SEOに代わるSVOの時代(前編)

SEOに代わるSVOの時代(前編)

2014年06月23日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

ヒップホップのスターのひとり、カニエ・ウエストは、自身の結婚式のワンシーンをInstagramで公開したところ、史上最高数となる「いいね」が付いた。ところが、公開した写真は、なんと4日間もかけてPhotoshopで仕上げたというから驚きだ。

写真やカメラに詳しくなくても、フィルム(銀塩)時代のカメラで撮影したのちフィルムから紙へと移すことを現像とよぶことはご存じだと思う。だから現像を死語だと考える人が多いかもしれないが、じつはデジタルカメラが主流となったいまでも現像という言葉は使われているのだ。正確にはRAW現像とよばれており、撮影した画像データを加工し、撮影者が好みの色合いや露出に仕上げることをさす。

デジタルカメラはメーカーごとにデータ形式が異なり、独自規格でRAWデータ(つまり生データ)として保存している。このRAWデータを、JPEGなどの汎用的なファイル形式に変換して他者と共有する。この作業自体をRAW現像というのだが、その際に前述のように色味や明るさなどをPhotoshopなどの画像加工ソフトで編集する。この作業までを含めて現像というのだ。なお加工自体はレタッチともよばれ、作業者をレタッチャーという。

つまり、カニエ・ウエストは優秀なレタッチャーを使って、好みの写真に仕上げるために4日間をかけた。その結果としてInstagram上で大きな話題を呼んだわけで、コストパフォーマンスをよいとみるか悪いとみるかは人それぞれだろう。もちろんカニエ・ウエストとしては、Instagramにアップするためというよりは、ふたりの思い出をベストな形として残したかったというのが本心であったとは思うが。

最近の映画のプロモーションは、予告編の出来不出来が興行の成否をわけるという。昔から同じことだろうと思うが、現在ではテレビなどのマスメディアで流されるだけではなく、YouTubeなどの動画サイトにアップロードされることで、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを介して、ただ観られるだけではなく、見た人の評価や感想などが付加された非常にリッチな口コミとして一気に伝播するようになっている。

こうした傾向を受けて、尺の長い動画はYouTubeを中心に、短い動画はInstagramやVineなどで公開するという動画マーケティング、動画プロモーションが花盛りになっている。Instagramの尺は15秒、Vineは6秒という違いがあり、それぞれに専用の動画を作成するビジネスを立ち上げた代理店も多い。

前述のカニエ・ウエストの画像も同じで、写真の出来不出来や、動画のよし悪しが、数年前とは比べ物にならないくらい、インターネット上のトラフィックの拡大やコンテンツの流通に対して影響力を増しているのである。

特にモバイルネットワークにおいてユーザーはあまり検索を行わず、ソーシャルメディア上の他者からの評価の高い情報をクリックして消費する傾向にある。SEOはもはや意味を成さなくなってきており、それに代わってSMO(ソーシャルメディア&モバイル最適化)が必要とされつつある。そして、そのSMOの最大のコツとして、動画や画像といったビジュアルデータの見せ方・つくり方が重要になってきた。仮に、これをSVO(ソーシャルビジュアル最適化)とよぼうと思う。SVOがどれだけ重要か、どのように対応していくべきかを次回解説していく。

後編はこちら>SEOに代わるSVOの時代(後編)


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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