Webとアルゴリズムの密接な関係（後編）
TEXT：小川 浩（株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター）
Webはインターネットを覆う巨大なプログラムだ。このプログラム上に、現在無数のアルゴリズムが存在しているが、特に有名なのがGoogleの検索アルゴリズムだろう。ページランクに代表される彼らの検索アルゴリズムの傾向を研究し、それに沿って自社サイトを目立たせる手法がSEOだ。しかし、昨今のWebにはソーシャル化の波が台頭してきており、インターネットを介して人間関係（ソーシャルグラフ）を計測するアルゴリズムが急速につくられつつある。Facebookではページランクになぞらえて、エッジランクなるアルゴリズムの存在がささやかれているように、だ。
だからこそGoogleは、今後はSEOとSMOのハイブリッド検索をつくらなければならないし、そのアルゴリズム成立のためにも自前のソーシャルグラフをまず持たなければならないという課題に追われている。その切り札がGoogle+である。
Google+は、Twitterのような非対称な人間関係をベースにしたSNSだ。つまり、一方がフォローすれば相手の承認なしに、相手の公開情報を購読できる。見た目や搭載されている機能はFacebookに酷似しているが、Google+とはFacebookの皮をかぶったTwitterといえるのだ。
Googleは現在、米国でテレビ広告を展開してGoogle+のプロモーションを行っているが、その中で、サービスのキモといえるサークル機能を中心にコンセプトの紹介をしている。サークルは、Twitterのフォローとリストをうまく取り入れており、人間関係の非対称性と、静的ではなく動的に変化するものであるという認識のもとに設計されている。
人間関係が対象的ではなく非対称であるという事実は、たとえば恋愛において片想いという一方通行的な関係もあり得ることで理解できるはずだ。同時に人間同士の関係性には距離感や密度があり、それはつねに動的に変化している。恋愛でいえば片想いから両想いにもなるし、うまくいかずに消滅したりする。友愛が恋愛に変わることもあるし、その逆もある。だから、Twitterにはリストという機能があり、自分がフォローしている相手を、距離感や密度などの関係性の違いによって分類できる。
ただし、先述のように人間関係は動的に変化するから、本来はいったんリストに入れた相手を、既存・新規に関わらず別のリストに移動させるというニーズが発生する。しかしTwitterのリストは、UI上そのようなニーズに対応していない。できることはできるが手間がかかるし、そうしようという欲求をユーザーに抱かせるようなUIではないのだ。
その点、Google+のサークルはドラッグ＆ドロップでサークル内の相手を簡単に移動できるし、そうしてみようと思わせる楽しいUIに仕上がっている。それをGoogleもよく知っているから、テレビコマーシャルで、（嫌いな男から徐々に恋人までに昇格する様子を）サークルからほかのサークルへユーザーのアイコンを簡単に移動していく様子をシンプルに描いている。
検索エンジンだけでなく、Amazonに代表されるECもまたSMOを考慮した購買推奨エンジン開発に着手していると思われる。今後数年は、ソーシャルグラフの在り方をどう解釈するかのアルゴリズム、およびその効果を加味したさまざまなインターネット上のアルゴリズムの開発が進み、形になっていくことだろう。
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［筆者プロフィール］
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ（毎日コミュニケーションズ）、『Web2.0BOOK』（インプレス）、『仕事で使える!「Twitter」超入門』（青春出版社）、『ソーシャルメディアマーケティング』（ソフトバンククリエイティブ／共著）などがある。
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