ビジネスモデルをもつTwiter、「Pheed」に注目せよ

ビジネスモデルをもつTwiter、「Pheed」に注目せよ
ポストFacebook―新興SNS達の挑戦(前編)2013年04月30日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

今回から3回にわけて、Facebookを脅かすかもしれない新興SNSを紹介する。Facebookのユーザー数の伸びにやや翳りがでており、しかも若年層からの支持を失っているのではないかとの見方が広がっているなかで、モバイルを中心に若者の関心を買うことに成功しかけているサービスを取り上げていきたい。

まず、僕がもっとも注目をしているPheedを紹介しよう。Pheedは、個人やアーティストなどのセレブがマルチメディアコンテンツを配信できるサービスである。もちろん、それらのコンテンツを購読することが可能だ。日本ではあまり注目を浴びていないPheedだが、AppleのApp StoreではPheedのモバイルアプリのダウンロードが、FacebookやTwitterを抜いてソーシャルメディアのカテゴリでトップに立つなど、欧米ではかなり目立つ存在だ。

配信する側は、無料コンテンツと有料コンテンツをチャネル別にわけて配信できる。有料配信の場合、定期購読型(サブスクリプション)と都度課金型(ペイパービュー)のどちらかが選べ、価格も自分で設定できる。そして、配信されたコンテンツを誰かが購入すれば、配信者とPheedがそれを50:50でわけ合う、という仕組みだ。

Pheedを使うと、テキストと画像の組み合わせによるブログに似たコンテンツの配信はもとより、動画のブロードキャストも可能になる。だからパーソナル放送局のような使い道に目を付けて、多くのミュージシャンがアカウント登録をしているようだ。

Pheedは「フィード」と読む。つまりFeedの語源とする造語だ。Feedとは燃料や食料などを支給する、という意味の単語だが、IT業界ではこれを情報やデータの配信というニュアンスで活用する。つまりPheedはコミュニケーションツールというよりは、コンテンツの配信にフォーカスしているベンチャーだといってよい。

IPOに向けてなのか、最近でこそ収益拡大に励むTwitterだが、彼らは長らくユーザー数やトラフィックの拡大に集中していて、事業化そのものにあまり熱心であるようには見られていなかった。だから、最初から収益をあげることを目的とした仕組みを用意しているPheedは、サービスローンチをした2012年秋頃には、ビジネスモデルをもつTwitterというキャッチフレーズをメディアから与えられていた。このため、一時TwitterはPheedに対してAPIの利用の遮断をするほと警戒していたのだ。

最近Twitterは、Twitter #musicという音楽にフォーカスしたサービスを開始したが(日本ではまだサービスインされていない)、Pheedから相当に刺激を受けていると思われる。Twitter #musicは、ツイートやリツイート、お気に入りなどのTwitter上の行動をもとに、人気の曲や話題のアーティストを紹介してくれるし、アーティストが聴いている曲、フォローしているほかのアーティストなど、アーティストの興味関心を情報として提供してくれる。

Facebookは実名制にこだわり続けた結果、世界中の“オトナ”をユーザーにすることができたが、それがゆえにFacebook上でのコミュニケーションが実社会の人間関係に引きずられすぎて、窮屈な場になりつつある。建前と本音を使いわけることに慣れているオトナはいいが、コドモたちにはそういう関係性を忌み嫌う(それができないからこそコドモなわけだ)。従って、若年層はオトナの場を避けて、自分たちだけの空間をつくろうとする。その受け皿になっているのがPheedやPath、InstagramやSnapchatなどであり、日本であればLINEのようなメッセージングサービスなわけだ。

Instagramが2012年末に、Instagram上に画像をアップロードしたユーザーの許可なくFacebook上の広告に転用することを発表したことで、多くのユーザーが逃げ出す事件が起きたが、そのユーザーの多くがPheedに流れたことで、Pheedは一気に大量の若い世代のユーザーを得た。Pheedのログインページはタトゥーを入れまくった若者が頭の後ろで手を組む写真で飾られているが、これもまた、中高年の眉をひそませることがあっても若者だけの刺激的な空間である、という意図の現れだろう。


Pheed(https://www.pheed.com/




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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