クリエイティブ業界に就職するためのポートフォリオ 第2回

短期集中連載
クリエイティブ業界に就職するためのポートフォリオ 【第2回】明快なコンセプトが、ポートフォリオの訴求力を高める
2011年10月26日
TEXT:尾形美幸

クリエイティブ業界に就職するための必須アイテムであるポートフォリオ。採用担当者の心をつかむ、訴求力のあるポートフォリオをつくるためのポイントを、全4回の連載で紹介する。第2回の今回は、ポートフォリオのコンセプトの重要性を解説しよう。

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■最初に意識してほしい、ポートフォリオのコンセプト
ポートフォリオ制作を始めるにあたり最初に意識してほしいのが、ポートフォリオのコンセプトだ。ここでいう「コンセプト」は、ポートフォリオの目的を効果的に実現するための、制作の指針といえる。コンセプトは「目的意識」といい換えてもよい。たとえば、「自分の得意分野を強くアピールしよう」とか「応募する企業の製品や社風を意識した作品を掲載することで、熱意をアピールしよう」といった具合である。こうした目的意識がないままに制作を進めてしまうと、なにをアピールしたいポートフォリオなのかわからなくなってしまったり、内容に統一性や整合性がなくなってしまう危険性がある。

ところで、ポートフォリオをつくる最終的な目的とはなんだろうか。連載の第1回でも述べたが、再度確認しておこう。ポートフォリオの目的は、採用担当者に「本人に会って話を聞いてみたい」と思ってもらうことだ。この最終目的を実現するための、ポートフォリオ制作の指針を明確にすること、それがコンセプトをつくるということだ。



■ポートフォリオのコンセプトづくりのプロセス
なんの手がかりもない状態では、ポートフォリオのコンセプトは生み出せない。まずは判断材料となる情報を収集し、分析しよう。コンセプトづくりに必要な情報は、大きく2種類にわけられる。ひとつは自分自身に関する情報、もうひとつは応募する企業に関する情報だ。

自分自身に関する情報とは、なにを勉強してきたか、なにを経験してきたか、なにが好きか、なにをやりたいか、なにができるか、なんの仕事をしたいか、未来の目標や夢はなにか、といったことだ。これらの情報を漠然と心に思い描くのではなく、文字情報として書き起こしてみよう。文字にすることで、自分の考えが他人に伝えられる形に整理され、客観的な分析ができるようになる。

応募する企業に関する情報とは、どんな製品やサービスを開発しているか、どんな社風か、どんな制作体制をとっているか、どんな人材を求めているか、といったことだ。これらの情報は、企業のWebサイト、雑誌や業界向けニュースサイトの関連記事、関連書籍、関連カンファレンスなどから多角的に収集しよう。学生の場合は、先生、就職課のスタッフ、先輩、OB・OGなどから情報を得られることも多い。

自分自身と企業に関する情報が集まったら、自分の希望と企業の需要がマッチングするポイントがどこにあるかを分析しよう。ポートフォリオのコンセプトは、このポイントを基点につくっていくとよい。自分なりの強みや個性を、わかりやすくアピールできるコンセプトになるよう意識しよう。一般的に、色々な方向性のスキルやセンスをまんべんなく打ち出すよりも、ポイントを絞ったほうが強みや個性が際立ち、採用担当者への訴求力が高くなる。

たとえば、美術大学のデザイン科でインターフェイスを研究している学生が、Webサイト制作プロダクションを志望するのであれば、自身の強みである「インターフェイスへのこだわり」を集中して見せることをコンセプトにするとよいだろう。

また、専門学校で3DCG制作を学んだ学生が、ゲーム会社や映像プロダクションを志望するのであれば、モデリング、リギング、アニメーション、エフェクトなどの経験をまんべんなくアピールするよりも、得意分野を集中して見せるコンセプトにしたほうが印象深い仕上がりになる。

全方位の仕事に幅広く対応できる力をアピールすることが悪いわけではないが、その場合には高い平均点が要求されるため、ハードルが高くなる。また、ほかの応募者のポートフォリオと比較した場合、その人の強みや個性が見えづらいことが多く、採用担当者の印象に残りにくい。

ポートフォリオの実制作では、前述のプロセスを経てつくったコンセプトをつねに意識し、明快でぶれのないメッセージ性をもったポートフォリオの完成を目指してほしい。


ポートフォリオのコンセプトづくりのプロセス



【次回予告】第3回では、ポートフォリオの第一印象の重要性について解説する。



実際に内定を勝ち取ったポートフォリオの解説など、より詳しいノウハウについては、書籍『クリエイティブ業界を目指す人のためのポートフォリオ見本帳』をご覧ください。
http://www.mdn.co.jp/di/book/6227/

[筆者プロフィール]
尾形美幸(おがたみゆき)●フリーランスのエディター&ライター。EduCat(エデュキャット)の屋号のもと「教育」を軸足に、書籍や教材などの制作を生業に活動中。東京芸術大学大学院修了、博士(美術)。CG-ARTS協会(財団法人 画像情報教育振興協会)にて、教材やWebサイトの企画制作を担当した後、2011年4月に独立。共著書に『CGクリエーターのための人体解剖学』(ボーンデジタル)がある。『ゲームのお仕事』業界研究フェア2011では、ポートフォリオ関連セッションのモデレータを担当。

『ゲームのお仕事』業界研究フェア2011:http://cedec.cesa.or.jp/oshigoto/2011/


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