Webサイト構築サービスの台頭(前編)
Webサイト構築サービスの台頭(前編)
2014年04月28日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
Webサイト構築サービスを主力にするスタートアップの躍進が注目されている。HTMLやCSSの知識を必要とせず、WYSIWYG型のWeb制作ツールと運営用のサーバ・ネットワークも同時に提供するという統合型のサービスだ。もちろん昨今のサービスであればモバイル対応もなされている。昨年には代表的なWebサイト構築企業であるWixがNASDAQに上場をはたしているし、2014年に入って大型増資に成功したスタートアップのニュースも続いている。もはやWordPressやMovableTypeでWebサイトを制作している場合ではないのかもしれない、とまで思ってしまう。本コラムの読者の多くはWebビジネスに関わっていると思うので、ぜひ注目してほしい分野だ。
まずプレイヤーの紹介をしよう。
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
Webサイト構築サービスを主力にするスタートアップの躍進が注目されている。HTMLやCSSの知識を必要とせず、WYSIWYG型のWeb制作ツールと運営用のサーバ・ネットワークも同時に提供するという統合型のサービスだ。もちろん昨今のサービスであればモバイル対応もなされている。昨年には代表的なWebサイト構築企業であるWixがNASDAQに上場をはたしているし、2014年に入って大型増資に成功したスタートアップのニュースも続いている。もはやWordPressやMovableTypeでWebサイトを制作している場合ではないのかもしれない、とまで思ってしまう。本コラムの読者の多くはWebビジネスに関わっていると思うので、ぜひ注目してほしい分野だ。
まずプレイヤーの紹介をしよう。
Wix.com
イスラエルのベンチャーであるWixは、2013年11月にIPOをはたした。1.27億ドルを調達し、企業価値はIPO当時で7.50億ドル。これはイスラエル企業のIPOとしては最大の成功とのことだ。社員数は350名を超え、すでに日本語対応もしており、Facebook広告などを中心に日本国内でも積極的にPRを行なっている。Wixを利用して制作されたWebサイトは4000万以上といわれており、この分野のスタートアップとしては最大級である。
単純にWebサイトを構築するサービスやアプリの市場リーダーといえばWordPressだ。WordPressサイト数は世界で7500万以上。Wixは肉薄とまではいかないが、無視できない規模になっているといえるだろう。
Jimdo.com
Jimdoはドイツのハンブルグに拠点をもつスタートアップだ。2007年の設立(創業は2004年)なのでスタートアップとはいえないかもしれない。現在1000万アカウントを超えるWebサイトを運営しており、日本国内ではKDDIウェブコミュニケーションズと組んで中小企業向けのWebサイト構築事業に取り組んでいる。ヨーロッパ発のベンチャーとしては、もっとも成功しつつある企業のひとつといえよう。
SquareSpace.com
SquareSpaceは、デザイン面で他社を圧倒するすばらしい制作ツールを提供しているのが特徴だ。自社サイトもおしゃれで、社員数も300名近く在籍しており、もはや貫禄さえただよう。創業は2003年で老舗ベンチャーといえるが、2014年4月にシリーズBを成功させ、4000万ドルを調達した。これまでの調達総額は8000万ドル近く、また獲得したアカウントは数百万サイトだという。
Weebly.com
WeeblyはスタートアップインキュベーターであるY Combinator出身のスタートアップだ。サービス的には先述のWixやJimdoらとほぼ同じだが、Y Combinator出身者という輝かしいレッテルをうまく利用して最近急成長している。Weeblyもまた、2014年4月に3500万ドルもの大型調達をはたしており、本格的に海外進出を目指しているようだ。Weeblyを使った運営サイトはすでに2000万を超えている。
Strikingly.com
Weebly同様、Y Combinator出身の中国人が創業したスタートアップだ。上述のライバルたちに比べると、創業したてのため実績はまだ少ない。WebサイトというよりもWebページ制作という感じで、複数ページをもつWebサイトではなく縦に長い1ページのWebページが制作できる、というコンセプトで差別化を狙っている。
