バイラルメディアのBuzzFeedが日本進出を発表

バイラルメディアのBuzzFeedが日本進出を発表

2014年08月18日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

米国のバイラルメディアのBuzzFeedが、有名ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzから5000万ドルを調達し、日本を含むアジア各国への進出を発表した。

バイラルメディアとはバイラル(viral)、つまりウイルスが感染するようにあっというまに広がるコンテンツを量産するメディアである。その手法はおもに、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを媒介するというものだ。つまり、シェアされやすいテーマのコンテンツ、シェアされやすいように大きめなシェアボタンを目立つところに置く、ページごとにシェアボタンを用意するなどの工夫を施してある。

BuzzFeedはこのバイラルメディアの筆頭株で、月間のユニークビジターが1億数千万人を超すといわれている。売上は年間100億円レベルであると報じられているが、その売上はネイティブアドと呼ばれる広告収入であるという。

ネイティブアドとは、記事風広告の一種だ。僕はこのコラムを通じて、最近のWebが雑誌化してきており、雑誌がもつさまざまなノウハウがデジタルメディアに適合した形で移植されはじめていると繰り返し述べてきた。このネイティブアドは、そのひとつの形であり、高級ファッション誌であれば、そのコンテンツのほとんどがほぼ広告といってもよいくらいだが嫌らしくなく、読者に好意的に受け止めてもらえるような構造に昇華している。

このバイラルメディアは、ある意味スパム的な要素をはらむ。とにかくシェアしてもらうことにより広がるので、センセーショナルでキャッチーなタイトルと、思わずクリックしたくなるような写真や動画を多用する。たいていのコンテンツは短めで、小ネタ的である。ある意味東スポ的といえるかもしれない。その瞬間でおもしろければよく、事の真偽を問う必要がないと割り切っているバイラルメディアも多いだろう。

僕が好んでここで紹介するMediumも構造的にはバイラルメディアに近いが、彼らは経営方針あるいは編集方針として堅実で硬派な記事のみを取り上げていくことを打ち出しているため、ライバルと比べるとそこまで爆発的にはPVを伸ばしてはいない。良質なコンテンツを配信し続けるか、シェアされやすいことを重視するかは、技術の問題ではなくポリシーの問題となっている。

実際BuzzFeedはもちろん、急成長中のバイラルメディアはスパム扱いされることを避けるため、コンテンツの品質向上にチカラを入れはじめているし、他人コンテンツではなくオリジナルのコンテンツを配信するために、エディタを多く抱えはじめている。僕がここで述べたように、雑誌の編集者の就職先として彼らは理想的になりつつあるのだ。

BuzzFeedが日本でも成功するかどうかはわからない。年内には立ち上げるそうだが、国内でもすでに数社のバイラルメディアがスタートしているし、群雄割拠になっていきそうだ。Grouponのときは先にGrouponがリードして、他社がそれを追いかけるという展開だったが、今回は国産バイラルメディアがそれなりに立ち上がっている状態に本家が割り込む展開になる。


BuzzFeed
http://www.buzzfeed.com/




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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