PCからモバイルインターネットのパワーシフトを検証する(前編)

PCからモバイルインターネットのパワーシフトを検証する(前編)
2012年11月19日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

インターネットの利用シーンは、確実にPCからモバイルに移っている。これはまちがいないのだが、逆にPCとモバイルのテクノロジー面での差異はどんどん縮まっている。

どういうことかというと、スマートフォンはPCと変わらないアーキテクチャでつくられている。CPUがあり、ストレージとしてのメモリがあり、バッテリーがあって、OSで制御されている。違うのはPCが物理的なキーボードやマウスなどのGUIで操作し、スマートフォンがタッチパネルへの指先(そして音声)によるNUIによる操作になっていること、そして通話機能の有無くらいのものだ。つまり、スマートフォンとは通話ができて携帯できる、片手でも操作しえる大きさのPCであるといってもよい。

ところが、多くのPCメーカーやCPUをつくっていたIntelらは、このわずかなDNAの違いに対応できず、PCとモバイルの市場の違いという狭くて浅い峡谷を渡ることができない。タブレットはPC領域のうちのノートPCと同じカテゴリで市場分類されているが、確かにPCに近い画面をもち、スマートフォンの操作性をもつハイブリッドであるとはいえ、OS自体がAndroidやiOSというスマートフォン用OSであり、CPUもスマートフォン側のものだ。だからAppleとサムスンに席巻され、潤っているのはやはりスマートフォンメーカーだけということになる。

実のところ、スマートフォンとタブレットの差異は画面の大きさと通話機能の有無だけなわけだが、食器のナイフと包丁の用途が異なるように、大きさの相違が利用シーンを決めてしまうのである。ナイフにはナイフに最適な重量バランスや切れ味があり、包丁には包丁の切れる角度がある。Windows 8のUIはタッチパネル用の特徴を色濃く備え、PCをスマートフォンやタブレットと同じUI/UXによるデバイスへと生まれ変わらせようとしているが、画面や筐体の大きさの違い、というシンプルな差異を理解せずに、無理やりOSだけを統合してしまおうという乱暴なやり方に思える。

ところで、インターネット利用の主役がPCからモバイル(=スマートフォンとタブレット)に移っているのは事実ながら、日本最大手のポータルサービスにおける広告売上をみると、前年比でPCがわずかに8%ダウンの92%、モバイルが250%以上アップ、ということらしい。つまりPCの利用が減っているというよりは、モバイルの利用が増えているのだ。主役は移っているが、PCのインターネット利用が下がったというわけではない。実際、日中は職場でPCに触れているわけで、接触時間を考えるモバイルの登場により並行してインターネットを使える時間が増えているということなのだ。

こうした状況の中で、Webビジネスを営む者は、どのような戦略をとっていくべきだろうか。次回は中編として、スマートフォンを軸としたWebビジネスの基本戦略を考える。


Windows 8




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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