アジアとアニメとアイデアがクロスする世界

アジアとアニメとアイデアがクロスする世界
先週末、久しぶりにシンガポールに出張してきた。AFA(アニメーションフェスティバルアジア)というイベントで、シンガポール以外にもマレーシア、インドネシアで開催されている、アニメやコスプレ、フィギィアなどのファンのための集いの場である。

会場にはコスプレをしたファンが多く、日本の同様のイベントには参加したことのない僕からすると、その熱気ぶりに圧倒されてしまった。

さて本題だが、このイベントを通じて感じたことをみなさんとシェアしたい。それは、AFAが今後のグローバルビジネスモデルの動きを示唆しているということだ。なにかというと、この分野にはアニメという二次元的なコンテンツがあり、VOCALOIDのようなそれらを立体化したコスチュームなどの商品がある。さらにキャラクターを3D化したフィギィアなどがある(余談だがフィギィアをつくるのは昔ながらの金型の世界ではなく、3Dプリンタであり、今後は誰でも自宅で立体的な製品を自作できる時代がくるだろう)。さらに下の写真のように主題歌を歌う歌手や声優という生身の肉体をもつ、実在のアイドルとしての対象もある。ファンたちはコスプレに身を包みながらカードゲームに熱狂したり、声優や歌手のイベントに歓声をあげる。その横で同じ会場内にいる誰かとのソーシャルゲームを楽しむ者がいて、時に欲しいグッズを発見してスマホの画面から目を離す。会場では英語が中心であるが日本語や中国語も多く混じる。実際にアニメを通じて日本語が話せるようになった強者は珍しくないらしい。

そして、日本ではなかなか倫理的または道義的に抵抗があると思うが、こうしたイベントのさなか、来場者たちは堂々と写真や動画を撮り、YouTubeなどの共有サイトに瞬時にアップロードして公開している。つまり、ありとあらゆる商品化の対象があり、それらがリアルタイムでインターネット上で共有されている。

いってみれば、ありとあらゆるパッケージの「コンテンツ」または「商品」が、リアルとバーチャルが混在する世界の中でクロスしている。まったくのカオスであるが、不思議と秩序がある。実際の会場にいながら、まるで映画「マトリックス」の世界にいるかのようで現実感が曖昧だ。アニメがグッズとして商品化され、さまざまなパッケージで売られることは昔からあるが、今までは違い、インターネットや前述の3Dプリンタのような新しいテクノロジーに支えられて魅力的なカオスに変貌している。

僕自身は、正直このAFAで観たコンテンツのジャンルそのものには興味があまり湧かず、来場者たちとの共感を得られているわけではない。しかし、コンテンツのジャンルをなにかほかのモノに置き換えることができればどうだろうか? クルマやバイクの世界でも、アパレルでもいい。インターネットの世界でビジネスを行う僕たちは、現実にある紙のカタログをWebに置き換え、商店街をオンラインモールへとシフトさせ、そして近頃ではO2Oのかけ声のもと、バーチャルからリアルへの“トラフィックの移動”に夢中になっている。しかし、このAFAで見られるように、実はこれまでのような移動ではなく、混在というかクロスオーバーさせる仕組みが必要なのではないか? アニメファンの世界ではすでに実態化している構造をより深く研究して、O2Oを超えるV×R(バーチャル×リアル)の世界観をインターネット業界から提案していかねばならないのではないか。

まだ強く形に出し切れていないが、新しいコンセプトを生み出すべき使命がインターネット業界に生きている全員に課されている気がする。


AFAの様子




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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