ソーシャルストリーム再考察(1)

ソーシャルストリーム再考察(1)
2013年04月15日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

現代のインターネットは、モバイル化とソーシャル化によって、いわゆる蜘蛛の巣(つまりWeb)のような構造から、広大な流れをもった川のような構造(ストリーム)へとシフトしている。僕はこの新しいインターネットをソーシャルストリームと呼んでいる。

モバイル化されソーシャル化された僕たちが、時間の変化にともなって、位置を変えつつ情報をインターネット上にアップロードしている。つまり時間情報と位置情報が、個人ベースで次々とインターネットに送られているのだが、これらの情報はソーシャルネットワークサービスを介することで、有機的につながっていく。つまり、人間関係や社会現象などがインターネット上に反映されていくことになる。

情報を伝搬させるためのノード(ネットワークを構成するひとつひとつの要素。ノードとノードを結ぶ線がハイパーリンク)の最小単位は、サーバやPCではなく、人間そのものへと変化した。モバイル化とソーシャル化によって、もはや僕たちにとってのコンピューティングとは特別な行為ではなく、日常的な動作すべてに関わるものだ。

そしていま、スマートフォンに変わるデバイスとして眼鏡型や時計型のインターネット接続ガジェットが、僕たちのインターネットにアップロードしていく情報をさらに多角化していこうとしている。たとえば心拍数や血圧などのバイオ的な情報や、視点の動きによる無意識の関心ごとなどが、自動的にアップロードされていく可能性もあるわけだ。

モバイル化にはさらに、ほかの動きが将来控えている。それはO2OとM2Mだ。O2OとはOnline to Offline――インターネットを介して得た情報をもとに実際の店舗などにトラフィック(人の流れ)を送ることで、送客手段としての側面をもつ。M2MとはMachine to Machine――人間ではなく、これまでインターネットにつながっていなかった自動車やテレビ、信号機など、さまざまな機械・機器が常時接続されて、情報を適宜アップロードしていく仕組みを指す。

O2Oはマーケティング的にどうやってインターネットユーザーをリアル店舗に送り込むかという視点、M2Mは社会機器の接続と管理という視点に絞られて語られることが多いが、実際にはソーシャルストリーム上の現象のひとつである。O2Oはバーチャルのノードとリアルのノードのリンクをつなぎ、そこでのトラフィックをどう発生させるかだし、M2MはMan to Manと構造的には変わらない。

だから、逆に言えばソーシャルストリームは、たんにインターネットの構造変化の話ではなく、社会全体を大きく変化させていく流れであり、世界中を巻き込むパラダイムシフトを引き起こす現象なのである。






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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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