2012年のFacebookの戦略を考察する

2012年のFacebookの戦略を考察する 2011年12月12日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Facebookは、8億人以上ものユーザー数を誇る世界最大のSNSとして君臨しているが、盛者必衰は世の常であり、その座が未来永劫安泰であるわけはない。それをもっともよくわかっているのが、ほかならぬFacebook自身だ。

彼らの領土拡張の野望を阻もうとしているのは、まずGoogleだ。彼らはGoogle+を個別のサービスとしてとらえるのではなく、検索やGmail、Googleマップなどすべてのサービスを横断する、Google自体のソーシャル化を進める全体最適化型のサービスとして考えている。それはソーシャル担当・ホロウィッツ副社長の「Google+はプロダクトではなくプロジェクトだ」という言葉からもわかる。

つまり、Facebook対抗のサービスをつくるのではなく、Facebookがもたらしたオープンかつ実名のソーシャルという新しい流れに即した体質に生まれ変わろうとしている。それがゆえに、テレビ広告でGoogle+の告知をしたり、AKB48を使った(およそGoogleらしからぬ)プロモーションに踏み切っているのだ。

Google+がFacebookに勝るのは、そもそもの検索トラフィックを引き込めるというSEO的優位、Androidの普及によるモバイルインターネットにおける優位、加えてGPS情報をもつGoogleマップによる位置情報サービスでの優位だ。

FacebookはGoogleの反撃に対して、Like(いいね!)ボタンの多角化(音楽への興味や本の感想などの多様な意味付け)を進めて、SEOに対する企業サイトのSMO対策のプラットフォーム化をさらに促進する。また、HTML5によるiPhoneやAndroidプラットフォームに依存しないモバイルアプリの開発を加速するはずだ。さらに、位置情報サービスではFoursquareの遅れをとって焦るGowallaの開発チームをごっそり買収し、この分野での巻き返しも図っている。

これらの施策には巨大な資金力を持つはずのFacebookにしても、より多くの投資が必要になる。2012年前半にIPOが噂されるFacebookだが、株式公開自体には消極的なマーク・ザッカーバーグにしても、Googleへの対抗上軍資金は多ければ多いほどいいから、おそらく2012年にはIPOを実行することになるのではないか。

Googleとは別に、TwitterもまたFacebookと比較対象される相手だが、Facebookは互いに友達になるという通常の関係性とは別に、相手のフィードを購読することによって日々の行動を一般公開する人と、それを読む人という非対称性の関係性を許すことで、Twitterを駆逐しようとしている(Twitterの存在自体を消し去るという意味ではなく、相対的に無力化を目指すという意味だ)。

とはいえ、TwitterにとってはFacebook以上にGoogle+のほうがサービス的にかぶっており、より恐ろしい相手だ。逆に言えば、Facebookのフィード公開機能はTwitter対抗というよりはGoogle+対抗、ということなのかもしれない。

いずれにしても、Facebookはニュースフィードのタイムライン化の全ユーザーへの提供やLikeボタンの改善など、いままでに施してきたサービス変更などの充実化を進めつつ、Gowallaチームの買収の成果などを形にしていくだろう。ほんとうに大きな変化がみられるのは、IPOによる資金追加の前後になるのではないか。





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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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