FacebookのタイムラインがWebの浄化作用を生み出す

FacebookのタイムラインがWebの浄化作用を生み出す 2012年01月10日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Facebookが2011年にリリースしたさまざまなサービスのうち、もっとも華やかで、ユーザー全体にもわかりやすい機能がタイムラインだ。タイムラインは、プロフィールページと呼ばれていた、ユーザーが自分自身の情報をほかのユーザーに閲覧させるための静的なページを、一気に動的に変えた。

タイムラインは直訳すれば「時系列」であり、ユーザーが望めば自分が生まれてから現在までの、個人的な歴史(自分史)をFacebook上で公開できる。もともとプロフィールに用意されていたような学歴や職歴、交際ステータスや家族状況などに加えて、「家や自動車を購入した」「引っ越した」などのような、人生の契機になるようなイベント(ライフイベント)などを過去にさかのぼってアップすることが可能になった。

つまりタイムラインは、これまでFacebookへのアップが現在から未来にかけての情報に限られていたことに対して、自分自身の事柄に限り誕生の瞬間までさかのぼる情報が投稿できるようになり、それを適宜ユーザー自身に行わせるようなつくりになっている。

ブログやmixiの日記、Twitterのツイート、そしてもちろん従来のFacebookでのアクティビティでは、過去のタイムスタンプ付きの情報をアップできなかったし、自分の過去の投稿を探すことは非常に難しい行為だった。また過去にアップした記事をサービス内で探すことはとても難儀で、むしろ外部の検索エンジンで探すほうが早い。タイムラインは、自分の過去記事を迅速に探し出すための工夫が基本機能として備えられている。

僕はタイムラインにはふたつの点で注目している。ひとつは、あえてこの名称を選んだFacebookの意図だ。読者の方々はよく知っていると思うが、Twitterの時系列順の表示形式をタイムラインと呼ぶ。Facebookにおけるウォールに相当するわけだが、タイムラインという呼称から連想される印象を、FacebookはTwitterから簒奪してしまおうと考えたのではないか。つまりブランディング戦略の一環として、あえてタイムラインという名称をぶつけてきたのだと考える。

もうひとつの注目ポイントは、タイムラインは個人にとってのFacebookページであり、自分の情報をすべてWeb上にアップするライフログサービスの本命として、今後社会生活上のリアルタイムインフラになる可能性があるということだ。言ってみれば、就職・転職活動、男女の交際や結婚などの社会生活上のリアルなレファレンスとして使われる可能性があるのだ。

となれば、タイムライン上に流れる自分のアクティビティをきれいに整え、みずから情報統制をしていくことは、自分の血流をきれいにして血管年齢を若々しくしていくことと同じで、一種の健康法ということになる。つまりWeb上でも他者にみられているということを意識することで、常識はずれなことができなくなる。そうした浄化作用が強くでてくると思われる(もちろん、Web上でも行儀よくしなくてはならないことに反発を覚える読者もいるかもしれない)。

前述のように、タイムラインはさまざまな情報を公開できるが、現時点では上段のカバー画像を好きなようにカスタマイズできる。最適なサイズは720×266~270ピクセル程度で簡単にアップできるので、Googleのロゴのように適宜入れ替えて楽しむのもいいだろう。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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