ネイティブアドの衝撃と、記事広告との違い(前編)

ネイティブアドの衝撃と、記事広告との違い(前編)

「ネイティブアド」(Native Ads)という広告手法を聞いたことがある読者は多いだろう。「ネイティブ広告」という言い方をするところもあるが、僕はネイティブアドと呼ぶほうが意味が通ってよいと思う。ネイティブアドとは一見すると記事のような広告のことで、記事のように自然(Native)に見えることからそう呼ばれている。従来の記事広告となにが違うの?と思う人も多いかもしれない。

ここ最近のコラムで

・Webメディアの雑誌化傾向
・編集スキルのデジタル化ニーズの増大
・SEOからSMOへの転換加速

について説明してきた。また、前回のコラムではこうしたトレンドのひとつの結果として、急激に存在感を増しているバイラルメディアの雄、BuzzFeedの日本上陸も伝えている。

このトレンドを金銭面で支えているのが、ネイティブアドというビジネスモデルだ。ECや会費制サービス以外の主要なビジネスモデルのひとつは広告モデルであり、広告モデルの場合はさまざまな方法でメディアにトラフィックを集め、訪問者に広告を見てもらうことでお金を稼ぐわけなのだが、その広告手法にネイティブアドという大きな革新が起きている。実際、BuzzFeedの売上高(年商100億円といわれている)は、ほぼすべてネイティブアドで稼いでいるという。

ネイティブアドは定義がわかりにくい部分がある。たとえばGoogleの検索結果連動広告(AdWords)も、ユーザーの検索キーワードに関連して引き出される検索結果と近い内容であることから、ネイティブアドのひとつであるとされている。つまり、ある程度メディアの記事そのものと関連性があり、ユーザーの意識を逸らさない広告であればネイティブであると判断する。それが現在の広告業界やマーケティング関係者の考えのようだ。

しかし、それではネイティブアドの革新性のインパクトを損なう、と僕は思う。

雑誌における記事広告とは、単に“あたかも記事のようなトンマナで書かれた広告”というだけでなく、“雑誌(メディア)側の編集者が制作する広告”でなければならない。ネイティブアドも同じで、メディア側がクリエイティブを担い、制作をとりまとめることが必要であると僕は考える。

通常の広告は、基本的に広告主が広告を制作する。メディアはそれを掲載する場を提供するだけだ。雑誌の記事広告は、メディア側が記事の体裁で広告を制作し、掲載する。そこが違う。

さらにいうと、同じ記事広告でも、高級ファッション誌のそれと、大衆向け週刊誌のそれとはまったく体裁が違うのはわかるだろう。僕が思うに、最近のWebメディアは高級ファッション誌のトンマナとノウハウを真似しはじめており、そこに掲出するネイティブアドもまた、高級ファッション誌からさまざまなヒントを得ている。


BuzzFeed
http://www.buzzfeed.com/




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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