FacebookとIPO、そしてM&A

FacebookとIPO、そしてM&A 2012年01月30日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Facebookはカリフォルニア州のサン・マイクロシステムズ(現在はデーターベース開発最大手のオラクルに買収されて、会社としては存続しない)の旧オフィス敷地に新社屋を建築し、3000人ほどの社員とともに本社を移転した。そのFacebookがいよいよIPO(新規株式公開)を行うという噂が、俄然真実味を帯びている。

さまざまなメディアが報じているのは、Facebookが企業価値(バリューエーション)1000億ドル(約7兆8000億円)を狙っており、100億ドルの調達を目指す、というものだ。当初は今年夏頃、早ければ5月と目されていたが、今では2012年2月1日(米国時間)にもIPOが実行されるのではないかという目測がなされている。

ベンチャー企業の定義には諸説あるが、原則として出口戦略(イグジット)と呼ばれるゴールを意識しているかどうか、が中小企業とベンチャー企業を明確に分けることになるだろう。出口戦略とは企業としての(段階的な)ゴールを定めることだが、大きく分けてふたつある。それはIPO(新規株式公開)と、M&Aによる企業売却だ。拡大戦略をとる以上、成長途上の事業規模に応じた資金調達が必要になり、結果的に外部からの資本の受け入れを容認することになる。いわゆるベンチャーキャピタル(VC:ハイリターンを狙って企業投資を行う投資会社のこと)やエンジェルとよばれる個人投資家からの出資をあおぐことが通常のやり方だ。

経営者以外の株主がいるということは、彼らに投資に見合うリターンを用意しなければならないということである。また、資金が乏しくて高い給料を払えないかわりに、ベンチャーはストックオプション(役員や従業員が、一定期間内に、あらかじめ決められた価格で、所属する会社から自社株を購入できる権利)の付与を行うことで優秀な社員を確保しようとする。ストックオプションを行使すれば、その時点での株価との差額が利益になるので、社員としてもリターンを受けられることになる。そのリターンを生むための方法がIPOとM&Aであり、株主はIPOやM&Aを実施する際は保有している株式を売る機会が得られる。

FacebookがIPOに踏み切るとすれば、おもにこの株主からの保有株の現金化のチャンスを早くつくるようプレッシャーをかけられ続けたとことによるだろう。同時に、すでにユーザー数1億人達成を視野にいれたGoogle+の激しい追随の前に、さらなる人材確保の資金が必要になったということだと思われる。通常の採用ステップを超えて短期間に一気に優秀な人材を確保するには、人材豊富な企業を買うのが一番手っ取り早い。IPO後、Facebookはこれまで小規模のスタートアップの買収しかしなかった方針を変えて、より大きな企業買収にとりかかると考えられる。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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