Mac OS X Lionの誕生で予測されるOS戦争の帰結(前編)

Mac OS X Lionの誕生で予測されるOS戦争の帰結(前編) 2011年7月25日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

米国時間の2011年7月21日、Mac OS Xの最新バージョンであるLionが、発売初日に100万本を突破した。CD/DVDのようなパッケージで販売されるのではなく、旧バージョンのSnow Leopardからのアップグレード版をApp Store経由のダウンロード販売のみで流通させる戦略(2600円)は、非常に革新的だといえる。USBメディアによるフルパッケージも発売される予定らしいが、いずれにしても、事実上、世界に先駆けてCD/DVDというメディアに完全決別を告げたわけである。Appleの面目躍如といったところだろう。

Mac OS X Lionは、Appleのモバイルデバイスの共通OSであるiOSの影響を、色濃く受けている。iOSの基本コンポーネントはMac OS Xから来ているので、親が子供の影響でライフスタイルを変えたのと同じくらいの状況だ。iOSは実に親孝行なOSであるというべきか、それともLionの柔軟さを褒めるべきかは微妙なところだ。

それはともかく、LionのマルチタッチジェスチャーはiOSに合わせて再設計されており、たとえば二本指による書類やWebのスクロールは、iPhoneやiPadの動きと同じ方向(これまでとは逆の方向)に設定された。ただし液晶画面に直接触れる手法をAppleはとらず、あくまでトラックパッドでの操作にとどめた。これが段階的な措置なのか、タブレット型のiPadとMacシリーズの筐体のサイズや形状の違いを鑑みた最終的な仕様なのかはまだわからない。

OSの絶対的覇者と思われていたWindowsは徐々に力を失い始めており、モバイルデバイス上ではiOSとAndroidにシェアを完全に奪われた。PCの世界でも、Mac OS Xは少なくともノートブックや高級機市場では大きくシェアを伸ばしているし、さらにGoogleのクラウド型OSであるChrome OSが、その野心をむき出しにしはじめている。Lionの敵はもはやWindowsではなくChromeであるのかもしれず、さらにChrome OSはいつかAndroidをみずからの手で封じなくてはならない日を迎えるし、iOSもまたLion、というよりMac OS Xを不必要な存在にしてしまうかもしれない。

(後編に続く)



Mac OS X Lion



【お知らせ】MdN Design Interactiveのコラムも読める無料iPhoneアプリ「MdN News Reader」を公開しました、ぜひご利用ください。
MdN News Reader
URL:http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/17571/



■著者の最近の記事

熾烈を極めるFacebook vs Google+(後編)
熾烈を極めるFacebook vs Google+(前編)
スーパーコンピュータ「京」の世界一奪回で考える、ビッグデータの可能性(前編)
ネットベンチャー企業に浸透するイグジット戦略(後編)
GrouponのIPO申請は吉と出るか凶と出るか(後編)
GrouponのIPO申請は吉と出るか凶と出るか(前編)
日常的な距離感を保つユニークなSNS「Path」(後編)




[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
twitter:http://www.twitter.com/ogawakazuhiro
facebook:http://www.facebook.com/ogawakazuhiro

MdN DIのトップぺージ