ミクシィは“輝き”を失っても“稼ぎ”を保て

ミクシィは“輝き”を失っても“稼ぎ”を保て
2013年01月28日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

ミクシィの落日は誰の目にも明らかになってきた。僕の周囲で日常的にmixiへログインしている人は皆無だし、僕が運営している画像共有型ソーシャルネットワーク Revolver Communityを利用している芸能人コミュニティのユーザーの多くがソーシャルログインをしているが、じつにmixiアカウントでログインしている人はいまのところゼロだ(とはいえ、FacebookとTwitterに二分され、Google+アカウントでログインしている人もゼロだが)。

だが、印象とは違って、ミクシィの事業は好調といっていい。広告事業も比較的堅調だ。1500~1600万人とされるアクティブユーザーがあり、50%以上がモバイルからのアクセスというのも悪くない数字である。

しかし、SNSというカテゴリでみればFacebookに抜かれ、若年層のコミュニケーションツールとしてはLINEに抜かれ、ゲームプラットフォームとしてはDeNAやGREEに遠くおよばない、という現状は変わらない。mixiはもはや圧倒的に強いという分野がまったくない状態であり、それは長く緩やかな衰退へとつながる心細い道程である。

ミクシィのCEOである笠原さんはユーザーファーストという言葉をあげて顧客ニーズの徹底追及と、実名ではなくニックネームによる匿名SNSへの回帰を今後の戦略の軸足としているが、これは安定的に存続を目指す保守戦略なのか、再び急成長を目指す戦略なのかがはっきりしていない。

IT業界には、それほど話題にはならないが経営的に安定している、かつてのスター企業がたくさんある。例えばExciteやAll AboutなどがWebメディアを騒がすことはいまやほとんどないが、安定した存続企業として独自の領域を守っている。リスクを冒してより大きな成長戦略を採択するだけが経営ではない。芸能人でも、かつての輝きは落ちても稼ぎは落ちていない、という人は多くいるではないか。mixiも「かつてのスター」というポジションに居座り、輝きより稼ぎ、という安定路線を狙っていけばよいと思う。

mixiの「ユーザーファースト」、「非実名」のふたつのコンセプトからは、彼らがすでに保守戦略を選んでいるという印象が強い。とはいえ、もし成長戦略を選ぶのであればFacebookと戦うのか、LINEと戦うのか、GREEと戦うのか、明確にするべきだろう。もはや365度に戦線を拡大するには遅過ぎる。急成長を果たすには、一点集中でエッジの効いたサービスの開発に取り組むべきだろう。


mixi




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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