2014年の若い起業家に贈る言葉

2014年の若い起業家に贈る言葉

2014年01月20日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

「クロニクル」という映画を観た。3人の高校生がある事件をきっかけに超能力を得るが、劣等感や劣悪な家庭環境、得た力のバランスの悪さなどが原因で、徐々に精神が破綻して破滅に追い込まれるという話だ。おもしろい映画なので、興味をもった人はぜひ観てほしい。

映画内の若者が得る力はテレキネシス――いわゆる念力だが、念力を現金に置き換えてみると、実は現実社会にあっても同じようなことがひんぱんに起きているのだ。1999~2000年のドットコムバブルや、2009年のライブドアショック直前までのネットベンチャーブームでは、いたずらに巨額の資金を得た起業家が何人も身を崩している。

映画「クロニクル」のプロットは、スパイダーマンと近い。スパイダーマンでは平凡な高校生が、突然得た超能力の使い方をまちがえたために最愛の叔父を亡くすが、その叔父と残された叔母から受けた愛情を感じることで、力を正義のために使うことを決意する。「クロニクル」では愛する母が病死し、さらにアルコール依存症の父親から虐待と蔑視を受けることで、力の使い途を完全にまちがってしまう。やはり、メンターやステークホルダーは重要である、ということだろう。

起業家にとっても、特に20代の若者には、これほど良い時代はないというくらい、スタートアップ支援の環境が整いはじめている。2014年になって、いよいよスタートアップ界隈では数多くのファンドに資金が集まり、若い起業家にとっては千載一遇のチャンスが生まれている。実際、あるVC(ベンチャーキャピタル)の人は「スタートアップが強気になって、高いバリュエーション(企業評価額)をつけてきている」と語っており、若い起業家が自信をもって最初から巨額の資金調達を目指そうとするムードが生まれているようだ。

しかし、スタートアップの成否は資金調達後にあるのはいうまでもなく、せっかく得た資金の使い途をまちがえないように、浮かれた気持ちを押さえて事業に邁進する冷静さが必要だ。その意味で、若さと才能に恵まれた起業家にこそ、経験を積んだ冷静なメンターの存在が重要になる。だからこそ、お金を出してくれるVCも有り難いが、ちゃんと口も出してくれるVCを選ぶことも大切だ。

最近、口うるさいオトナを敬遠することがクールであるように若者を扇動する向きが多いが、起業という挑戦は現実社会に対するコミットであり、資本主義のルールの中にあるゲームだ。目線は高く、物腰は低く、暴走しがちなエネルギーをコントロールするための制御弁としてのオトナをチームに招くことが重要であると考える。

なお、残念ながら十分なオトナである僕は、逆に暴走したがる若者を僕が運営するリボルバーチームに迎えることを、2014年のひとつの目標にしている。


映画「クロニクル」オフィシャルサイト
http://www.foxmovies.jp/chronicle/




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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