iOS6で見えてきた画像中心型Webへの変化(前編)

iOS6で見えてきた画像中心型Webへの変化(前編)
2012年09月24日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

iOS6は今のところ毀誉褒貶が激しく、なかなかに評価をつけづらい状態にあるようだ。特にGoogle Mapsに代わって登場したApple製の地図アプリは情報量が非常に乏しく、日本国内ではストリートビューもない。電車の乗り換え案内などの機能も今のところ欠落しているため、相当に不評なのも無理はない。

一方で、新しいSafariはついに標準カメラ機能とカメラロールへのアクセスをサポートしたため、たとえばFacebookをSafari上で使っているときでも、カメラで撮影した写真であっても、保存していた写真であっても即座にアップロードすることが可能になった。これはとても小さな進化にすぎないし、もともとAndroidのブラウザがサポートしていた機能であったが、Webサイトを見るという機会がスマートフォンよりも多いであろうタブレット端末では、iOS(つまりiPad)は圧倒的なシェアを有している。PCからモバイルへとコンピューティングのプラットフォームがシフトするにつれて、ネット活用もWebからネイティブアプリ主流へと変わってきた(ある意味逆戻りしていた)状況にあるが、タブレット端末でのWebの利用が便利になることは大きな変化といえるのだ。

インターネットサービスにおいて、いまや最強のコンテンツは画像である。テキストの補助としての役割ではなく、画像は情報を直接閲覧者に伝えるための主コンテンツとなった。Facebookが写真共有アプリによって世界一のSNSの座につくと、大量の情報を時系列で垂直に配信していくソーシャルストリームに流すコンテンツとしては、写真がもっとも適していることを誰もが気づく。その代表が、Pinterestだ。Pinterestは画像だけをフィーチャーしたソーシャルストリームとして、驚異的な成長をみせた。これをみてTwitterでさえ、画像の取り扱いをサードパーティに任せずに自社で管理する途を選んだ。結果として、現在のソーシャルメディアの投稿が生むトラフィックの70%は画像のクリックによるものになった。

そして多くの摸倣者が、さまざまな分野で生まれて注目を集めるようになる。ECであればWaneloやFab.com、Fancyがあるし、モバイルSNSとしてはPathがある。セレブネットワークとしてはLady GAGAのLittlemonsters.comが登場している。

スマートフォンとタブレット端末は、PCと違って画面が狭く小さい。ソーシャルストリームには最適なプラットフォームであり、しかも狭いからこそ画像を眺めるには非常に向いている。モバイルインターネットにおいて、Webサイトはもちろんネイティブアプリもどんどん画像中心のUIになっていくことはまちがいない。Safariが画像アップロードの取り扱いをサポートしたことで、いよいよこの傾向は強まっていく。画像を中心とすることにより、スマートフォンやタブレット端末を縦横に傾けて表示範囲を可変にした場合でも最適なビューを表示する、いわゆるレスポンシブWebデザインの重要性は高まるし、HTML5の利用頻度も増えていくはずだ。

進化やパラダイムシフトといったものは、実は非常に小さな変化から起きる。実名制にこだわったことで、FacebookはWebをほんとうにソーシャルなものへと変えた。iOSのブラウザが写真アップロードをサポートしたことは、実は数年後のモバイルWebの復権につながる、と僕は考える。


iOS6




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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