説明しよう。



■HCD(Human Centered Design:人間中心設計)とは

人間中心、またはユーザー中心デザインという言葉だけでなく、人間中心設計プロセスとして明確に落とし込んだものが、1999年の「ISO13407 Human-centred Design Processes for Interactive Systems(JIS Z 8530:2000 - インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス)」という国際規格だ。【1】のような循環型のデザインプロセスが用いられ、このプロセスはWebデザインというよりもプロダクトデザインの領域で、かなり深く取り組まれている。




【1】HCDのデザインプロセス


■HCDの5つのステップ

HCDには「【1】HCDの必要性の特定」「【2】利用の状況の把握と明示」「【3】ユーザーと組織の要求事項の明示」「【4】設計による解決策の作成」「【5】要求事項に対する設計の評価」という5つのステップがあり、【1】の後に【2】~【5】を繰り返すことになっている。


【1】に関しては、プロジェクトスタッフや意思決定者がHCDのプロセスを承認する必要あることを意味している。その後は、言葉の通りだが、前回の記事「第11回 デザインプロセスを知る(前編)」での「J・J・ギャレット氏の5段階モデル」「IDEOのデザインプロセス」「ゴールダイレクテッドデザイン」のどれもが類似していることが見て取れる。類似しているのは項目だけでなく、循環型のモデルをどれも採用し(J・J・ギャレット氏の5段階モデルでは階層の相互作用)、一方通行のデザインではないということだ。


ビジュアルデザインは、HCDに当てはめると、「【4】設計による解決策の作成」のところに当たる。さらに、解決策の作成にカラースキームやレイアウト、またはアフォーダンスなどの手法によって解決策を計るところである。ただ、HCDはおもに「使いやすさ」を主眼に置いた考え方としてとらえられることが多い。


HCDの考え方より少し広義な考え方として、「UX」(User Experience)というものもある。UXは「ユーザー体験」と訳される。UXの考え方の中に「実用的品質」と「快楽的品質」という考え方がある。実用的品質はユーザーの目的をいかに容易に達成するかであり、快楽的品質はあくまでもユーザー側が感じる信頼感や満足感などの満足だ。


ビジュアルデザインにはこの両面が求められている。簡単に言うとインターフェイスとしての機能性やユーザビリティという側面と、見た目やブランドを創出するための側面だ。これらの両面はそれぞれが切り離されたものではなく、それぞれ相互に依存する。認知心理学の権威、ドナルド・A・ノーマン博士によると「魅力的なものの方がうまくいく」という提言をしているし、クラウス・クリッペンドルフの「意味論的転回―デザインの新しい基礎理論」(エスアイビーアクセス刊)によると、使いやすい・機能的に満足することで製品関与が高まり快楽的品質も高く感じるという。


実際のプロセスでは、J・J・ギャレット氏の5段階モデルに近い形で、ある程度固まった段階でビジュアルデザインを行うことが多い。プロダクトのデザインプロセスのようにプロトタイプを繰り替えしたり、改善に時間をかけて行くのは、予算的にもスケジュール的にも非常に難しい。そのために、デザインに対しての判断や理解のスピードが求められることになる。


今後、今までよりもいっそうWebが企業の資産としての価値を生み出すことを考えると、上記のようなデザインプロセスを踏むことも多く考えられる。実際のプロジェクトでも、ユーザビリティテストやユーザー調査などがプロセスに組み込まれることも多くなってきている。最終的に見た目をつくる「ビジュアルデザイン」としてさらに専門的に求められることが増えてくるのではないだろうか。また、意思決定者やデザイナーの感性に任せることが多いデザインの決定も、さまざまなプロセスによって改善されることが見込まれる。




■デザイン現場の目線で“リアルに語る”実践! WEBビジュアルデザイン バックナンバー
>>> まとめページはこちらから!

第1回「デザインプロセスの落とし穴(前編)」
第2回「デザインプロセスの落とし穴(後編)」
第3回「戦略からビジュアルに落とし込む(前編)」
第4回「戦略からビジュアルに落とし込む(後編)」
第5回「デザインはなぜひっくり返るのか(前編)」
第6回「デザインはなぜひっくり返るのか(後編)」
第7回「優れたデザインに最適化していくワザ(前編)」
第8回「優れたデザインに最適化していくワザ(後編)」
第9回「ビジネスを理解したデザインとは(前編)」
第10回「ビジネスを理解したデザインとは(後編)」
第11回「デザインプロセスを知る(前編)」


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(株)フォーデジット
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