O2Oあるいはオムニチャネルの本質を考える(前編)

O2Oあるいはオムニチャネルの本質を考える(前編)

2014年02月03日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

本コラムでは、これまで数回にわたりO2Oについて取り上げた。O2OとはOnline to Offline。つまり、インターネット広告を介してリアル店舗やイベントに集客をおこなうことだ。また、インターネットやリアル店舗に関係なく、とにかく集客して消費活動を促進すればよいという考え方で販売チャネルを整備していくことをオムニチャネルと呼ぶ。O2Oもこのオムニチャネルに包含されるコンセプトとしてとらえる向きが多い。

ただ、僕は少し違和感がある。たとえば店舗で手にした商品を気に入った客が、その場でスマートフォンを使ってより安い値段の店舗やECサイトを探し、結局商品を買わない(=ショールーミング)という行動に出てしまう。商品をどこで買ってもよいと言えるのは、どこで購入されても利益を確保できるメーカーや総代理店だけで、商品を陳列している店舗はお手上げなわけだ。

つまりオムニチャネルとは、商品をつくっているメーカー、ブランド側の発想なのだ。最近コンビニエンスストア各社がプライベートブランド商品(PB商品)に力を入れているのも、流通業者自体がメーカーにならなければ、オムニチャネル戦略を講じることができないからである。

また、オムニチャネルはサービス産業にはあまり役に立たないコンセプトだ。たとえばレストランや美容院などは商品(サービス)を提供しているが、ECで売れるタイプのものではないから、実店舗に集客する必要がある。つまりオムニチャネルというより、O2Oが必要になるわけだ。彼らにとって重要なのは、集客と同時に料理の味やヘアカットの技など高いホスピタリティを提供することでリピーターになってもらうことだ。その循環がなければ、O2Oは単なる広告になる。

O2Oはインターネットで告知してリアル店舗に足を運ばせるという点で、つい割引クーポンなどを配布するといったソリューションに陥りがちだ。グル―ポンはある意味この手法を世界ではじめて体系化し、ビジネスモデルとして明確に打ち出した会社である。ただしグル―ポンはリアル店舗への送客には成功したが、リピーターにするための配慮はゼロだった。客としては安いから行くが、次回も同じ店に行くとは限らない。もっと安い店があるかもしれないからだ。

だからグル―ポンは失速したわけだが、本来リビーターが確保できないのは店舗側の低いホスピタリティが問題なのであって、クーポンによる集客が問題なのではない。しかし、人間は自分が悪いとはなかなか考えたくない利己的な考え方をするものだ。だから客がリピーターにならないのは、割引で集めただけの客だからだと考える。

そこでO2O支援企業は、インターネットからの送客に加えてリピーターを獲得する作戦の有無を喧伝するようになる。来店回数に応じてデジタルポイントが溜まるとか、ゲーミフィケーションと呼ばれるような仕掛けをつくるわけだ。以前訪れた客が店舗の近くを通りかかったときにキャンペーンやイベントの告知をプッシュ配信する、といった方法も考えられる。

しかし、いずれにしても商品やサービスそのものがリピーターを生む仕掛けでなければ意味がない。瞬間的なおもしろさを生むのはよいが、店舗にとっては即効性はあるが持続性がないことに変わりないのではないか? ではどうすればよいか? それは次回紹介しよう。

■後編はこちら
O2Oあるいはオムニチャネルの本質を考える(後編)


グル―ポン




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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