隠れた世界的起業家、ジャック・ドーシーの功績
TEXT：小川 浩（株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター）
ジャック・ドーシーの名前を知っている日本人はあまり多くはないかもしれない。ドーシーは34歳にしてふたつのカッティングエッジなベンチャー企業の創業と経営に携わる、世界的な起業家である。
まず、彼は日本でも1500万人以上といわれるユーザーを集めているマイクロメッセージングシステム・Twitterの共同創業者のひとりであり、現在同社の会長を務めている。というよりも、Twitterのオリジナルアイデアは彼が創出したとされており、プロトタイプもドーシー自身でプログラミングしたようだ。
さらに、iPhoneなどのスマートフォンを簡易クレジットカード決済端末にするシステムを提供し、米国を中心に急成長しているSquareの創業者兼CEOでもあるのだ。Squareは2011年6月には10億ドルの評価額に達している。
Squareは、スマートフォンに接続する小型のクレジットカード決済デバイスを開発している。このデバイスを設置すると、端末を使ってカード決済が行える。つまり、たとえばフリーマーケットなどで個人が不要な服などを販売する際、購入者に現金決済のほかカード決済も選んでもらえるわけだ。米国では数ドルであってもカード決済できるのが普通だし、個人売買もさかんなので、Squareのサービスは普及しやすい土壌がある。
そのドーシーが、2011年10月19～21日で香港で開催されたイベント「All Things Digital Asia（AsiaD）」に登壇した。ドーシーはまず、10月5日に亡くなったスティーブ・ジョブズと同じように、彼がふたつの急成長中のベンチャーの経営に携わっているもとについて問われ、以下のように回答した。
「ジョブズはAppleとPixarのCEOだったけれど、僕はCEOとしてはSquareだけで、Twitterは会長職です。だからジョブズほど大変なわけではない」「ジョブズがどうやってあれほどの重責に向かっていたのかは知らないけれど、僕は月曜はソーシャルメディアに関して考え、火曜にはマイクロ決済についての会議に出る、というように日ごとにわけて集中するようにしています」「Squareのような個人向け決済システムの需要は世界的にあるので、成長については楽観視しています」「Twitterについては、僕はとにかくシンプルなサービスであり続けることを考えます。一部のハイエンドユーザーのためのサービスではなく、普通の人にもっと使ってもらいたいのです」
日本では、ドーシーのようなシリアルアントレプレナーは少ないし、同時にふたつのベンチャー企業の経営を行うということもあまりない。ふたつともに世界的に大ブレイクしつつあることも注目に値する。縮小均衡に向かう日本の経済状況および起業を目指す若者が減るなかで、ドーシーのようにマルチプルに自分のアイデアを具現化する若い起業家を生み出すアメリカの環境は、やはりいまだにダイナミックであり、彼我の差を感じざるをえない。
All Things Digital Asia（AsiaD）で登壇するジャック・ドーシー
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［筆者プロフィール］
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ（毎日コミュニケーションズ）、『Web2.0BOOK』（インプレス）、『仕事で使える!「Twitter」超入門』（青春出版社）、『ソーシャルメディアマーケティング』（ソフトバンククリエイティブ／共著）などがある。
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