新ブログプラットフォームMediumがメディア事業に舵切り

新ブログプラットフォームMediumがメディア事業に舵切り

2014年08月04日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

オンラインCMSを提供するサービスプラットフォーマーが、自社システムを使って自社コンテンツによるメディアをつくるムーブメントを、プラティシャー(platform+publisher)とよぶ。これまで何度か触れてきたが、最近このムーブメントにまた新たな事例が生まれて話題になっている。それは、「re:form」(https://medium.com/re-form)というWebサイトで、おもに建築や人工的なプロダクトのデザインに関する考察記事が掲載されている。運営しているのは、スタートアップのMediumだ。

Mediumは、プラティシャーの代表例として挙げられることが多い。Twitter共同創業者のひとり、エヴァン・ウィリアムズが設立したこの企業は、非常にシンプルかつエレガントな投稿ツールを一般公開している。誰でも簡単にコンテンツを配信できるサービスで、Twitterよりも長いテキストが書けて、ブログよりも簡単に更新できるという意味で、Twitterとブログの中間点(medium)に位置する。だから社名がMediumなわけだが、いまではプラットフォームとメディアの中間だからMediumである、という見方が強まってきた。

Mediumは科学情報などを中心としたブログメディアMatterを買収し、自社のサービスプラットフォームの上に移植させた(https://medium.com/matter)。今回はデザインやクリエイティブに関するメディアを立ち上げたわけだが、少し違うのは、BMWがスポンサーとして大きくクレジットされていることだ。テレビ番組と同じように、特定の企業がスポンサーとして運営されるメディアであり、バナー広告や記事広告を出稿しているというのではなく、メディア全体の編集方針を支持して、その記事の内容やトンマナ(tone & manner)がBMWのイメージアップに貢献すると考えてのスポンサーシップである。

このre:formは、WebサイトというよりもWebマガジンやWeb雑誌に近い。クオリティの高い写真をふんだんに使って、このコラムでも何回の紹介しているビジュアルWebの典型的なスタイルを採用している。しかもその写真に負けない量のテキストがあり、まさしく雑誌の体裁をとっているのだ(参照:http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/36320/?rm=1)。

プラティシャーのビジネスモデルは、雑誌のそれであり、CMSとコンテンツ、エンジニアとエディター、テクノロジーと編集力、プログラムとクリエティブ、それらの最適な中間点に立つ者が栄華を極める、そういう市場が生まれつつあるのである。


プラティシャーの概要


Mediumの構造




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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