クリエイティブ業界に就職するためのポートフォリオ 最終回

短期集中連載
クリエイティブ業界に就職するためのポートフォリオ 【最終回】ポートフォリオづくりには、採用担当者の立場や気持ちへの配慮が必須
2011年11月08日
TEXT:尾形美幸

クリエイティブ業界に就職するための必須アイテムであるポートフォリオ。採用担当者の心をつかむ、訴求力のあるポートフォリオをつくるためのポイントを、全4回の連載で紹介する。最終回となる今回は、採用担当者の立場や気持ちへの配慮の重要性を解説しよう。

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■採用担当者への配慮は、クライアントやユーザーへの配慮に通じている
クリエイティブ業界のデザイナーやアーティストの仕事では、クライアントやユーザーへの配慮が必須だ。たとえばWebサイトのデザイナーであれば、クライアント(Webサイト開設者)の要求とユーザー(Webサイト訪問者)のニーズをくみ取り、Webサイトの開設目的を達成できるデザインを提案し、具体化することが求められる。

ポートフォリオの場合も、受け手である採用担当者の立場や気持ちを想像し、余計な手間やストレスをかけることなく、気持ちよく見てもらうための配慮を忘れないようにしてほしい。ここでの配慮は、前述のクライアントやユーザーへの配慮に通じている。配慮が行き届いたポートフォリオを受け取った採用担当者は、「このデザイナーであれば、クライアントやユーザーの視点に立ったデザインができるだろう」と期待する。反対に配慮の足りないポートフォリオであれば、「一緒に仕事をするのは難しい」という印象をもたれる危険性がある。



■採用担当者への配慮のポイント
「採用担当者への配慮」といっても、具体的になにをすればよいのか想像できない人もいるだろう。最低限ここだけは気をつけてほしいという、ふたつのポイントを解説しよう。


・採用担当者への配慮のポイント~手間をかけさせない
連載の第3回で説明したように、採用担当者が1回の審査で目を通すポートフォリオの数は、少なくとも数十点、多い場合は数百点にのぼる。限られた時間のなかで最大限効果的に自分の存在をアピールするため、閲覧の前段階で余計な手間や時間をかけさせないよう、充分注意しよう。

たとえば、装丁にこりすぎて開くのに時間のかかるポートフォリオ、Flashアニメーションのローディングに時間のかかるポートフォリオサイト、ディスクから直接再生できないデモリールなどは、肝心の作品を見てもらう以前の段階で、マイナス印象をもたれてしまう危険性があると認識してほしい。


・採用担当者への配慮のポイント~わかりやすく伝える
採用担当者に自分のメッセージを確実に伝え、興味をもってもらうためには、わかりやすさも重要だ。

たとえばポートフォリオの場合、作品ごとのコンセプト、概要、制作期間、使用ソフト、受賞歴などを簡潔にまとめたキャプション(説明)を付けよう。学生の場合は、学校の課題か自主制作かも明確に伝えたほうがよい。自主制作の経験が豊富な人ほど、作品づくりのモチベーションが高い人として評価される場合が多いからだ。また、グループ制作の場合は担当部分を明確に伝えることも重要。その人の担当部分があいまいな作品は、評価対象から外される場合もある。

ポートフォリオサイトの場合は、トップページから作品紹介ページまでのユーザー導線が複雑にならないよう、Webサイト構造やナビゲーションを工夫しよう。

デモリールの場合は、パッケージなどにブレイクダウンリストを掲載しよう。ブレイクダウンリストは、前述のポートフォリオのキャプションに相当するものだと思ってほしい。各ショットの開始フレーム、概要、制作期間、使用ソフト、担当部分などの情報が、映像を再生しなくても一覧できるようになっていると好印象だ。



採用担当者への配慮は、クライアントやユーザーへの配慮に通じている


【最後に】
ポートフォリオの訴求力を高めるうえで、もっとも大切なのは掲載する作品を充実させることだ。それに加えて全4回の連載で紹介したポイントを意識すれば、面接へと進む確立はさらに高くなる。採用担当者の心に届く魅力的なポートフォリオをつくりあげるまで、諦めることなく挑戦し続けてほしい。



実際に内定を勝ち取ったポートフォリオの解説など、より詳しいノウハウについては、書籍『クリエイティブ業界を目指す人のためのポートフォリオ見本帳』をご覧ください。
http://www.mdn.co.jp/di/book/6227/

[筆者プロフィール]
尾形美幸(おがたみゆき)●フリーランスのエディター&ライター。EduCat(エデュキャット)の屋号のもと「教育」を軸足に、書籍や教材などの制作を生業に活動中。東京芸術大学大学院修了、博士(美術)。CG-ARTS協会(財団法人 画像情報教育振興協会)にて、教材やWebサイトの企画制作を担当した後、2011年4月に独立。共著書に『CGクリエーターのための人体解剖学』(ボーンデジタル)がある。『ゲームのお仕事』業界研究フェア2011では、ポートフォリオ関連セッションのモデレータを担当。

『ゲームのお仕事』業界研究フェア2011:http://cedec.cesa.or.jp/oshigoto/2011/


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