Facebookを活用したリアル製品のソーシャル化

Facebookを活用したリアル製品のソーシャル化 2012年02月06日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

MOO.com(http://uk.moo.com/ja/)というイギリスのベンチャーをご存じだろうか。彼らはデジタル印刷によるポストカードや名刺、ステッカーなどをWebを介して受注し、販売している。クライアントは彼らのWebサイトで製品タイプや紙質などを選び、印刷したいデザインをアップロードする。支払いは基本的にクレジットカードで行う。あとは世界中どこにでもMOOが配送してくれるので、モノによるが数日から数週間待てば望み通りの印刷物が入手できる。

彼らが最近知名度を増しているのは、Facebookのタイムラインからカバー画像を使ったオリジナルの名刺を簡単にオーダーできるようになったからだ。タイムラインの「基本データ」→「連絡先情報」の横にある小さな長方形のアイコンをクリックすると、MOOにジャンプできる。おもしろいのは、最初の一箱(200枚)を無料でオーダーできるという点で、200枚以降の追加を望めばいつでも同じデザインで購入できる。もちろんデザインの編集は可能だし、無料版はそれほどよい紙質ではないから、より高価な紙を選択して上質な名刺をつくることもできる。mixiもオンラインで年賀状の配送を受け付けるサービスを行っているが、印刷物というリアルの製品をソーシャル化させるというのは、ほかにも応用できるはずだ。

MOOのビジネスモデルはあくまで印刷業であり、トラディショナルな会社である。しかし、デザインをクライアント自身に任せることと、オーダーを原則としてWeb経由に絞り、そのためのUIを磨き上げたことによって、古くさい事業をスタイリッシュでモダンなものにうまく変化させた。さらにFacebookとの連携を果たすことで、ソーシャルなサービスという印象を勝ち得た。同じようなWebベースの印刷業者はいくらでもあるはずだし、いまからでも真似できる業態だが、まずサービスを名刺に絞りFacebookというプラットフォームにいち早く載せたことで、この分野のパイオニアになるチャンスを得たのだ。

Facebookはオンライン学生名簿というコンセプトでスタートしたSNSだが、ソーシャルゲームのプラットフォームであるだけでなく(最近FacebookがIPO申請したことで、ソーシャルゲーム最大手のZynga経由の売上が、Facebookの売上の12%ものシェアを占めていることが判明したが)、こうしたビジネスサービスの受け皿になっていることは注目に値する。MOOはタイムラインというFacebookの新サービスの開始とともに、よいプロモーションの機会を得たというべきだろう。





MOO

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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