実践! WEBビジュアルデザイン 最終回「クライアントと一緒にデザインをつくる(後編)」

web creators/MdN Design Interactive共同企画 デザイン現場の目線で“リアルに語る”

実践! WEBビジュアルデザイン 最終回「クライアントと一緒にデザインをつくる(後編)」


2011年3月25日
TEXT:文=石田裕豊((株)フォーデジット)

Webデザインに必要な知識や考え方は、普遍的なものもあれば、案件やクライアントによって変化する部分もある。PCやネットの技術やトレンドの変化によっても変わっていく。そのような知識や考え方、取り組み方を学び、考えるうえで大事なことは、現場で役に立つ、実践的でリアルな知識を得ることだ。

そこで本連載では、Webデザインの現場で役に立つ、実践的なWebビジュアルデザインのトピックや考え方、取り組み方について考えていく。





前回の「第13回 クライアントと一緒にデザインをつくる(前編)」では、クライアントとデザインをつくっていくための準備プロセス、「デザイン策定における準備プロセス」に関して言及した。今回はその次のプロセスである、「デザイン策定プロセス」に関して言及する。



■方向性の決定──準備プロセスの総括

準備プロセスで実施してきた調査や議論は、内容を整理し、クライアントとの共有認識としてしっかりと総括し、方向性を決定する必要がある。総括したものをきちんと書面化して、オフィシャルな決定事項としてプロジェクトメンバー全員で共有することで、ひとつのプロセスに明確な区切りをつけることができる。このようにプロセスごとにていねいに結論を見いだし、メンバー間でコンセンサスをとることは、「デザインがひっくり返る」ことを防ぐだけではなく、プロジェクト全体を円滑に進める上でも非常に重要だ。



■質感の決定──比較して絞り込む

準備プロセスで重要なのは、方向性を決定することであり、漠然としたイメージが抽象的な言葉とともにプロジェクトメンバーの間で共有されていればよい。その次のプロセスで重要なのが、漠然としたイメージをより具体的にしていく作業、「質感を決定する」作業である。たとえば準備プロセスの総括時点で、「ターゲットは法人顧客なので、ブルーをベースに、安定感と信頼感を表現したい」といったイメージが共有されていたとして、そのブルーはどういうブルーなのか。という具合に「漠然としたブルー」をより具体的にしていくことが「質感を決定する」作業である。

「SOFT/HARD」「WARM/COOL」といった、カラーイメージスケールなどで使用される代表的な座標軸の中で、比較として最適なポイントをいくつか決定し、そのポイントで作成したデザイン同士を比較し、絞り込んでいくといった方法も、「質感を決定する」手段として有効だ。この方法にさきほどの例をあてはめて考えてみよう。ターゲットが法人の場合は、あたたかみを強調するよりは、企業としての安定感や信頼感を訴求するために、クールさをともなったトーンに落ち着く場合が多い。座標軸で考えると、「WARM/COOL」の座標軸では大きな差をつけることは難しいので、やわらかさを強調するのか、かたさを強調するのか、といった「SOFT/HARD」という座標軸でいくつかポイントを決定し、そのうえで作成したデザインを比較対象にできるだろう。

デザイン策定に限らず、漠然としたものをより具体的なものにしていくには、「比較する」という視点が有効だ。比較することで基準がうまれ、次のアクションを導きだすことができるからだ。




【1】座標上で比較できるポイントをいくつか決定する

■細部の決定──パーツ単位で細かく検討する

質感が決定したあとは、その質感の細部を決定する作業が重要だ。その際に重要なのが、質感を端的に表現できるポイントを重点的に検証することである。デザインを細かいパーツ単位に分解し、決定した質感と照らし合わせながら、細部のつくり込みを行うのである。第8回「優れたデザインに最適化していくワザ(後編)」でも触れたが、(株)フォーデジットでは、「レイアウト」「カラースキム」「フォント」「エレメント」「写真・動画」といった5つに大別したパーツを検証ポイントとし、そのパーツごとに策定した内容をオリジナルのクリエイティブ・ブリーフとして総括するというフローを採用している。




【2】クリエイティブ・ブリーフ

■つねにゴールを掲げる

以上のように、デザイン策定の現場では、「方向性の決定」「質感の決定」「細部の決定」と、大きな視点から、より細かな視点に絞り込んでいくフローが有効だ。そこで注意しておきたいのは、細かな視点にフォーカスしすぎないという点である。筆者の経験からいって、細部に関しての議論には多くの意見がだされる。時にはその議論が本来達成すべきゴールからそれてしまう場合もある。細かなポイントに集中するあまり、本来のゴールを見失ってしまっては本末転倒である。そのような結果をさけるために、デザイン策定時には、つねにプロジェクトのゴールを掲げ、確認しながらプロセスを進める必要がある。本連載でもたびたび触れてきたが、デザイン策定は、プロモーションにおける詰めの領域である。デザイン策定にいたるまでの過程と、最終的なゴールの確認といった本質的な作業こそが、クライアントと一緒にデザインをつくるうえで、つねに確認すべきポイントといえる。




■デザイン現場の目線で“リアルに語る”実践! WEBビジュアルデザイン バックナンバー
>>> まとめページはこちらから!

第1回「デザインプロセスの落とし穴(前編)」
第2回「デザインプロセスの落とし穴(後編)」
第3回「戦略からビジュアルに落とし込む(前編)」
第4回「戦略からビジュアルに落とし込む(後編)」
第5回「デザインはなぜひっくり返るのか(前編)」
第6回「デザインはなぜひっくり返るのか(後編)」
第7回「優れたデザインに最適化していくワザ(前編)」
第8回「優れたデザインに最適化していくワザ(後編)」
第9回「ビジネスを理解したデザインとは(前編)」
第10回「ビジネスを理解したデザインとは(後編)」
第11回「デザインプロセスを知る(前編)」
第12回「デザインプロセスを知る(後編)」
第13回「クライアントと一緒にデザインをつくる(前編)」


CREATIVE SURVEY

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(株)フォーデジット
URL:http://4digit.jp/


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