セレブに広がるオリジナルWebサイトのコマース化

セレブに広がるオリジナルWebサイトのコマース化
2012年11月05日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

音楽業界は現在、世界的に低迷しているといえる。日本国内でいえば最盛期には7000億円とも言われた市場が、いまやその半分となった。

ゲーム業界は携帯電話の普及によって端末もソフトウエアも売れなくなったものの、その携帯電話上でゲームをさせるという発想の転換(いってみればピボット)が功を奏して、ソーシャルゲーム市場として凄まじい成長を見せている。それに比べると、音楽業界の構造改革はまったくうまくいっていないといえるだろう。

プレイステーションやニンテンドーDSなどのハードウエアは、音楽でいえばステレオやコンポといった再生機にあたる。そしてパッケージされたゲームソフトは、音楽CDにあたるだろう。

その比較でいえば、ソーシャルゲームは音楽のダウンロード配信に相当すると思うが、前者は爆発的な成功を収めているものの、後者はそうでもない。ゲームの場合は、プラットフォームの主流がゲーム専用機器から携帯電話・スマートフォンへと移り、ソーシャルゲーム市場が勃興した。音楽の場合、プラットフォームがまずCDプレイヤーからiPodへと移り、その後携帯電話やiPhoneをはじめとするスマートフォンへと拡大する。レコチョクやミューモなどの音楽配信サービスは携帯電話とAndroid端末には対応しているが、iPhone/iPodは一部アプリを除けばiTunesががっちり抑えている。レーベルはソニー系がiTunesに楽曲提供していないので、全体の市場としてはiPod/iPhoneユーザーの市場を結果として無視する事態になっている。こうした混乱からCD販売は落ち込む一方なのに、その代替手段としての配信事業があまり大きく伸びずにいる。

ゲーム業界の場合、モバイルでの無料利用をまず促進し、そのうちの数パーセントへのアイテム課金で儲けるフリーミアムモデルが成立している。音楽の場合は本来はテレビやラジオで試聴させ、購買に踏み切らせていたが、テレビ自体の影響力の低下や音楽番組の視聴率が落ち込み、打ち切られていく中で、消費者に体験させるためのフリーミアム構造がガタガタになってしまっているのだ。だからソーシャルゲームならば無料で遊んでいるうちに自然にお金を払いたくなる仕組みができあがっているが(ガチャのように行き過ぎもあったが)、音楽はその足並みが揃っていない。

レディー・ガガが自身のソーシャルネットワーク「Littlemonsters.com」を立ち上げたのは、こうした業界の矛盾にしびれを切らしたからだと思われる。ガガだけではない、新ソーシャルメディアの女王であるリアーナやエミネムら世界中のトップアーティストは自身のブランドサイトを強化し、そこから直接楽曲やオリジナルグッズの販売をはじめており、自分たちのWebサイトを使ってファンとの交流と商流を直に理解しようと考えはじめているのだ。iTunesやSpotifyにできるなら、自分たちでもできるはずだと、そもそも消費者への認知度が高く影響力が強いセレブであれば、そう考えても不思議ではない。


Littlemonsters.comのWebページ
http://littlemonsters.com/




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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