その理由は、StrikinglyがWebサイトではなくスマートフォンサイトをつくろうとしているからである。Strikinglyがいうには、アジア圏では日本や欧米と異なりPCサイトをつくってからスマートフォン向けに最適化するというプロセスをほとんどしない。PCサイトはつくらず、いきなりスマートフォン向けサイトをつくることが多いという。PCの普及が遅れた結果、逆にスマートフォンの普及に勢いがあり、結果としてPCサイトの需要は少なくスマホサイトのみで問題ないということらしい。
だからスマートフォン向けサイトとしては、縦に長い1ページのWebページがあれば十分で、あとから充実させていけばよいというわけである。ただし、制作ツールはいまのところスマートフォンに対応していないようだ。
このように、優秀なプレイヤーがそろい、世界的にかなりホットな市場になっているのが簡単Webサイト構築サービスという、一見レガシーな領域なのだ。この市場の拡大の背景と事由を、次回説明しよう。
イスラエルのベンチャーであるWixは、2013年11月にIPOをはたした。1.27億ドルを調達し、企業価値はIPO当時で7.50億ドル。これはイスラエル企業のIPOとしては最大の成功とのことだ。社員数は350名を超え、すでに日本語対応もしており、Facebook広告などを中心に日本国内でも積極的にPRを行なっている。Wixを利用して制作されたWebサイトは4000万以上といわれており、この分野のスタートアップとしては最大級である。
単純にWebサイトを構築するサービスやアプリの市場リーダーといえばWordPressだ。WordPressサイト数は世界で7500万以上。Wixは肉薄とまではいかないが、無視できない規模になっているといえるだろう。
Jimdo.com
Jimdoはドイツのハンブルグに拠点をもつスタートアップだ。2007年の設立(創業は2004年)なのでスタートアップとはいえないかもしれない。現在1000万アカウントを超えるWebサイトを運営しており、日本国内ではKDDIウェブコミュニケーションズと組んで中小企業向けのWebサイト構築事業に取り組んでいる。ヨーロッパ発のベンチャーとしては、もっとも成功しつつある企業のひとつといえよう。
SquareSpace.com
SquareSpaceは、デザイン面で他社を圧倒するすばらしい制作ツールを提供しているのが特徴だ。自社サイトもおしゃれで、社員数も300名近く在籍しており、もはや貫禄さえただよう。創業は2003年で老舗ベンチャーといえるが、2014年4月にシリーズBを成功させ、4000万ドルを調達した。これまでの調達総額は8000万ドル近く、また獲得したアカウントは数百万サイトだという。
Weebly.com
WeeblyはスタートアップインキュベーターであるY Combinator出身のスタートアップだ。サービス的には先述のWixやJimdoらとほぼ同じだが、Y Combinator出身者という輝かしいレッテルをうまく利用して最近急成長している。Weeblyもまた、2014年4月に3500万ドルもの大型調達をはたしており、本格的に海外進出を目指しているようだ。Weeblyを使った運営サイトはすでに2000万を超えている。
Strikingly.com
Weebly同様、Y Combinator出身の中国人が創業したスタートアップだ。上述のライバルたちに比べると、創業したてのため実績はまだ少ない。WebサイトというよりもWebページ制作という感じで、複数ページをもつWebサイトではなく縦に長い1ページのWebページが制作できる、というコンセプトで差別化を狙っている。
その理由は、StrikinglyがWebサイトではなくスマートフォンサイトをつくろうとしているからである。Strikinglyがいうには、アジア圏では日本や欧米と異なりPCサイトをつくってからスマートフォン向けに最適化するというプロセスをほとんどしない。PCサイトはつくらず、いきなりスマートフォン向けサイトをつくることが多いという。PCの普及が遅れた結果、逆にスマートフォンの普及に勢いがあり、結果としてPCサイトの需要は少なくスマホサイトのみで問題ないということらしい。
だからスマートフォン向けサイトとしては、縦に長い1ページのWebページがあれば十分で、あとから充実させていけばよいというわけである。ただし、制作ツールはいまのところスマートフォンに対応していないようだ。
このように、優秀なプレイヤーがそろい、世界的にかなりホットな市場になっているのが簡単Webサイト構築サービスという、一見レガシーな領域なのだ。この市場の拡大の背景と事由を、次回説明しよう。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
twitter:http://www.twitter.com/ogawakazuhiro
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